ショタにFPSを教える師匠はスナ狂とバーサーカーです   作:もぐら王国

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初キル

 

 

ショウタ、ケンゾー、ユズのそれぞれ操作する、ゴーグルを被った細身のアバター、人型の骸骨のアバター、忍者のような女アバターはそれぞれ倒した敵の資源を漁っていた。

ライフが0になったプレイヤーは、武器を含め持っていた資源を全て詰め込んだデスボックスへと生まれ変わる。ショウタ達はそれをハイエナの如く探るのだ。

 

「あ、カジキがある! ショウタこれ持っとくといいよ!」

 

ユズが若干興奮した声を上げて、ショウタへと勧めた。

 

「カジキ・・・?」

「うん、カジキ あ、カジキって言うのはねえ・・・」

 

カジキ。正式名称をKJK-1882。スナイパーライフルの一つで、その名前やくすんだ青色の塗装、そしてなにより弾が他のスナイパーライフルに比べて、偏差を意識する必要が無いほどに遠距離でも真っ直ぐに飛んでいくこと。

そのような理由からプレイヤーからはカジキと呼ばれている。尚、撃った際の反動が大きく連続では撃てないが、一発入魂のスナイパーの入門としては非常に適した武器と言える。といったニュアンスのことをユズは淡々と説明をした。

 

「おすすめよ」

「分かった もってくね」

 

ショウタはユズに勧められるがままにそのカジキをアイテムイベントリへと入れた。

そんなショウタに声をかける人物がもう一人。

 

「おいおい~ こっちの箱には”きゅーまる”が入ってるな!」

 

中~近距離で連弾するアサルトライフルの一種である。

 

「よっしゃあ俺が持つぜえ!」

 

ケンゾーが持つのである。

 

「じゃあいちいち言わなくてもいいでしょ」

「グレネード発見!俺が持つぜぇ!」

「新手の嫌がらせ辞めてくれる?」

「注射器も持つぜえ~~~」

「うっざ」

 

何でもかんでも持ちたがるケンゾーに、ユズは呆れながら地面にあるアイテムを落とした。

 

「ほらエボシーよ あんたが持ってほうがいいでしょ」

 

光る鎧のアイテム、エボシー。名称エボリューションシールド。被っているプレイヤーが相手にダメージを当てる程に色が変化し硬くなる。スナイパーのユズや初心者のショウタよりも敵とドンパチばっかりするケンゾーにはもってこいのアイテムである。

 

「お、さんきゅう! じゃあこれ、お返しだ」

 

落とされたのはステッカー。使い道皆無。ゴミである。

 

「ゴミよこすな 頭飛ばすわよ」

 

スネークでドーン

 

 

 

アイテムを漁れば次は場所移動である。現在は周りを森に囲まれたエリアであるが、その場所はマップの少し端の方に位置していて、時間が経つと制限が入りダメージを受ける地帯となってしまう。

そのために3人はマップの中央へと移動する必要があった。

森を抜けるように3人でまとまって進んでいる間、ショウタはユズに問いかける。

 

「ケンゾー兄さん嫌いなの?」

 

含みのない率直な疑問である。出会ってから今までショウタが見ているのは罵詈雑言を飛ばし合ってる素晴らしい友情である。ショウタとしては、ユズがそこまで他人に対して露骨に感情を見せているのを見たころが無いので興味が湧いていた。

 

「嫌いというか合わない あいつ突撃しかしないから」

「がははは 俺には度胸があるからな!」

「脳は無いわね」

「けっ!」

 

ユズの容赦のない返しにケンゾーは空気を吐き捨てた。

ショウタは二人の関係を尋ねる。

 

「どこで知り合ったの?」

「それは勿論ゲームの中でよ」

「1年前だな」

「わ~長いんだあ~」

 

ユズとケンゾーの付き合いは意外と長い。だからそれは過去の記憶となって多少の誤差も生じ得る。

 

「最初野良で組んだパーティの中にこれがいて、やたらめったら敵に突っ込んで死ぬから助けにもいかずに見捨てたら、わざわざボイスチャットで”助けてくれええええ!!””へるぷみいいいい”って叫んでたのよ」

「あああ?? そんなことしてねーよ!! あんときは確かユズがしつこい敵に追われてて”助けて”ってボイチャで言うから俺がかっこよく助けに行ったわけよ!!!」

「ええっと・・・?」

「あんた勝手に記憶改ざんするのやめてくれる? そんなみっともない事しないわよ」

「はああ?俺だってそんな腰抜けみてーな声は上げねーよ?」

「は?」

「あ?」

「仲良いなあ・・・」

 

 

 

気付けば景色は森から抜け出し、3人は周囲を岩に囲まれた一本道の上り坂を走っていた。

この先、上り坂の終わりの、トンネル状になった岩をくぐった先には、大きく開けた場所が広がっている。そこはいくつもの研究施設の建物が並び、隠れるのにも最適で、物資を漁るのにも向いている。多くのプレイヤーが序盤、中盤で目指す目的地でもある。

しかしだからこそ、この場所に行くには危険が付きまとう。既にその場所に到着したプレイヤーはショウタ達のように新しく向かってくるプレイヤーを待ち構え、狙い撃つ。

開けた場所に続く道は多くない。だから例えばショウタ達が進む上り坂の終わりに銃口の照準を合わせておけば、トラップを仕掛けておけば、トラでも置いておけば(いない)簡単に優位が取れるというもの。

この先は危険。

突破には策が必要であった。

 

「ショウタ止まって」

 

ユズがショウタを静止させた。

 

「ユズ姉ちゃん?」

「こっから先は危ないかもだから、ショウタと私はこっち」

 

そう言ってユズが、上り坂のてっぺんからは斜線が遮られるように置かれた岩陰の位置に、マップ上で赤いマーカーを点滅させた。

この行為を”ピンを指す”と言い、プレイヤー同士これで意思疎通を図る。

ユズの操作する女忍者がその場所へと向かって行くので、ショウタのゴーグルマンもその後を追い、身を隠す。

 

「あれ?ケンゾー兄さんは?」

 

隠れた二人をよそに、ケンゾーは坂を上り続けていた。

 

「大丈夫だから」

「え?」

「ケンゾー、頼むわよ」

「あいよぉ」

 

威勢のいい返事と共にケンゾーは尚も直進していく。その姿はまさに猪である。

一方でショウタはこの先が危険地帯であることを知っていた。不用意に突っ込んでいい場所ではない。ハチの巣街道まっしぐらである。そのために今も独りで突っ込んで行くケンゾーの行動の理由が分からなかった。

 

「ケンゾー兄さん死んじゃうよ?」

「それならそれでショウタと二人っきりになれていいね」

「死んじゃうの可哀想だよ」

「まあ大丈夫よ あいつとパーティー組んだ時はよくやってる動きだから」

「え?」

「”釣り”って好き?」

 

\しゅぱああああああ/

 

ケンゾーが坂を上り切ったところで、どうやらそこには地雷式のガストラップが仕掛けられていたらしく、ケンゾーの骸骨マンが瞬く間にもくもくとした紫色の煙に覆われた。

毒ガスである。

ショウタ達からの視点ではその姿はもはや黒い影となり、煙にゆらゆらと映るのみである。

直後。

 

\ばばばばばばばっっっ/

 

銃声。連弾された細長い銃弾のエフェクトが無数に煙の中の人影に向かって飛んでいく。まさしくケンゾーは穴だらけになったように思われた。

 

「ケンゾー兄さんんんn!!!」

 

ショウタが心配で声を上げる。しかし同じチームとして画面に表示されているケンゾーのライフは7割を失ったところでそれ以上は減少していない。

ショウタがどんな現状なのかと肝を冷やしていると

 

「助けてええええええヘルプみいいいいいい」

 

情けない声を上げながら、煙の中からケンゾーが叫び声を上げながら坂を猛スピードで降りてきた。そしてその背後には3人のプレイヤーが、血眼でケンゾーの後を追っていた。

 

「よっし仕留めるわよ ショウタも構えて」

「えええっっ」

 

ショタは突然飛び出してきたケンゾーの姿に驚いているが、ユズは待っていたとばかりに冷静にそう告げた。

当然のことである。

待っていたのである。

つまりケンゾーは

 

「よっしゃああ3名様ご案内でえええす!!!」

 

囮なのである。

 

これもひとえにケンゾーの並外れた俊敏さが可能にする芸当である。ケンゾーがわざとライフを減らして相手を煽り、これは好機と追撃してくるプレイヤーを自分たちのフィールへと引き釣り降ろして、そこをユズが狙い撃つ。

これが二人のよくやる連携なのである。

今もケンゾーは敵を中距離程度の背中に引き付けて、痙攣するような細かい動きや、不意に斜めに飛んだりする動きで敵の銃弾を巧みに避けている。

ユズがスナイパーライフル[スネーク]を岩から顔を出して構えた。

 

\バンっ! バンっ!/

 

敵の3人のうちの一人の胴体に命中するも、ライフを削り切れない。

 

「早くしろや!」

「分かってる!」

 

ケンゾーの逃避行も長くは続かない。時間が経てば徐々に追い詰められてしまう。

ユズから銃弾を撃ち込まれた相手プレイヤーは、それを嫌がるように不意にぴょんと飛び跳ねた。

しかし空中のプレイヤーは身動きがとりにくくなる。

チャンス。

 

「しめた!」

 

\ぱんっ!!/

 

リオがすかさず照準をずらして、そのプレイヤーの頭を飛ばした。華麗なるヘッドショット。

いともたやすく行われたこのプレイだが、現実世界におけるユズの驚異的な反射神経と瞬間的なカーソル裁きによるものであった。

 

「おら次い!」

 

ケンゾーが喜ぶ間も与えず次を煽る。

 

「分かってるって!」

 

ケンゾーの言葉に応えるようにユズが、もう一人の敵プレイヤーに狙いを定めた。

先ほどの偏差を頭に入れて。動きの癖を何となく読んで。

 

\ぱんっ/

 

一発で仕留めた。

 

残りは一人。ケンゾーも1対1になったところで逃げるのをやめて後ろを振り返り、応戦をし始めた。

 

「おらおらおら!弱い者いじめかっこ悪いなああおら!」

 

弱者とは思えない凶暴な口調である。

しかし弱者ではある。体力の差があり過ぎる。ケンゾーの骸骨マンのライフは残り1割に迫っていた。

援護が必要であった。

 

「ショウタ構えて」

「え?」

「ショウタならやれる」

「ええ?」

 

ユズはショウタにスナイパーライフル[カジキ]を構えさせた。

援護するのはユズではない。

 

ショウタである。

 

「ケンゾーいったん止まって!」

「止まれるか嗚呼!死ぬわ!」

「しねえ!」

「ふざけんな!」

 

ユズとケンゾーのひどいやり取りを背後に聞きながら、ショウタは銃口を敵へと向けていた。

頭部に照準が合っているのだが、相手が動くためすぐにぶれてしまう。

しかしケンゾーもキレるばかりではない。

”ショウタに撃たせやすくしてほしい”というユズの意図をくみ取っていた。しかし血気盛んな敵がそう都合よく止まるはずもない。ならばどうするか。

 

予想外のことをすればいい。

 

「これならどうだあ!!」

 

ケンゾーがアイテムを投擲した。

謎のステッカー。しっかりとしたゴミ!

それが今は勝利への鍵!

 

敵は思わぬゴミに一瞬動きを止めた。

 

「今だあああ!!!」

 

ケンゾーの叫ぶような声と共に、ショウタがカジキの銃弾を放った。

それは見事に直線を描き、、そして、、敵の頭部に命中した。

 

「ショウタ!ナイスヘッド!!」

「やるじゃねえか!!」

「っっっ!!!」

 

ショウタは息を呑んだ。

初めてのショウタのキルは、見事なまでのスナイパーヘッドショットである。

 

「やったああああ」

 

ショウタが嬉しそうに声を上げた。

 

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