去る2005年の戦死者を悼み、二人のトランスフォーマーは鋼鉄の墓所に現れた。彼らはメモリーファイルに刻まれた記録を参照し、各々の胸中を吐露する。

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第1話

 私は性懲りもなく、自分らしくもなく、またこんな場所へ訪れていた。

 

「……」

 

 脇目も振らないというのはこういう行為なのだろうか、私は仲間も連れず──連れられず、不毛の地である墓所に足を踏み入れていた。ここを静謐な空間だと私のセンサーが認識するのは、閑静だというのが理由だが、

 

「R.I.P.安らかに眠れ か」

 

 ここは戦士が久遠に眠れる場所だから、という潜在的な理由があった。偶然にも人間たちにも同じ『発想』があったのが興味深いものだけど、今はそういう気持ちにはなれない。

 

 こんな私の一面を知ったら、皆はさぞ驚くだろう。

 

「もっとも君は、こんなものに納得して休眠するではないだろうがね」

 

 ゴング。戦時中に友人となった勇敢な戦士の名だ。彼は決して臆する事なくデストロン軍と戦った英傑だ。あのメガトロンの武器を奪った事さえある。

 

「君はあの冒険で私を認めたね」

 

 そんなメガトロンの体内で短い旅をした。それまで私は彼に『臆病者』と詰られていたのを噛み締め、またゴングの名が刻まれた棺と彫像を見上げる。

 

「君はもはや無謀だった。あの世にも恐ろしい脳波に触れて」

 

 本来、無知とは恐怖心を煽るものだ。それを彼はものともしなかった。尊敬はできても、その蛮勇を模倣する者はなかなか現れまい。

 

 もちろんそれは、彼へ手向けた誉め言葉だ。

 

「きっと、君は」

 

「…………一番最初に飛び出して、撃たれたんだろう?」

 

 ここに眠る怪力の持ち主は不意打ちをしたり、或いはされたりはしない。多分──非科学的な考察が許されるのなら──デストロンの襲撃にいち早く向かって、それで……

 

「おい、パーセプターじゃないか。何をしている」

 

「ン? ああ、ウルトラマグナス」

 

 虚を突かれたが、私の頭脳回路はすぐに疑問を覚ってくれた。

 

「ウルトラマグナスこそ、なぜこんな場所に」

 

「時折ここに来ているものでな。パーセプターもそうだろう」

 

 こちらに目もくれず、自然な態度で大きい棺の前へ向かっていった。私はなんとなく彼の巨体に追従した。

 

「これは、コンボイ司令官の」

 

「うむ……」

 

 黙って司令官の名が刻まれた棺を見るのみだった。手を触れる事もない。

 

 彼のそういった甲斐甲斐しさ、健気さからコンボイ司令官という偉大な人物への敬意が窺えた。

 

「コンボイ司令官は、誰よりも仲間の安全を考えて戦っていた。孤立奮戦していても、私たちが危険な目に遭わないように考えていたよ」

 

 非情になれない、そういう点では司令官という立場は不向きだったかも知れない。

 

「そのようだな。話には聞いているが……実際に見てみたかったよ」

 

 慕われている部分を見るに、不用意に不向きだとは言えないが。

 

「ロディマス司令官が悔やんでいたんだ」

 

「何を?」

 

「コンボイ司令官が死んだのは自分の所為だと……おっと、これは秘密にしてくれよ。噂をしていたなんてあのヒヨッコに知れたら、余計に傷付くだろう」

 

 ウルトラマグナスは普段見せない陽気な面をつくってみせた。彼も不器用な男だ。

 

「チャーが制止したと言っていたよ、確か」

 

「ああ……」

 

 しばらく沈黙が訪れた。それはそうだ、互いに誰かと喋るつもりでここへ来たわけではないのだ。

 

「では、私は戻るとする。パーセプター、君もあまり長居するなよ」

 

「ああ、わかったよ。気を付けて」

 

 ウルトラマグナスはそそくさとここを後にした。次第にシャトルが発つ音が聞こえ、私は機能がオフラインになっていたかのように立ち尽くしていた。

 

「……コンボイ司令官」

 

 彼は間違いなく苦労人だったはずだ。エアーボット部隊が加入した時もスリングたちが反旗を翻す所だったし、アラートのブレインサーキットがショートした時も謀反を起こしたし、ゴングが私に苦言を呈した時も……

 

「あなたは誰も責めたりはしなかった」

 

 地球という未知の惑星で、誰もが不安だったあの頃、誰よりも孤独だったに違いない。司令官である彼が狼狽えてはいけなかったと、今振り返って判断できる。

 

「ですがね司令官」

 

 私は胸に手を当て、天井を見上げた。

 

「私を庇う必要はなかったんです。私は嬉しかったんですよ、ゴングに皮肉を浴びせられたのがね。私の行動に呆れる仲間は多くても、批判とはいえ──関心を持って最期まで接する者はいなかったんですから」

 

 私に、こんな独り言をいう機能があったのに我ながら驚き、驚きながら頭脳回路が明晰になっていくのにまた驚いた。

 

「では、失礼します」

 

 信じられないほど律儀に、私は戦士たちを起こさないように帰路に就いた。シャトルの駆動音で起きてしまわないか、少し不安だったがね。

 

 




お話的には2010なんですが、墓所が健在なので第8話「コンボイの影」よりも前だと思います。
ザ・ムービーの出来事を想うと胸が痛いですね……

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