ショタにFPSを教える師匠はスナ狂とバーサーカーです   作:もぐら王国

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○PEXやらが流行ってると聞いて


仲間集め

「あー あーあ、 聞こえる?」

「うん!聞こえるよユズ姉ちゃん!」

「ん なら良かった」

 

PDにつないだヘッドフォンから、少年特有の丸みを帯びた声ー甥のしょうたの声ーを聞き、ユズは短く返事ををした。

ユズの見つめるPCの画面はゲームが始まる前の待機画面で、右下にはクリックすればゲームの始まる横長のゲームスタートボタンが表示されていて、中央には横並びに二人のアバターが立っている。

片方は忍者のような恰好をした女性で、もう片方はゴーグルを被っている男性である。

このアバターたちは現在、国内外で流行しているFPS内のキャラクターの一部であり、女性のキャラクターの頭上には”Yuzu”のプレイヤー名が、男性の方には”Syouta"のプレイヤー名が書かれていた。これは二人がそれぞれ操作するキャラクターであることを示している。

 

つまり二人はパーティで、今から一緒にFPSをやる。

 

きっかけは単純なものだった。

しょうたの両親は共働きで、いつも家で退屈そうにしている小学生のショウタの為にと、PCでゲームをする事を許したのだ。そうしてショウタが興味の赴くままにいろいろゲームをしていくうちに辿り着いたのが、FPSというジャンルのゲームであった。

FPS。一人称視点のシューティングゲーム。

特に現在最も流行っているソレは、SFでメカニックな雰囲気の施設があったり、もしくは荒涼とした砂漠が広がっていたり、かと思えば険しい渓谷が広がっていたりと、何とも広大なフィールドを舞台にした大人気ゲームである。

しょうたも食いついて早速プレイしてみた。が、しかし、この手のゲームはリアリティが売りな分、操作がなかなか難しい。

圧倒的ぼろ負けであった。話にならない。あー無惨無惨。

そこで先生としてしょうたが泣きついたのが、唯一身近にいる人の中でゲームの得意そうな、というかゲームばっかりやってる従妹のユズであった。ユズはそれを受け、”可愛い弟分の為なら”と一肌脱ぐことにした。

しかしこの時のショウタはまだ知らなかった。

ユズが日本でも指折りのプロゲーマーでスナイパー狂であるということを・・・。

ショウタがこの事実に気づくのは、これよりもっともっと後になってからのことである。

ともかくとして。

ショウタはユズに教えを請いた。

 

 

 

「んん~~っ」

 

未だ画面は待機画面。

ユズは椅子の上で抱えた両膝に顎を乗せたまま画面を見つめ、悩ましげに声を漏らした。

 

「どうしたのユズ姉ちゃん?」

「んん~~」

「やらないの?」

「んん~~」

 

ユズは肯定とも否定とも取れない決まりの悪い返事をする。しかし勿論、ショウタに意地悪をしているわけでは無い。ただ、二人という人数が彼女を悩ませていた。

というのも実はこのゲーム、基本的に3人パーティでの参加が原則で、人数が足りない場合は同じように足りていない者同士でランダムでパーティを組まされての参加を強いられるのである。

しかし、ユズは今回ショウタに武器の使い方(スナイパーが如何に素晴らしく美しくかっこいいか)などを教えながらのプレイするつもりだったため、素早い動きは出来ず敵にも狙われやすくなることが予想された。もし足りないもう一人を野良の人とのパーティで補ったとしても確実に迷惑をかけることになってしまうのである。

そうしてそれならばと、ユズは自らのフレンドに助けを求めようと思いフレンドの状況を確認するのだが、折悪く現在ログインしてるフレンドがそもそもいなかった。

 

どうしたもんかな・・・ 

 

ユズが”もう最悪、ショウタと野良のマッチに潜って初っ端から実践投入で鍛えるか・・・”などと考えていると突然

 

\シュイイン/

 

という音と共に、今までただの空間だったアバターの隣の画面の一角が丸い光に包まれた。

 

「あっ」

「えっ?」

 

しょうたの疑問符の混じった声。

光と音の後にそこに現れたのは・・・ターバンを巻いた人型の骸骨のアバターであった。

 

「よおユズ! 元気してっかぁ? 久々に一緒にやろうぜ!」

「うわっ」

 

ユズは顔を露骨に歪めた。

ヘッドフォンを通る、少し粗暴で気さくな雰囲気の男の声。

プレイヤーネームをKenzo。

ユズのフレンドにして、ユズのこの場に来てほしくなかった人物ランキング上位の人物である。

 

「おい、なんだ”うわっ”って」

「分からないの? ”うわっ出た!”の”うわっ”よ」

「人をゴキブリみたいに言うな!」

 

挨拶がてらの応酬。二人はこれが普通である。

 

「ったく・・・ お? もう一人は初めましての人か?」

 

ケンゾーは見慣れないプレイヤー名を見付けて、尋ねるように声をかける。

 

「あっ えっと その・・・」

「んあ? 随分と子供っぽい声してんなぁ?」

「ああ、あ・・・あの・・・」

 

しょうたは知らない人に突然話しかけられた事と、その荒っぽい声に驚いて声を出せなかった。

 

「ちょっと ショウタを恐がらせるのやめてくれる?」

 

”だから嫌だったのよ”と見かねたユズが間に入る。

 

「は? 恐がらせてねーだろっ そんなガキじゃあるまいしよぉ」

「恐がってるわよ あ、あとショウタは小学生だから」

「だあ゛!? まじかよ! でも、何で小学生がいるんだ?まさかお前ショタコンだったのか!?」

「違うわよ! ショウタは私の弟子になったの!」

「弟子ぃ? スナイパー狂いのユズが弟子ぃ?」

「はあ゛? 文句あんの? その頭ニョルミル(つよつよスナイパーライフル)で撃ち抜くわよ?」

「はぁ!んなもん当たるかよ! お前こそ俺のショットガンで穴だらけだかんな!」

 

そこからは売り言葉に買い言葉。二人はショウタのことをすっかり忘れて罵り合いに夢中になる。

 

「あ・・・あの・・・ユズ姉ちゃん? ケンゾー・・・さん?」

「「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー」」

 

「・・・」

 

夢中である。

 

 

 

 

少し時間が経過して、二人の罵声のストックが底を尽きれば飛び交う言葉が無くなり、一旦の静寂が流れる。そうしてようやく話がショウタのことに戻ってきた。

 

「んで、その子は結局何なんだ?」

「その子じゃなくてショウタよ」

「・・・ショウタはどういうアレなんだ」

 

これを受けてユズは若干の抵抗感を感じつつも、やむなしと事情を説明した。

 

「なるほどなあ~ だったら俺がパーティに入ってやるよ!」

「え、いらないけど」

 

今改めて確認したところユズの別のフレンドが何人かログインしているようで、その人たちに頼みたいというのがユズの希望である。

 

「なあショウタ? 俺も一緒に遊んでもいいよな?」

 

ケンゾーは先ほどよりもいくらか柔らかい声色でショウタに尋ねた。

 

「あ、はい! やりたいです!よろしくお願いします!」

「ふぇ?しょうた?」

 

予期せず

 

「おお~ ありがとよ! ユズと違って礼儀正しい良い子じゃねえか!」

「おいこら」

「ええと、、僕はショウタって言います」

「そうかショウタな 俺はケンゾーだ 好きに呼んでくれ」

「はい、ケン兄さん!」

「かあ゛あ゛あ゛っ゛ 良い響きだ!」

「ちょっとまっ」

 

和やかな空気。

ユズが気付いたときには、ケンゾーは仲間に加わりそうであった。

 

\もう一回呼んでくれ/

\ケン兄さん/

\あああもう一回!/

\ケン兄さん/

\あああもう一回!/

 

仲良さげな会話も聞こえるが・・・

 

「ねえショウタ、悪いことは言わないわ 私の他のフレンドが”別に協力しても良いよ~”って言ってるの だから、今からでも遅くないからこいつはやめておいた方が・・・」

「え、僕はケン兄さんが良いな~」

「だってよユズ!振られたな!がははははあ」

「は?振られたとかないし 第一、ショウタがあんたのプレイを真似したらどうすんのよ!」

「良いじゃねえか!」

「良くない!」

 

ユズがここまでケンゾーを嫌がる理由。それは、、

 

「ショットガンとマシンガンで敵に突っ込む、変態特攻プレイヤーの癖に!」

 

ユズをスナイパー狂いと定義するのであれば、ケンゾーは逆に肉弾戦狂い。

そして実は日本で屈指のプロゲーマーな彼は、相手を見付けたらとにかく接近戦を仕掛けるスタイルで畏れられている。

つまるところこの男、

 

命知らずのバーサーカーである。

 

「がはははははは!!! 一瞬の間における玉の奪い合いこそが、FPSの醍醐味ってもんだろ!」

「ふんっ 絶対スナイパーライフルでスパっと仕留める方が楽しいから」

「これだから芋野郎は」

「そういうあんたは猪野郎よ」

「引きこもり」

「死にたがり」

「陰キャ」

「自己中」

「あーほ」

「ばーか」

 

また始まる。しかしそれを止めたのは意外にもショウタだった。

 

「あっははwっあはははははwwwwあはははははwwwww」

「「?」」

 

ショウタは大笑いした。

 

「どうしたのショウタ?」

「面白いことなんてあったか?」

「僕、やっぱりケン兄さんと一緒にやりたい! だってユズ姉ちゃんと喋ってるときがすっごい面白んだもん!」

「「なっ」」

 

幼い少年は正直であった。

 

「二人とも仲良しさんだね!」

「違うわよ!」

「違うぞ!」

「あはははwwwww」

 

 

こうして対極な二人と何も知らない少年はパーティを組むこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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