星野家の三女   作:星野家の概念的存在になりたい

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悲報、今回はノアちゃんが登場しません。
ノアちゃんは今頃星野家でかくれんぼの鬼として歌っていることでしょう。


鬼の居ぬ間に

 今日はお母さんと二人で近くのショッピングモールに私たち三人の服を買う為にやってきたの。

 

千鶴「それにしても良いのかい?今日はノアちゃんたち来ることになったんだろ?」

 

ちまり「そうだけど、今日は元々お母さんとお買い物に行く約束だもん。それにお母さんとお買い物なんて久しぶりだから楽しみ!」

 

千鶴「お、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」

 

「えへへ……でもほんとに私がみゃーお姉ちゃんとひなたお姉ちゃんの服選んでも良いの?」

 

千鶴「あぁ、ちまりの方が二人に合ったのを選んでくれそうだからね」

 

ちまり「私、お母さんが買ってきてくれる服かわいくて好きだよ?」

 

千鶴「ありがと。まあ自分で服を買う練習とでも思って気楽に選びな」

 

ちまり「分かった!それじゃあ早く見に行こっ、お母さん!」

 

千鶴「…………」

 

あれ?お母さんからの返事がない。

どうしたんだろう?

 

ちまり「お母さん?どうしたの?」

 

千鶴「ん、あぁいや……小さい頃のみやこにそっくりだなぁって思ってね」

 

ちまり「私が?ほんとに!?」

 

千鶴「ああほんとさ、あの子も小さい頃は私に懐いててね。お母さん、お母さんっていっつも私のそばにひっついてたんだ。あの頃は素直ないい子でね……全く、いつの間にあんな憎たらしくなっちゃったんだか」

 

そう言って呆れた風にため息をついたお母さんはそれでも嬉しそうだったけど、少しだけさみしそうにも見えた。

 

ちまり「お母さん、私もお姉ちゃんたちもお母さんのこと今でも大好きだから……さみしくないよ?」

 

千鶴「おっと、ちまりはほんとに気の使える子だねぇ。まあでも心配はいらんよ、子供の成長ってのは嬉しくもありさみしくもあるもんなのさ」

 

「嬉しくてもさみしいの?嬉しいだけには出来ないの?」

 

千鶴「そうだねぇ……でもさみしいってのが必ずしも悪いってものでもないんだよ。さみしさを感じるからこそ今この時間を大切にしようって思えるんだからね」

 

さみしいと今の時間を大切にしようって思えるの?

嬉しいだけだとそう思えないってこと?

 

ちまり「う〜ん、よく分かんない……」

 

千鶴「はは、少し安心した。ちまりの歳じゃわかんなくて当たり前だから気にしなくていいよ。いつか自然にわかる時がくるさ」

 

ちまり「そういうもの?」

 

千鶴「ああ、そういうものだ」

 

よくわからないけど……お母さんがそういうならきっとそうなんだと思う。

 

ちまり「うん、わかった!」

 

千鶴「いい返事だ。それじゃあいくつか店を見て回ろうか」

 

ちまり「はーい」

 

私はお母さんと一緒にモール内にある幾つかの洋服屋さんをまわり、私が選んだお姉ちゃんたちの服や自分の服を幾つか買って貰った。

 

 

 

 

 

 

あらかた用事が済んだ私とお母さんは、今はフードコートでお昼をとっている。

 

千鶴「ま、たまにはこういう所で食うのも悪かないだろ」

 

ちまり「むぐむぐ……うん、おいしい!……でもやっぱりお母さんやみゃーお姉ちゃんが作るご飯の方がおいしい!」

 

そういえば……そろそろみゃーお姉ちゃんも起きてくる頃かな。

そしたらまたコスプレ大会でも始まりそう。

という事はノアちゃんのコスプレが……ってダメダメ!それは帰ってから!

 

千鶴「ほぉ……そりゃ嬉しいねぇ、ちなみに私とみやこが作る料理ならどっちが美味しい?」

 

ちまり「えっ!?」

 

みゃーお姉ちゃんとお母さんの料理。

うぅ……みゃーお姉ちゃんの作るオムライスもおいしいけど、お母さんの作る肉じゃがも外せない……。

 

ちまり「うぅ〜……ぐぐぐ……」

 

千鶴「……ぷっ、あっははは!ごめ、ちょっと意地が悪かったね」

 

私が頭を悩ませているとお母さんは突然笑い始めた。

 

ちまり「え、なに?どういうこと?」

 

千鶴「いやぁ、ちまりなら悩んでくれるって思ってたよ」

 

え、もしかして私をからかう為に聞いてきたってこと?

 

ちまり「えぇ〜……もうっ、お母さんのいじわる」

 

千鶴「ごめんって、ひなただとみゃー姉!って即答されそうだからね。母としては悩んでくれる方が嬉しいんだよ」

 

ちまり「む~、だからってあんまりいじわるなことすると私もみゃーお姉ちゃんのご飯の方がおいしい!って答えちゃうよ?」

 

千鶴「おぉっと?それは大変だ、アイスを買ってあげるから許してほしいなー?」

 

ちまり「アイス!あ……わ、私は花ちゃんみたく釣られたりはしないけど……お母さんが許してほしいなら、いいよ?」

 

千鶴「ふふっ、心優しいちまりちゃんに感謝しないとね」

 

ちまり「あっ、また笑ってる。私変なこと言ってないのに……」

 

千鶴「(少し前のちまりだったらこんなやり取りは考えられなかっただろうね。これもノアちゃんたちの影響か、ほんと有り難い限りだよ)」

 

ちまり「お母さん?」

 

千鶴「ちまり、ほんとにいい友達をもったね」

 

何か考えてたかと思うとお母さんは不意にそんなことを言って私の頭を優しく撫でた。

むぅ、なんだかはぐらかされてる気がするけど……ま、いっか。

 

ちまり「うん、大切な友達だよ!私だけじゃなくて、お姉ちゃんたちにとってもね」

 

千鶴「ああ、そうだね。それじゃあそろそろ帰ろうか。早く皆と遊びたくてしかたないだろう?」

 

ちまり「うっ……どうしてわかるの?」

 

千鶴「ちまりは正直だからね。フードコート来てからずっと時計を気にしてるの気づいてないとでも思ったのかい?」

 

ちまり「あう……で、でも!お母さんとお買い物してる間は考えてないよ!ほんとに楽しかったもん!」

 

千鶴「分かってるよ、大方ご飯食べた時に家のこと思い出したんだろ?」

 

う〜……やっぱりお母さんには隠しごとは出来ないね。

 

千鶴「それじゃあ帰るかね」

 

ちまり「……うん」

 

ここまでバレバレじゃお母さんに気を使わせちゃうだけだから。

 

ちまり「お母さん、また一緒に行こうね」

 

千鶴「ああ、また今度ね」

 

みんなで行くのも楽しそうだけどお母さんと二人でもまた行きたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に着いた私たちが玄関を開けて中に入ると、部屋の奥から突然の大きな音が響いてきた。

 

花「お姉さん!?」

 

それと同時にみゃーお姉ちゃんを呼びかける花ちゃんの声も聞こえてきた。

もしかしてみゃーお姉ちゃんに何かあったのかも!

 

千鶴「ちょ、ちまり待ちなさい!」

 

ちまり「みゃーお姉ちゃんっ!」

 

不安になった私はお母さんが止めるのも聞かずに一目散に和室へ急いだ。

 

みやこ「ちまり……お、おかえり」

 

ちまり「ええっと、なにしてるの?」

 

和室に入ると何故か襖を下敷きにしたみゃーお姉ちゃんの姿があった。

みゃーお姉ちゃんは返事に困っていたがその直後、私の頭の上に視線を向けたまま固まってしまう。

 

視線の先に何かあるのかと後ろを振り返るとそこにはパイポをくわえてニッと笑うお母さんが……あ、これはダメなやつだ。

私は静かにひなたお姉ちゃんの方に避難すると、笑顔で応えたみゃーお姉ちゃんの頭に勢いよくゲンコツが振り下ろされたのだった。

 

 

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