星野家の三女 作:星野家の概念的存在になりたい
今日は特段暑い日だったのでみんなでプールで遊ぶことになった。
みんなそれぞれ持ち寄った水着に着替えてリビングにやってきた。
ひなたお姉ちゃんは去年と同様に黒のホルターネックビキニにホットパンツと白いTシャツを合わせた姿は元気なお姉ちゃんのイメージにピッタリと合ってる。
花ちゃんは……うん、学校指定の紺色のスクール水着だね。
そしてノアちゃん!かわいい!ピンクを基調とした可愛らしいフリルが上下にあしらわれたビキニで腰のサイドリボンも幅広の蝶結びの物が良いアクセントになっててグレート!
そして何よりそれらを着こなして堂々と自己をアピールするノアちゃんが最高にかわいい!!
はぁ……はぁ……少しのぼせてきたかも。
こんな時はプールで頭を冷やしたい所だけど……水着、着たくないなぁ。
ノア「どうしたのチマリちゃん?みんなもう着替えてるよ?」
ちまり「あ……えと……いまはまだ、いいかなぁ……って」
ノア「うん、考えてみればそうだね。プール行くのになんでもう着替えてるんだろ?」
それは……多分庭を見れば分かると思う。
みやこ「みんな着替えたんだ、もう用意できてるよ」
正面の庭ではみゃーお姉ちゃんがそう言いながら蛇口の捻ってホースの水を止めていたところだった。
ひなた「よし!行くぞノア!」
ノア「……うん♪」
ひなたお姉ちゃんに呼ばれた後、やや間があってからノアちゃんはビニールプールへと向かう。
その後、少しだけひなたお姉ちゃんと水のかけ合いっこをしてからプールに胸まで浸かった。
ノア「はー、やっぱり夏休みと言えばこれだよねぇ」
ひなた「だなっ!」
ノア「……って!どうしてビニールプールなの!?」
おー、ナイスノリツッコミ。
でも、これには深い事情が……
ひなた「みゃー姉とちまりがプールとか行けないからな。わたしのプールはいつもこれだ」
あったりなかったりする。
ノア「なんでもミャーさんに合わせればいいってモノじゃないと思うの、アタシ……ってチマリちゃんもプール駄目なの?夏祭りの時は人混みは大丈夫そうだったけど」
ちまり「水着で人前に出るのは……恥ずかしいから」
ノア「そっかぁ、じゃあ先ずはアタシたちで慣れよっか?」
えっ?あ……そ、それは……
ちまり「……み、みゃーお姉ちゃんが着るなら」
みやこ「私?水着持ってないけど」
そ、そう言えば……みゃーお姉ちゃん、私服とジャージとコス衣装以外持ってないんだった……うぅ、残念。
ひなた「大丈夫だみゃー姉!」
私がどう答えようか頭を悩ませてると、何かを閃いたらしいひなたお姉ちゃんが持ってきたのはひなたお姉ちゃんのスクール水着だった。
ひなた「わたしのがある!」
みやこ「色んな意味でアウトだよ」
まぁ、そうなるよね。
というかほんとにどうしよう……でも、少しずつでも慣れないといつまで経っても皆と遊びに行けないもんね。
ノアちゃんとの約束を果たす為にも出来るところから頑張って行こう。
ちまり「そ、それじゃあ……着替えてくる……ね」
ノア「ホントに!?やったぁ!さっすがチマリちゃん!」
「えへへ……」
ノアちゃんに褒められ上機嫌になった私は少しニヤけながら自分の部屋へと着替えに戻った。
さて着替えたのは良いけどいざ出てくとなると急に恥ずかしさが込み上げてくる。
私が持ってる水着は白のワンピースタイプの着丈の長い水着だ。
かわいくて露出が少ないものを選んで買ったんだけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいし……正直私が着るよりも絶対に似合うノアちゃんとか花ちゃんが着たほうがいいよ。
とはいえ、いつまでもこうしてる訳にはいかないよね。
私は深呼吸して気持ちを落ち着けてからゆっくりとリビングの扉を開ける。
するとすぐにノアちゃんと目が合った。
う……なぜかすごい期待されてる気がする。
思わず扉を閉めそうになるけどノアちゃんの目がそうはさせてくれなかった。
ノアちゃんが私が水着を着てくるのを期待してくれてるんだからその期待には応えたい、
大丈夫、水着
それは自信を持って言えるしみゃーお姉ちゃんのお墨付きだ。
私は意を決して扉を開き縁側へと向かった。
ちまり「お、おまたせ」
ひなた「よしっ!ちまりも準備できたな!」
花「へぇ〜かわいい」
ノア「チマリちゃんカワイイ!天使みたい!」
ちまり「あ、あり……がと」
面と向かって言われると恥ずかしい……けど、良かったぁ。
ノアちゃんにかわいいって言ってもらえた。えへへ……
みやこ「天使……ワンピース……花ちゃんに似合いそうだなぁ」
少し離れたところで聞いていたみゃーお姉ちゃんが何気なくそう呟いたのを私は聞き逃さなかった。
ちまり「あ、そうだ花ちゃん、折角だからこっち着てみる?」
ノア「えっ……?」
花「いや、私は……」
みやこ「それいい!是非着てみてよ花ちゃん」
ちまり「うん、じゃあ着替えてくるね」
花「待って、私着るなんて一言も──」
みやこ「着てくれたら後で焼きそばとかき氷も作ってあげるね!」
花「うっ……仕方ないですね」
食べ物で無事釣り上げられた花ちゃんは私が私服に着替えた後、入れ替わるように部屋に入って行った。
因みにスクール水着をひなたお姉ちゃんから渡されたけど遠慮しておいた。
そして花ちゃんが出てくると、当然の様にみゃーお姉ちゃんがすごいテンションでカメラを構えた。
みやこ「いいっ!最っ高にかわいいよ花ちゃん!そこでくるっと一回転して!いいねっ!マジ天使っ!!」
みゃーお姉ちゃん楽しそう。
よし、私もノアちゃんたちをいっぱい撮ろうっと!
ノア「良かったのチマリちゃん?」
ちまり「うひゃあ!?な、なんの……こと?」
び、びっくりしたぁ。
振り向いたら目の前にいるなんて心臓に悪いよぉ。
ノア「アタシにはチマリちゃんが我慢してるように見える」
ちまり「え、ええと……?」
我慢?私はただみゃーお姉ちゃんに喜んで貰おうと、花ちゃんと仲良くなって貰おうと思ってるだけで別に我慢なんて……。
ノア「もしミャーさんに言いづらい事ならアタシが何時でも聞くよ。だから我慢しないでね?」
ちまり「あ……ありがとう。でも今はほんとに大丈夫だよ」
私の気持ちはただのわがままだから、みゃーお姉ちゃんを困らせるだけのわがまま。
私はまだまだ大人じゃないけど、そこまで子供でもないつもりだから自分勝手にみゃーお姉ちゃんを独り占めになんて出来ない。
ノア「……わかった。じゃあはいこれ!」
ちまり「へ?水鉄……砲?」
ノア「カメラは部屋の中に置いとくね!」
ちまり「えと、私は……わぷっ!?」
何故かカメラと交換で水鉄砲を渡された私がボーゼンとしていると、不意に横顔に水が掛かった。
ひなた「どうしたっ、戦いは始まってるぞちまり!」
ひなたお姉ちゃんが不意打ちで一発当ててくる。
でもこの不意打ちも台詞も毎年恒例の始まりの合図である。
だから私も前口上を言ってから水鉄砲の撃ち合いが始まるのだ。
ちまり「ひなたお姉ちゃん。ふっふっふ……この私の中に眠る水龍を
ノア「おぉ、なんかゲームの悪役みたい!」
ひなた「ノア!わたしだけじゃ覚醒したちまりには勝てない、力を貸してくれ」
ノア「オッケー!」
途中でノアちゃんがこっち側に付いたりとかもありつつ、私はびしょ濡れになりながらいっぱい楽しんだ。
みやこ「(ちまりが年々中二病に向かってる気がするけど……大丈夫……だよね?)」
花「……お姉さん?」
今日は楽しかったなぁ。
洋服で水遊びしたのがお母さんにバレて怒られちゃったけど。
『アタシにはチマリちゃんが我慢してるように見える』
お布団の上で漫画を読みながら、ノアちゃんが私に言ったことをふと思い出す。
我慢してるように見えるかぁ……それってモヤッとした気持ちが顔に出てるのかな。
ダメだなぁ、もっと上手にやらなきゃ。
ひなた「電気消すぞー。おやすみちまり」
ちまり「うん、ありがとう。おやすみひなたお姉ちゃん」
そう、これは我慢なんかじゃない。
みゃーお姉ちゃんやみんなを嫌な気持ちにさせない為には当然のことをしてるだけ。
私はひなたお姉ちゃんやノアちゃんの様に自分の気持ちを上手に伝えられないから。
まだだ、まだ慌てるようなシリアスじゃない。