【本編完結】魔法少女リリカルなのは~Eine noch von Buch der Dunkelheit Geschichte~ 作:鈴木颯手
「ふざ……けん……な」
ナハトヴァールの言葉に何かを思いだしたと思われるヴィータがぶつぶつ何かを呟く。
「ふざけんなぁっ!」
ヴィータは怒りのままに武器を振りかざし突撃するがナハトヴァールから飛び出た一匹のヘビに防がれヴィータが持っていた武器は砕け散った。
「ヴィータちゃん!」
『|Die Krafte des Feindes wegschaffen, den Kern aus den Sammlungsobjekten sammeln.《敵対勢力排除、蒐集対象より、コアの蒐集》』
ナハトヴァールがそう言うと守護騎士と高町さん、フェイトさんが黒いリングにより拘束される。リングから逃れようと力を入れたりもがいたりするも全く効果はなくナハトヴァールの前に寄せられた。
『
シグナム、シャマル、ヴィータのリンカーコアが露出しナハトヴァールによって蒐集が開始される。……ああ、表情からでも分かる苦痛が走っているのだろう。見ているだけで痛みが伝わって来る。ふ、ふふ。アハハ!ネエチャンモアンナカオヲスルノカナ?
「でやああっ!」
すると何処から現れたのか、家で留守番をしているはずのザフィーラがナハトヴァールへと殴り掛かる。しかし、ナハトヴァール障壁を展開する事で傷一つ付かず代わりに攻撃したザフィーラは拳から血が出ていた。よほどあの障壁は硬いのだろう。
『
瞬間、ザフィーラのリンカーコアも露出し蒐集の準備が完了するが構うことなく攻撃を続行する。
『
しかしそれも無意味に終わり結局ザフィーラは障壁を破る事が出来ずに無様にリンカーコアから魔力を蒐集された。ザフィーラは力尽きたのか狼の姿に戻ってしまった。
ナハトヴァールは次に高町さんたちを近くのビルの狭間に拘束する。これは既にリンカーコアから魔力を奪い取ったため必要ないと判断したためであろう。そして守護騎士たちは生えてきた茨に拘束されていく。リンカーコアを取られた影響か全員意識を失っていた。
全ての準備が終わったのだろう、屋上に魔法陣が形成されそこに姉ちゃんが召喚された。姉ちゃんは苦しそうに俯いているが目の前の状況を知り目を見開いている。姉ちゃんにしたらこの状況は訳が分からないだろうな。何も知らずただ苦しみに耐えているだけなのだから。守護騎士が行ってきたことも、自身の現状も何も知らない。憐れで愛しい僕の姉ちゃん。
『
ナハトヴァールは姉ちゃんの前まで行くとそう言って闇の書を落とす。闇の書は最初に開かれた時の様に勝手にページが捲られていく。ただ、あの時と違うのはページは全て埋まっている事と僕がこの黒い空間で覗いている事だ。
『
「なんや……、それ。あんた……、誰?」
『
「そんなんええねん!シグナムたちに何した、皆を降ろして!返して!」
『……
そう言うとナハトヴァールは再び上昇する。見るからに姉ちゃんの言う通りにはならないだろう。そんなのが通用するなら守護騎士たちから強制的にリンカーコアを蒐集したりしないだろうからな。
『
|und wird mit dem Kernmodus fur meinen Herrn wiederhergestellt《コアモードで主に還元します》』
「あかん、ちゃう……。そんなんちゃう!」
案の定ナハトヴァールは明らかに姉ちゃんの願いとは真逆といっていい事を言い出した。恐らく姉ちゃんが覚醒を拒否したから強制的に覚醒させようとしているんだろう。姉ちゃんはナハトヴァールの言葉を聞き必死に否定する。しかし、そんな言葉が通じるなら最初からこんな事にはなっていない。姉ちゃんの言葉も空しくツタが守護騎士たちに向けられる。先端は鋭い。あれで刺されれば簡単に絶命するだろう。彼らはシステムだから死とは違うだろうけどな。
「あかん……」
姉ちゃんはその場から動けず言葉で止める事しか出来ない。
「やめて」
姉ちゃんの目に涙が溜まる。
「やめて」
ツタがググ、と後ろに少し動く。
「やめてぇぇぇ!」
『
世は残酷だ。姉ちゃんの叫びも空しく守護騎士の体をツタが貫いた。