【本編完結】魔法少女リリカルなのは~Eine noch von Buch der Dunkelheit Geschichte~ 作:鈴木颯手
「じゃぁねー!」
「バイバイ!」
病院の前で僕たちは月村さんとアリサさんを見送る。ただ、高町さんとフェイトさんは帰らなかった。当たり前か。敵が目の前にいるのにわざわざ帰る訳ないしシグナムたちが返すわけがない。
「……優斗、お前は主の下に。直ぐに戻る」
「……分かった」
「あ……!」
僕はシグナムの言葉に従い姉ちゃんの病室に向かう。通い慣れたエントランスを抜けエレベーターに乗ると一息ついた。あの場では姉ちゃんや何も知らないであろう月村さんたちがいたから耐えたけどあの場の空気がとても重かった。しかも事情を知るもののみ感じる重みだ。正直な話月村さんたちが来た時の気まずさとは比べ物にならなかった。
「……高町さんたち、どうなるんだろう」
少なくともただで返すわけがない。それだけは分かる。とは言えこのままではまずい。姉ちゃんには悪いけど外食は中止して逃げ出す準備をするべきかもしれない。このままじゃ姉ちゃんに危害が及ぶかも知れないから。
【
「……え?」
気付けば僕はエレベーターではなく暗い場所にいた。周りを見渡しても真っ暗。辛うじて広い空間という事だけは分かる。そしてその空間に浮いている事も。
「これは一体……」
【
っ!?何、これ?遺伝子?作成?記憶?何、だよこれぇ。
頭の中に入って来る、いや今まで記憶から忘れていた者が一斉に出てきたような感覚。膨大な量の知識。そしてこれは……人?守護騎士に……これは誰だ?何で守護騎士に暴力を、罵声を浴びせる?誰だお前は!……あ、まさか前回の?
リンカーコア全てを蒐集して殺し、集めていく。効率よく、魔力をたくさん保有している人間を。
完成?暴走?まるで異次元の様な空間?浸食、失敗。一人の犠牲で終わり?うぅ、駄目だ、頭が……!
【
う、ぁ?
【
止まっ、た?痛みは消えたし脳を侵食するような記憶の濁流もない。どうやら完全に落ち着いたみたいだな。
それにしても、ここは一体何処なのか……。恐らく闇の書関連という事は分かるけど。
取り合えず呼び掛けてみるか。
「誰か!誰かいないか!?」
【
すると、目の前に闇の書が現れた。しかし、何かが可笑しい。まるで別の物の様な……。いや、今はそれどころじゃない。
「ここから出してくれないか?」
【……
多少予想はしていたけどそれもそうか。ならせめて外の様子を見られないか……。
「……外の様子は見られるか?」
【……
闇の書が返答すると脇に鏡の様な物が現れる。そこにはシグナムたちと高町さんの姿がある。どうやら戦っている最中のようだ。……あれが、シグナムたちの騎士甲冑か。初めて見たな。
場面が切り替わる。どうやらヴィータと高町さんの戦いのようだ。ヴィータが巨大な球を生成し高町さんにぶつけている。高町さんはそれをピンク色の壁の様な物を作り防ぐが完全には防げなかったようで地面まで押されていた。しかし、大したダメージは喰らっていないようで直ぐにヴィータを拘束して砲撃を見舞った。明らかなオーバーキル。素人の僕でも分かる高町さんの砲撃の威力。……流石にヴィータでも負傷は免れないだろうなぁ。
そう思ったがヴィータは無傷だった。正確には突然現れた闇の書が防いだのだが。横を見れば先ほどまでいた闇の書がいない。
闇の書はヴィータを守ると周囲をヘビの様な物で完全に覆われた。下からはペンデュラムの様な物がぶら下がっている。
『|Das Anwendungssystem fur automatische Verteidigung”Nachtwal” last an《自己防衛運用システム〈ナハトヴァール〉起動》』
「待て!今は違う!我らはまだ戦える!」
起動したナハトヴァール?というものにシグナムが話しかける。ああ、そんなもの
「こいつ……。そうだ、こいつがいたから」
『
|Vollendung der Schrift der Dunkelheit hat die oberste Prioritat.《闇の書ストレージの完成を最優先》
ナハトヴァールの言葉にその場にいる全員が驚いている。高町さんやフェイトさんが驚くのは理解できるが守護騎士まで驚いている。流石に予想出来るはずなのに……。