【本編完結】魔法少女リリカルなのは~Eine noch von Buch der Dunkelheit Geschichte~ 作:鈴木颯手
「嘘……」
その瞬間、八神はやては持っていた杖を落としそうになる。
夜天の書の主として覚醒した八神はやてはナハトヴァールによって削除された守護騎士プログラムを再起動しシグナルたち守護騎士を復活させた。自身も管制ユニット、リインフォースとのユニゾンを果たし守護騎士たちとの再会を喜んだ。
そして現場に到着した管理局の魔導師クロノ・ハラオウンの説明により現状を把握し皆で闇の書の闇、ナハトヴァールの破壊を行おうとしていた。
しかし、海上の歪みから現れたのはナハトヴァールの暴走体ではなく八神はやての弟優斗であった。優斗は力なく座り込み俯いているため顔までは分からないが長年共に過ごしてきたはやてには一目で見抜いていた。
「あれは……、人、なのか?」
「皆気を付けろ!例え何であろうと作戦は続行する!」
「優斗!」
「はやてちゃん!?」
「はやて!」
「主!?」
困惑するなのは達にクロノはそう呼びかけるがそれに気付かずはやてが独断で優斗の下に向かってしまう。それに気づいたなのは達が追いかける。
「フェイトちゃん!はやてちゃん優斗って……」
「病院であったあの……!」
「ど、どういう事!?なのはとフェイトは彼を知っているのか!?」
なのはとフェイトははやての病室で出会った優斗を思いだす。女子ばかりの空間に居づらさを感じていた彼。はやてと話す姿はとても楽しげであった事が思いだされる。
しかし、優斗を知っているのはこの場では姉であるはやてとなのは、フェイトそれに守護騎士たちしかいない。彼を知らないユーノがなのは達に問いかける。
「う、うん。はやてちゃんの弟で」
「しかし!優斗は闇の書とは何も関係ないはず!我らの行いにも一切加担していないはずだ……!」
「なのにどうして……」
守護騎士たちも困惑する中はやては優斗の前までやってきて肩を掴む。
「優斗!優斗!しっかりして!」
「……ぅ」
「っ優斗!」
「姉、ちゃん……?」
「そうだよ!優斗のおねえちゃんのはやてだよ!」
「……は、はは。本当に姉ちゃんがいる」
優斗はまるではやてがいるのが信じられないというようにか細く答える。はやてを追ってやってきたなのは達も状況が分からず二人を見ている事しか出来ない。
「優斗……、何でナハトヴァールから……」
「……姉ちゃん」
「!どうしたんや!」
「姉ちゃんは、
「当たり前やろ!弟を嫌いになる姉なんかおるか!」
「……そっか。良かった」
そう言うと優斗は立膝になりはやてによりかかる。突然の事に驚くもはやてはそれを受け入れ抱きしめた。
「……姉ちゃん」
「なんや?」
「……ゴメンネ」
瞬間、その場に居る誰もが理解できなかった。
姉と弟の再会。その場面のはずだったのに、はやての腹部には、真っ赤に染まる腕が生えていた。
「優、斗?」
「……」
はやては血を吐きながら優斗に問いかける。優斗は俯き腕を引き抜く。はやての腹部には巨大な穴が開きそこから大量の血が流れ出る。優斗ははやてから離れ後方に下がる。はやてはその場に倒れ込んだ。
「主!」
「はやてちゃん!」
なのは達は急いではやての下に向かう。支援魔法が得意なユーノとシャマルが手当てを行いなのは達はその様子を見る事しか出来なかった。誰もがはやてに視線が行く中一人、クロノだけはデュランダルを優斗に構え警戒する。
「お前、はやての弟じゃないのか!何で、こんな事を……!」
「……ふ、ふふ」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!ヒヒ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
優斗は狂ったように笑う。ひたすらに笑う。突然の事に誰もが優斗を見る。そして気付く。優斗は、辛そうにしているはやてを見て楽しそうに笑っていた。その瞳は黒く淀んでいた。