【本編完結】魔法少女リリカルなのは~Eine noch von Buch der Dunkelheit Geschichte~ 作:鈴木颯手
第一話「プロローグ」
僕の姉八神はやては足が動かない。お世話になっている病院の先生にも原因は分からないそうだ。だから姉ちゃんは何時も車椅子を使っている。そんな姉ちゃんが乗る車椅子を押すのは僕の仕事でとても楽しい。
僕たちに両親はいない。遠い親戚の人が毎月たくさんのお金を振り込んでくれてそれを使って生活している。親として必要な書類などはお世話してくれている病院の石田先生がやってくれている。
「なぁ姉ちゃん」
「どうしたんや?優斗?」
「僕たちのお父さんとお母さんってさ、どんな人なんだろうな……」
「……そうやなぁ、明るい人とか?」
「姉ちゃんに似ておっぱい好きだったりして」
「むー!私は別に中年のおっさんみたいな趣味は持ってません!」
「いやそれ中年男性に失礼だろ」
姉ちゃんはこうやって暗い話になるといつも明るい話題にしてくれる。時々おふざけが入るのもご愛嬌という奴かな。
でも、姉ちゃんは影では胸の苦しみに耐えている。偶に胸に激痛が走るようでその度に僕は救急車を呼ぶか石田先生に連絡を取っている。前は月に一度あれば多いと思っていたけど最近は週に一度の間隔で襲われている。
そんな苦しんでいる姉ちゃんを僕はただ、見ている事しか出来なかった。せめて、姉ちゃんを守れる力があれば……。姉ちゃんの苦しんでいる姿を見る度に僕はそう思っていた。
【……】
「もしもし。海鳴大学病院の石田です。ええと……明日ははやてちゃんのお誕生日よね?明日の検査のあと、お食事でもどうかなと思って電話しました。明日、病院に来る前にでもお返事くれたらうれしいな。よろしくね」
図書館からの帰り道信号待ちをしていたら姉ちゃんが留守電を聞き始めた。さっきバスに乗っていた時にかかってきた電話の留守電らしい。相手は石田先生で内容はお食事の誘いだった。
「良かったじゃん、受けたらどう?」
「そうやね……」
僕は姉ちゃんにそう言ったが姉ちゃんは暗い表情で呟いただけだった。恐らく石田先生の好意に嬉しい気持ちと両親がいない悲しみが襲って来たんだろう。姉ちゃんは自分の誕生日とか特別な行事の時には決まって落ち込む。いくら僕や石田先生が慰めても変わらない。だから僕は慰める事を止めた。
代わりに、
「ていっ!」
「!?」
僕は車椅子の後ろから姉ちゃんの胸を揉む。……ふむ、まだ硬さの方が勝っているか。
「な、な、何すんねん!ドアホー!」
「ふげっ!?」
姉ちゃんの硬い胸を堪能していたら頭突きをお見舞いされてしまい僕は後ろに倒れる。姉ちゃんは顔を赤くして胸の前で両腕を交差させてこちらを睨んでくる。
「い、痛いよ姉ちゃん……」
「優斗が馬鹿なことをするせいやろ。ふふっ」
そう言って姉ちゃんは軽く笑う。……やっぱり姉ちゃんは笑っていた方が何倍も良い。いや、暗い顔なんて似合わないよ。
「ほら、いつまでも倒れてないで車椅子を押してな。出ないと置いていくで」
「む、姉ちゃんの車椅子を押すのは僕の役目なんだぞ!姉ちゃんはただ座っていてくれればいいんだ!」
「なら早く早く」
僕は鼻を押さえつつ急かしてくる姉ちゃんが乗る車椅子を押す。確かな重みを感じつつ力を入れれば簡単に車椅子は動き出し横断歩道へと身をさらす。この時間帯は車の通りもなく例え赤で渡っても問題ないと思わせるほどに。
ふと、車のエンジン音が聞こえてくる。トラックかな?と思い右を見ればこちらに向かって猛スピードで向かってくるトラックの姿があった。運転席を見てみれば下を向いてる。典型的な居眠り運転だ。問題なのは僕たちは巻き込まれそうになっている事。
トラックは既に目の前まで迫ってきている。逃げられない。僕はとっさに姉ちゃんを抱きし僕の背中をトラックに向ける。せめて姉ちゃんだけでも!そう思い目をつぶった僕を真っ白い光が包み込んだ。