【本編完結】魔法少女リリカルなのは~Eine noch von Buch der Dunkelheit Geschichte~ 作:鈴木颯手
何時まで経っても僕を襲う筈の衝撃が来ない。感じる間もなく意識を失ったのか?だが目を閉じていても抱きしめている姉ちゃんの温もりは伝わって来る。
不思議に思い目を開けてみれば一面には僕たちが住む海鳴市の姿があった。僕たちは高層ビル並みの高さにいたのだ。もし、高所恐怖症なら一瞬で気絶しそうな高さ。そうでなくてもこんな高度にいること自体怖い。それも不思議な魔法陣?の様な物の上にいれば。
魔法陣の様な物はよく見る円形ではなく三角形だった。角の部分には小さな丸が付いており魔法陣は全体的に白く輝いていた。
「な、なにこれ……」
異常に気付いた姉ちゃんも辺りを見回している。その瞳には困惑と恐怖が映っている。ふと、上空から紫の光が落ちてくる。そちらを覗けば姉ちゃんがいつも抱えている鎖の付いた本が浮いていた。本は生物の様に脈動を繰り返しながら僕たちの方にゆっくりと落ちてくる。僕は明らかな異常事態に姉ちゃんを抱きしめる。姉ちゃんも僕の体に手を回しつつ本の方に視線を向けている。
ある程度の高さまで降りて来た時、本に巻き付いていた鎖に罅が入り砕け散った。本はひとりでに捲られていく。そのページのどれもが空白で染み一つ付いていない。まるで何も書かずに本としたような異質さであった。
『
「えっ……」
「!?」
機械的な声が聞こえてきたかと思うと捲られ終えた本はひとりでに閉じゆっくりと下りてくる。そして僕たちの視線と同じ高さまで降りるとその位置で停止した。僕は姉ちゃんを後ろに押し僕が前へと出る。
『Anfang(起動)』
そう言うと本は黒く輝きだし僕の視界を奪った。しかし、直ぐに光は消えてしまった。
「闇の書の起動を確認しました」
「え?」
「誰だ!?」
先ほどとは違う声が聞こえてきた。右を向けばそこには年上の女性が膝をつき頭を垂れていた。ピンクの髪をポニーテールで結んだ女性は何とも言えない服装だった。
「我ら、闇の書の蒐集を行い主を守る守護騎士にてございます」
「あっ、ああっ……」
「夜天の主のもとに集いし雲」
「ヴォルケンリッター」
と、ここで姉ちゃんはキャパオーバーを迎えたのか後方へと倒れ気絶した。僕は気絶した姉ちゃんを庇うようにして四人に話しかける。
「お前たちは……誰だ?」
「……そう言うお前こそ何者だ?我が主を庇うような姿勢を見せているが」
「(我が主?姉ちゃんの事か?)僕の姉ちゃんだ」
「成程、失礼いたしました。我らは闇の書の主に仕える騎士でございます」
代表者なのかピンク髪の女性が説明する。少なくとも悪い人達ではなさそうだな。今のところは。
「……詳しい話は姉ちゃんが起きてからにしてくれ。先ずは姉ちゃんを家まで送らないと」
「それなら我らにお任せください。ザフィーラ」
「心得た」
ピンク髪の女性の指示に従い唯一の男であるザフィーラ?という人が姉ちゃんを抱える。本当は僕が運びたいけど流石に無理だからな。
【……】
「えーと……。この子は古い異世界の……、ベルカってとこの魔法の本で名前は闇の書。皆はその守護騎士」
「はい」
「で、姉ちゃんがその主になったと?」
「ええ」
結局、姉ちゃんが起きたのは朝日が昇ってからだった。その間僕はずっと起きていて守護騎士たちを監視していた。幸い何か怪しい動きを見せず僕の警戒にも理解を示していた。そして姉ちゃんが目覚めたため説明が行われたんだけど……。正直半信半疑だ。異世界、魔法……まるでラノベに出てきそうな内容ばかりだ。これを疑いもせずに信じる姉ちゃんも姉ちゃんだが。
その姉ちゃんは先ほどから部屋のタンスを開けては何かを探している。僕は部屋の端で膝をつき頭を垂れる守護騎士が何か不穏な動きをしても直ぐに動けるように立っている。……んだけど正直徹夜したせいで眠気が凄い事になっている。話もほとんど入ってこないし。これ寝ても良いかな?
「これまでの日々や覚醒の際闇の書の声を聞かれませんでしたか?」
ピンク髪の女性、守護騎士の将シグナムはその様な質問をする。因みにピンク髪の女性がシグナム、金髪の巨乳美女がシャマル、唯一の男がザフィーラ、同年代っぽい赤髪ロリータがヴィータっていうらしい。
「(今何か酷い事を言われたような……)」
「(なんか胸の事を言われたような……)」
「うーん……、そんな夢を見たような見てないような……。あ、あったあった」
「覚えてないという事はきょにゅーではなかったんじゃないか?姉ちゃん胸でかい人一瞬だけでもずっと覚えているし」
「そうなんかな~?というか優斗何気に失礼な事言うてるで」
「(主は胸の大きい女性が好きなのか)」
「(歳の割には意外な趣味ね)」
「(……巨乳、かぁ)」
「私はなぁ?巨乳が好きなんじゃなく触り心地がいい胸がすきなんや。そこを間違えられては困るで」
「(……主は触り心地の良い胸が好きなのか)」
「(そっち方面で求められたりしないよね?わ、私知識しかないし……)」
「(……胸、かぁ)」
何か話が脱線しつつある気がするけどこれも仕方ない。何もかも女なのに胸が大好きな姉ちゃんのせいだ。多分。