厄神様が通る道   作:転箸 笑

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第1話

 

山の中腹で、私は旅に出る決意を固めた。

厄を集める為に、というのもある。でもやっぱり、一番大きな理由としては此処に居ることに飽きたからだろう。そもそも私は此処に執着する理由は無い。

確か最初は、人間が近づかない場所に行こうとしていた気がする。そして、天狗と鬼が支配するこの山に来たのだった、と思う。覚えていないが、まぁ私が此処に来た理由などどうでもいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「えー!?雛、出て行っちゃうの!?」

うん。ちょっとだけ寂しいけれど。

 

廃れた神社で、静葉にお別れを告げる。とはいえ、いつかは戻ってくるのだけど。多分近い内に。穣子が居ないけど、多分散歩にでも行ったのだろう。この二柱も立派な神様なのに、かなり人間くさい。

でも、だからこそ私も仲良くなれたのだろう。なんやかんや、私も人間が好きだから。

 

「うー、また友達が離れていくわ。まぁいいわ、元気でやってね」

うん。行ってきます。

「ちなみに、何処から巡っていくの?」

守矢神社。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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初めて来たけど、こんなに大きかったのね。人っ子一人居ないけれど。

 

「そりゃ、こんなに寒いとねぇ。春くらいから人間が来始めるよ」

蛙なのに冬眠しないのね。

「私、別に蛙の神様じゃないよ?」

蛇だって寒いと辛そうよねぇ。時々見ていて可哀想になってくるもの。

「...本当に蛇?神奈子のこと言ってない?」

 

そういえば、二柱居ると聞いていたのだけれど。

もしかして自ら信仰集めに?でも、有り得なくは無いかなぁ。

 

「今神奈子なら地底に行ってるよ。頭が空ろな子を探してるんだって」

地底?久しく聞いたけれど、どうやってその存在を知ったの?

「そりゃまぁ、祟り神でちょちょいと」

ふぅん。まぁいいけど、あんまり面倒くさいことしないでね。

「ありゃ?貴女ってそんなだったっけ?」

私だって愛しているもの。この郷を。

「へぇぇ。ただ勘違いしないで欲しいけど、神奈子だって妙なことをしようとしてる訳じゃない。単なるエネルギー革命よ」

八咫烏、ね。

「さぁね。私もそんなに説明してもらってないから」

そう。それじゃあ、もう行くわ。風祝にもよろしく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...一瞬で見抜かれちゃった。厄神様って、厄介なのねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、山を降りようかしら。そしたら何処に行こうかな。

そういえば、私ってこの幻想郷のことを殆ど知らないのよねぇ。長いこと山に籠ってたからなぁ。見聞を広める、っていう目的もこの旅にはあるのかしら。

 

「おい、止まれ」

あら、何かしら?

「此処は我ら――天狗の土地だぞ。貴様こそ何をしている」

...若い子って、物を知らないのねぇ。それとも貴方が特別無知なだけかしら。

「...言うじゃないか、小娘。つまり、天狗を敵に回すと」

あらあら、本当に知らないのねぇ。まったく、天魔も教育がなってないわねぇ。

 

まったく、本当に腹立たしい。いくら天狗との接触を避けてきた(関わったら碌なことにならないから)といっても、まさか忘れられているとは。

私に近づいちゃ駄目だと、キツく言っておかないと。

 

「んなっ、貴様何を...!?」

いいから、暫く私に身を任せなさい。

 

囁いただけで無抵抗になっちゃうのねぇ。可愛いというより、愚かしい。

厄を吸うのではない。放出する。

 

「...ガッ」

あら?

「ゴホゴフゲホゲホエホゲホ!!?」

汚いわねぇ。血を吐きながら咳しないでよ。

「きっ、貴様ゲホッ!!」

あら、喋れもしないの?随分厄が溜まってたみたい。

「......カハッ」

 

斃れた。もう少し静かに死んでもらいたかったなぁ。ほら、もう白狼天狗が来てしまった。

でもまぁ、この子は私のことを知っているから良かった。全然近づいてこないから、私が動く必要が無いのよねぇ。

 

「...またですか、雛さん」

私は悪くないわよ。この子から言い寄ってきたんだから。

「まぁ、でしょうね。私もこの人嫌いでしたし」

椛ちゃんも言うようになったわねぇ。ちゃんと私がやったんだって言うのよ?

「解ってますよ。で、こんな下まで降りてきて何を?」

旅に出るの。いや、もう出てるのかしら。

「......旅、ですか」

大丈夫よ、ちゃんと気をつけるから。今回は特別なの。

「果たしてそんな理屈が通じますかねぇ」

此処は幻想郷なのだから、通じないことなんて無いわ。残酷に受け入れなさい。

「...まぁ、良い旅を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、何処に行ったものだろうか。とりあえず真っ直ぐ行こうかな。私なら大丈夫だろうし。

そんな考えのもと適当に歩いていたら、森に着いた。妖怪の気配もなく、なかなかに静かな森。纏わりつく胞子は少し鬱陶しいけど、そこまで気にはならない。

それにしても、気配が一つしか感じられない。多分前に会った子かしら?

 

...『なんかします』。霧雨魔法店。

 

つまり、此処にはあの人間が居るのかしら。

コンコンコン、と三回ノック。返事が無いわ。中でただの屍になっているのかしら。

再度コンコンコン、とノック。やっぱり返事が無い。もう一度、とやろうとしたらドアが開いた。

髪はボサボサで、下着にキャミソールだけの恰好。色気がまるで感じられないわね。

 

「何だ、客か?」

...折角綺麗な髪なのだから、整えてきたら?

「いいんだよ、これが私流だ。というか、お前誰だよ」

覚えてないのね。少し前に会ったばかりなのに。

「んん?」

 

目つきを鋭くしながら覗き込んできた。じろじろと観察して、ようやく私のことを思い出したようだ。

 

「お前、山に居た奴だな。なんで出てきたんだよ」

色々思うところあってね。

「依頼が無いなら帰ってくれよ。私は忙しいんだからな」

今の今まで寝入ってたくせして。

「だから寝かせてって言ってるんだ。道案内ならいつかしてやるよ。おやすみ」

おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、私どうしよう?

 

 

 




雛ちゃんを主人公にしてみました。
最初は何となく思いついただけだったのですが、思ったより主人公適正があるんですよね雛ちゃん。
この会話方法については、実験みたいなもんです。それでは、またいつか。
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