ショタにFPSを教える師匠はスナ狂とバーサーカーです   作:もぐら王国

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初戦闘

ゲームは飛行船から始まる。

スタートボタンを押せば画面が切り替わり、広大なゲームマップとその上空を飛ぶ飛行船が映される。飛行船はたくさんのプレーヤーを乗せた、言うならば輸送船である。そこからチーム毎に一人ランダムに決められたジャンプリーダーが、チームを引き連れて好きなタイミングで飛行船から飛び降り、バンジージャンプの要領で下降しながら角度を調整して好きな目的地へと誘導・着地することになる。

その際ジャンプリーダーには、今後の展開を有利にするためのセオリーが存在する。それは他のバンジーしているチームの様子を見て、目的地が被らないようにするという事である。と言うのもこのゲーム、最初はプレイヤーは皆手持ちが無く、武器にしろ弾にしろ救急物資にしろ、地上にランダムで散らばったそれら物資を早い者勝ちで回収する必要があるのだ。そのために目的地が被ると早々に物資の奪い合いが起こり、殴られるか銃で撃たれるかでどちらかのチームは高確率で壊滅させられてしまう事になる。

無用な争いはするべきではない。ましてやリスクを払ってまで行うのは愚の骨頂と言える。

 

ではここで現在下降中の、ジャンプリーダー:ケンゾー率いるショウタのチームの様子を一つ。

 

「敵チームをぶっ潰せえええええええ お前らあああ突撃だあああああああ」

 

愚が極まっていた。

 

「ちょっとあんた! 別チームいるの見えないの!?」

「見えてんよ!だから行くんだ!正面衝突あるのみ!!」

「何でそうなるのよ!」

 

偶然にもジャンプリーダーに選ばれたケンゾーは、ユズとショウタを引き連れて茅葺き屋根の家が密集した集落のような地帯へ降りようとしていたのだが、その近くに目的地を同じくする別チームを見付けると猪のように突っ込んでいった。

そして現在、別チームの後にぴったりとくっついてストーカーバンジーの真っ最中というわけである。

 

ついでにユズの指摘も空しくケンゾーは戦う気満々である。

 

「え、あの、大丈夫なんでしょうか・・・?」

「任せろショウタ!ケン兄さんにかかりゃあ楽勝よぉ!」

「かっこいいですね!」

「だろお!決闘は男のロマンだよな!?」

「ショウタ騙されちゃだめよ こいつはただの野生の猪よ」

 

ショウタの不安を吹き飛ばすように、やっぱりケンゾーは戦う気満々である。

 

下降し続けてやがて地面が近づいてくると、アバターはモモンガのような姿勢から地面に対して垂直な姿勢をとる。ショウタ達から少し離れた位置にいるのはケンゾーが粘着し続けた別のチームである。2チームは周囲に茅葺き屋根が散見される、緑豊かな大地へと足を踏み下ろすこととなった。

 

地面との距離が近くなり、、着地した。

 

その瞬間ケンゾーは敵チーム目掛けて駆け出して、ユズはそれとは真逆の方向に見える家へと駆け出した。

 

「ショウタも急いでどこかの家入って物資漁って!」

 

急かすようなボイスチャットが飛ぶ。ショウタはいくら初心者と言えど、事前のプレイで基本的な操作は覚えているので操作が分からないということは無い。

棒立ちだったショウタのアバターは、ユズの指示に従ってユズ同様に走り始め、テキトーな家の中へと入ると物資を漁った。

ユズとショウタの行動は、序盤の近くに敵がいるという状況において最も適切なものである。この盤面において重要視されるのは、何でもいいのでとにかく銃と弾の確保、もしくは銃弾から身を守るシールドの確保。それらが見つかれば相手を仕留めるか、この場から逃げ去るかの選択肢が出来る。

それ以外には一応相手を殴るというアクションも存在するのだが、それは相手を追いかけて接近する必要がある上に、折角当ててもあまりダメージが入らないので推奨されない。

だから一刻も早く欲しい物を見つけるために物資を漁る必要があるのだ。

手ぶらでは無力に等しいのだから。

 

「ユズ姉ちゃん、ケン兄さんは大丈夫かな?」

「あのバカを心配するより、物資の方を心配した方が得よ」

「でもやられちゃうかも」

「大丈夫よ あれはそういうタイプの馬鹿なのよ」

「そういうタイプ?」

「ライフが減れば減るほど興奮する変態ってことよ」

 

 

 

一方のケンゾー。

着地して一目散に敵チームへと接触を図ったケンゾーは、敵のうちの大柄なキャラ(以後デカと明記)に狙いをつけて接近。そして殴りかかった。攻撃されたデカは逃げ回りながら同時に物資を確保するために、木と葉っぱで作られた簡素な家の中へと逃げ込もうとする。

しかしそれを追っていくケンゾーである。ケンゾーの操作するキャラは細身で、大柄なキャラと比べると足が速い。そのために敵の背中に直ぐに追いついて何度も何度も殴りかかる。

微弱なダメージである。しかも、もし銃と弾を持たれれば、一瞬で立場は逆転する。

それでもそんなリスクを払ってでも、執拗にデカを追いかけていく様はまさに狂犬のようである。

デカはとうとう家の中へと入った。そうして走りながらに物資を回収しているようであるが、一向にケンゾーに銃を向ける様子がない。銃が拾えていないのだ。

 

「おらおらおら!どうしたどうした! 悔しかったら反撃してみろや!」

「うるさいんだけど」

「ケン兄さん・・・」

 

相手を煽るチンピラのケンゾー。相手は通話をOFFにしているので声など届いていないし、逆にボイスチャットがONのままなので味方には聞こえまくりなのは気付いていない。

デカは運が悪かった。ストーカーされた挙句に、しつこく狙われて、しかも銃が拾えない。ケンゾーはデカが抵抗しない事を良いことに、その背中にここぞとばかりに殴りかかる。

いくらちょっとのダメージと言っても蓄積すれば、大きなダメージとなる。

ケンゾーはここに勝機を見出していたし、現状に既に勝利を見ていた。

このまま殴ってライフを削り切るのだ。

 

・・・だがそこまで甘くは無かった。

デカが銃を装備したのだ。それは家の中に転がっていた更なる物資を漁った時に手に入れたものであった。

 

「ああ!ずりいっ!!」

 

ケンゾーはそれを確認すると素早く後退し、扉を開け一旦家を出た。さすがに生身の状態で撃たれるとまずい。シールドを被っていない状態だとライフが一瞬で溶かされてしまうのである。

しかしケンゾーはパンチでミンチ計画を諦めたわけでは無かった。見ればデカは依然家の中。ケンゾーはそれを確認すると素早く反対側の扉へと回り込む。

奇襲とまではいかないまでも。あと数発殴ることが出来ればデカをお陀仏に出来る。

そんな魂胆のケンゾーだったのだが、そんなケンゾーを窓から見ていたのがデカである。デカは回り込むケンゾーを見てタイミングを計ると、反対側の窓にグレネードを投げ込んだ。

 

\コトッ/

 

音を立てて扉の前に転がるグレネード。数秒後に爆発することになるグレネード。

デカは実は銃弾を持っていなかった。そのため期待することはこのグレネードの転がる音を聞いてその存在に気づいたケンゾーが、自分から離れてもらい時間稼ぎをすること。そうしてもうすぐにでも仲間が合流のために家に向かってくる。そうすればこのヤバいやつともおさらばである。

そういう考えがあった。

筈だった。

 

\ドガアアンッッ/

 

爆発が起こり、、そして静寂があって煙のが立ち上って、、そしてケンゾーが現れた。

グレネードを食らいながらも突撃を仕掛けるケンゾーがいた。

 

ケ ン ゾ ー は グ レ で は 止 ま ら な か っ た 。

 

「嗚呼ああああああ痛いいいいいっっ でも生きてるう゛う゛う゛う゛う゛っっ↑↑」

 

ケンゾーは興奮した声を上げながら、デカへと接近した。

ケンゾーのライフゲージは数ミリ。銃弾どころか、殴られたらその瞬間に敗北する。だから普通のプレイヤーはそんな選択をしないのだ。

だがケンゾーは普通では無いのだ。

倒せる可能性がある限り、引くことをしない狂気のバーサーカーなのである。

 

「じっとしてると殴っちゃうぜえええええええ!」

 

デカは予想外の事態に思考が硬直したようで、アバターが一瞬動きを止めていた。その瞬間が命取り。

FPSでは一瞬で命のやり取りが行われるのだ。

ケンゾーはそのままデカを殴りつければ、あっけなくデカのライフは無くなり、消滅。そこにはデスボックスと呼ばれる、死後そのプレイヤーが持っていた物資の詰まった箱だけが残った。

 

「どらああああああ!! デブ討ち取ったああああああ!!」

 

ケンゾーは歓喜の雄たけびを上げながら物資を漁る。

 

「よっしゃあ銃とったぞ!」

 

その間、合流に向かっていた残りの二人の敵が、ケンゾーの背後の扉を開けた。絶賛物資を漁り中だったケンゾーは反応が遅れる。

ケンゾーが敵に気が付いて後ろへと銃口を向けるより、敵がケンゾーへ銃口を向ける方が早かった。

あわやケンゾー。

 

「やっば」

 

\バアンッ/

 

容赦なく引き金の引かれた発砲音。次いで倒れたのは、、敵二人であった。

 

「なに油断してんのよ」

「やるじゃねえかユズぅ!」

「ユズ姉ちゃんかっこいい!」

 

ユズは漁った物資の中でスナイパーライフル[スネーク]を見付けると、同じく物資を漁っていたショウタからたまたまあったスナイパーライフルの銃弾を受け取り、家の窓からスネークを構え、そうしてケンゾーのいる家の窓から照準を通して玄関に現れた二人の敵の頭をまとめて吹っ飛ばしたのだ。

 

「やっぱ家の扉とか狭い場所だと縦に並ぶから、同時に頭いけるわね」

 

と言っても、本当にほんの一瞬だけなのだが。それでもユズなら可能である。ユズのその腕なら可能なのである。

 

「くっそー いいとこもってきやがって!」

「あんたあれ絶対死んでたわよ」

「いいや 俺なら勝ってたね!

「あんた見てたけど、今のライフもうミリでしょ」

「ライフなんざあってないようなもんだろ!」

「あんたの所にグレ投げ入れるわよ?」

「ユズさん助かりましたぁ!」

 

ユズは実は投擲の腕も相当に得意である。

 

「ショウタ 今ので何となく分かったかもしれないけど、スナイパーはこうやって敵を待って撃ち抜くのよ」

「いやいやショウタ!そんなことよりも見てたか?俺の接近戦!武器が無くてもああやって攻めて、時には敵の考えを欺くのが効果的なんだぜ!!」

「うん 見てたよ!二人ともかっこよかった!!」

 

ショウタは憧れのこもった声で言った。

 

「ショウタにスナイパーのカッコよさが伝わってよかった でもどちらかと言えば、スナイパーの方がこの突撃馬鹿よりかっこよかったでしょ?」

「なんだあ? お前の功績なんざ俺がいなかったら絶対あり得なかったろ!? だから俺の方がかっこいいに決まってんだろ!」

「良く喋る猪ね」

「なんだ引きこもり」

「なによ」

「なんだあ」

「「 文句あんのか?

   文句あるの? 」」

 

「あはははwwwあはははあははwwww」

 

二人の口喧嘩を聞いて、ショウタは楽しそうに笑った。

 

 

 

 

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