厄神様が通る道   作:転箸 笑

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第6話

「なるほど、紅魔館ね。いいんじゃない?」

まだ一度しか行ってないから。それじゃあ、またね。

 

お見送りは一人だけ。まぁそれも仕方ない、みんな忙しいのだろう。

かぐや姫に送られながら、私は紅魔館へと飛び立った。思わず何日か滞在してしまったが、中々面白い体験だった。

 

「おろ」

あら。

「誰かと思ったら厄神か。こんな所でとは珍しい」

死神ね。出来れば会いたくなかったわ。

「そんな非道いこと言うなよ。あたいはそんなに持ってないんだからさ」

そりゃ、船頭ならそうでしょうけど。で、何してるの?

「ちぃと永遠亭までね」

あら、私が今まで居た所よ。

「ほう」

 

鎌を持ち直す死神。

じっ、と此方を覗き込んでくるが、何か見えるのだろうか。

 

「あんたは極夜だね」

きょくや?

「宵に覆われ、陽の光は届かない。晴れない厄を持ったあんたにゃぴったりだ」

...もしかして罵られてるのかしら?

「光を浴びないという事は、陰ができないということ。筋の通った奴だね」

あら、誉められてるのかしら?

「ただの気質の話だよ」

 

よく解らない。まぁ、どうでもいいことだ。私は紅魔館へ行くのだから。

死神も暇ではないのだろう、ぱっ、と居なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

湖の中に建っている紅魔館を眼下におさめる。

前に来た時は、パーティーに招待されたから来たんだった。

降りると、門番が壁によりかかって寝ていた。

 

もしもーし。

 

返事がない。どうやら本当に眠っているようだ。

どうせだからと肩を突っつくが、反応なし。帽子を取るが、反応なし。ほっぺをむにむに。反応なし。

いい加減入ろうかな。

勝手に門を開ける。反応なし。

中々に広い庭園をぷらぷら見て回る。妖精は一人も居なかった。

 

「お客様ですか?」

ええ、そうです。

 

パーティーの時に会ったメイドさん。いつの間に来たのだろう。

恭しく一礼したあと、

 

「どうぞごゆるりとお楽しみください」

 

そして居なくなった。目の前に居たのに、まったくタネが見えなかった。

お楽しみください?

どういう意味だろうか。

 

「む、来たか」

 

背後から声を掛けられた。

振り返ると、吸血鬼がパラソルテーブルの下でワインを飲んでいた。

 

来たか、って私が来るのが分かっていたの?

「当たり前だ。私が呼んだからな」

 

大仰に首を傾げるが、吸血鬼はただ笑うだけだった。

手に持ったワイングラスを掲げる。

 

「お前は今日の珍客だ。とっとと此方に来い」

 

仮に私が本当にスペシャルゲストだったとして、その態度はどうなのか。

まぁ吸血鬼はこんなものか、と思い直す。

私が向かいに座ると、吸血鬼が直々にワインを注いだ。

 

「秘蔵の銘醸だ。美味いぞ」

いただきます。

 

くい、とグラスを傾ける。仄かな渋みと酸味。それに、圧倒的な甘味。

喉を通った後の残り香は、華やかにして優美だった。度数は高めだろうが、スーッと飲めた。

 

美味しい。

 

気づけばそう言っていた。それに気をよくしたように、グラスにおかわりが注がれた。

つまみが無いな、と思っていたら先程のメイドさんがチーズを持ってきた。

 

「お口に合うか判りかねますが」

 

それは少し辛子の風味があって、ワインと絶妙に合わさっていた。

吸血鬼はワインばかり飲んでいたが、恐らく辛いのが苦手なのだろう。

 

 

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