星野家の三女 作:星野家の概念的存在になりたい
ノア「今度こそサイキョーにカワイイのはアタシだってこと、教えてアゲル!」
夏音ちゃん達がみゃーお姉ちゃんとお友達になってからしばらく経ったある日の放課後、唐突に立ち上がったノアちゃんが私たちへ高らかにそう宣言した。
私としてはノアちゃんは出会った時からとっても可愛いし可愛い衣装もすっごく似合うと思ってるんだけど、ノアちゃん的にはさいきょーじゃないと駄目みたい。
可愛さって強い方が良いのかな?それとももっと大事な意味があるのかも……。
私がノアちゃんの求めるサイキョーな可愛さについて考えている内に話が進んでいた様でノアちゃんは前と同じ様に用意してきたボードを取り出してルール説明を始めていた。
ノア「ルールはみんながアタシを撮ってサイキョーにカワイイ1枚を取った人が勝ち!」
今回はノアちゃんがモデルさんでカメラマンの私たちが勝負するんだね……えと、勝負?
ちまり「今回は花ちゃんと勝負するわけじゃないんだ」
ノア「アタシ気づいたの……真に超えるべきは今のアタシだってことに!!」
花・みやこ「(なんかバトル漫画みたいなこと言い出した!?)」
おぉ、流石ノアちゃん!今の自分に満足することなく更に高みを目指していくなんてかっこいい!
ただでさえスゴく可愛いのにそんなカッコ良さまで持ってるなんて。
はっ、まさかこれがさいきょーに可愛いってこと……なのかな?
ノア「それにミャーさんの審査だとハナちゃんが勝つに決まってるし〜」
ひなた「それな!」
確かにそれならノアちゃんがさいきょーに可愛いのかも……でもノアちゃんはまだうえを目指してるし、もし違ったらノアちゃんをぬか喜びさせちゃうかも知れない。
そんなことを考えているうちに勝負が始まってしまい、結局私は何も言い出せなかったのだった……う〜。
1番手は花ちゃん。
ノア「じゃあまずはハナちゃんから!どういう服とポーズにする?なんでもするよ!」
両手を広げて花ちゃんの指示を楽しみに待つノアちゃんとは対照的にあんまりやる気無さげにスマホのカメラを起動させた花ちゃんはノアちゃんに指示をだす。
花「ん、じゃあこっち向いたら少しじっとしてて」
ノア「オッケー♪」
花ちゃんは言う通りに振り向いたノアちゃんにカメラを向けるとあっさりシャッターを切った。
花「はい、おっけー」
ノア「いくらなんでもテキトーすぎない!!?」
花「大丈夫、ノアはどんな写真でもかわいいから」
そんな面倒臭がりが炸裂した花ちゃんの言い訳に対してノアちゃんはと言うと……。
ノア「まあねー♪」
とっても満足そうだった。
まあね、ノアちゃんは普段から可愛いから花ちゃんの言ってることも間違いじゃない。
今着てる青を基調とした白の細いストライプが入ったノースリーブシャツと同色で同じ柄のミドルスカートだってとっても似合っててまるで童話に登場しそうな……ん〜っやっぱり何度見ても可愛い!
もっと一杯写真に収めたいけど……今は勝負?の最中で私の番じゃないから我慢しないと。うぐぐ……。
私が心の中で葛藤している内にミャーお姉ちゃんの番になっていたらしくノアちゃんが着替えて戻ってきた所だった。
戻ってきたノアちゃんはなんというか天使だった。
ノースリーブに胸元の赤い紐リボンがアクセントの白いプリーツワンピースで、可愛らしいフリルのあしらわれたスカート部分と広い袖口幅からはノアちゃんの玉のような肌が顔を覗かせている。
ちまり「ほわぁぁぁぁ……っ!」
抑えなきゃ、堪えなきゃ行けないのにぃ〜!
ん〜っもう我慢出来ない!!
ノア「ちょっとミャーさんってばもう撮ってるノ?まあアタシがサイキョーにカワイイから仕方ないけど〜?」
みやこ「ん?私まだ構えてもないけど」
ノア「え?でもホラ今もシャッター音が……」
ちまり「ふぅーっ……んふぅー……!」
ノア「ひゃあ!ど、どうして下から撮ってるのチマリちゃん!?」
ちまり「ふえ?どうしてって?この角度の方が更に可愛く撮れるってみゃーお姉ちゃんが言ってたから」
花「お姉さん……」
みやこ「あっはは……いやぁ、ね?」
ノア「ね?じゃないよミャーさん!!チ、チマリちゃんも流石に恥ずかしいからそんなに下から撮らないで〜!?」
恥ずかしがってるノアちゃんも可愛い……ふふ……ふふふふ……はぁ〜…………って、しまったぁぁぁぁっ!?
ちまり「ご、ごめんねノアちゃん!みゃーお姉ちゃんも割り込んでごめんなさい!」
ノア「あ、あはは……流石にね?」
みやこ「あ〜……ノアちゃんも困ってるから下からは止めようね?」
花「お姉さんが原因なの分かってますか?」
みやこ「……はい、反省してます」
ノア「まーまー、それよりもほらミャーさん!チマリちゃんが抑えられないくらいカワイイアタシなんだからちゃんとカワイク撮ってよね?」
うぅ……失敗したぁ〜。
ただでさえ最近ちょっとぎこちない感じになっちゃってたのにあんな事してノアちゃんに嫌われちゃったらどうしよう。
こうなったら私の番になったらノアちゃんをさいきょーに可愛く撮って挽回するしかない!
ノア「チガウでしょー!!ハナちゃんを撮る時みたくもっとさっきのチマリちゃんを見習って!」
みやこ「ええっ!?下からは流石にもう撮らないよ!」
ノア「チガーウっ!!モー!ミャーさんのヘンタイ!」
……遠回しにヘンタイって言われてる気がするけど挫けないもん!
私は気持ちを持ち直し最高の1枚を撮るためにどうすればいいか考え始める。
みゃーお姉ちゃんの持ってる衣装は……その中でノアちゃんの魅力を引き出せるのは……ポージングは……
………………
…………
……
???「……り」
う〜……素材が良すぎて1つに絞りきれない〜。
花「ちまり?」
ちまり「ひぇ!?ど、どうしたの花ちゃん?」
花「それはこっちのセリフ、さっきから目を瞑ったままずっと黙ってどうしたの?」
ちまり「わ、私の番になったらどうしようかなって考えてて──って、ええと……?」
花ちゃんに突然呼び掛けられ思考に没入し過ぎていたことに遅れて気付いた私だったが目の前で起きている出来事が理解出来ずに言葉を詰まらせた。
ちまり「ねえ花ちゃん……あれってどういう状況?」
花「……ひなたがお姉さんのコスプレをしたノアを撮ってる」
うん、そうなんだけどそういうことが聞きたかったわけじゃないかな?
ちまり「えと、ノアちゃんの目から光が消えてる様に見えるのけど?」
花「それは……期待値を上げて落とされたから?」
ちまり「そっか……うん、何となく何があったのか分かったかな」
多分ひなたお姉ちゃんが『可愛く撮ってやるからな!』的な事を言ってノアちゃんが喜んでた所に渡された衣装がアレだったって所かな?
ひなたお姉ちゃんの事が好きなノアちゃんには酷な仕打ちだけどひなたお姉ちゃんも本心からだから何も言えないんだよね。
花「それで……最後、ちまりの番だけど」
ちまり「…………うん」
正直あの状態のノアちゃんになんて言い出せばいいのか思い付かない……けど、あんな暗い顔のまま体育座りをしてるノアちゃんをこれ以上見てられない!
やっぱり私はノアちゃんの笑顔が見たいから……あ、そうだ!
私はみゃーお姉ちゃんのコスプレ衣装からではなく自分の部屋のクローゼットに仕舞ってある洋服を持ってきた。
これは前にお母さんが買ってきてくれた中でも特にお気に入りで大事な時にはこれを着るようにしているくらいだ。
だからこそノアちゃんに着てほしい。この服なら間違いなくノアちゃんのカワイイを引き出せる。
だってこれは……。
ちまり「ノアちゃん!わ、わたしがさいきょーにかわいく撮ってあげる!」
ノア「ダイジョーブ、アタシナニガキテモカンペキニキコナシテ──ってチマリちゃん、これって……」
ちまり「私のお気に入り、ノアちゃんなら絶対に似合うから」
やけっぱちになりながら私が渡した服を手に取ったノアちゃんは何かに気付いたらしく顔を上げると不思議そうな表情で私を見る。
その表情の意味を知ってる私は笑みを浮かべたまま確信を持ってそう答えた。
しばらくの間呆然としていたノアちゃんだったが思い出したように大きく頷くと着替える為に部屋を出ていく。
ノアちゃんの反応にはてなマークを浮かべるみゃーお姉ちゃんたちだけどこれは私とノアちゃんだけのヒミツ。
と言っても私の一方的なものだしノアちゃんから話す分には止めるつもりはないけど。
そうこうしている内に着替え終わったノアちゃんが扉を数回ノックしてから入ってくる。
その姿は肩紐タイプの最低限の飾りが施されたシンプルな純白のノースリーブワンピース……初めてノアちゃんと出会った時にノアちゃんが着ていたものにそっくりなワンピースだった。
ノア「チマリちゃん、どうしてこれを……?」
ちまり「私がこのワンピースを持ってたのはほんとに偶然。だけど私がノアちゃんのかわいさに惹かれた初めての姿だから……その……サイキョーにカワイイ1枚を撮るなら……これかなって」
ノア「……っ!そ、そっか……アタシだけじゃなかったんだ」
ちまり「ノアちゃん?」
あれ……良く考えたらノアちゃんからしたら自分の持ってる洋服と同じのが出てきて驚いてただけかも知れないし……そもそも自分の着てる服を着てもらうなんて危ない人じゃ?
ちまり「あ、えと……もし嫌なら他のに……」
ノア「ううん!サイコーだよチマリちゃん!だ〜か〜ら、サイッキョーにカワイク撮ってね?」
ちまり「…………!」
そう言ってその場でクルリと回り後ろ手を組んでポーズを取り眩いばかりの笑顔を向けるノアちゃんを前に私はあの時の様にやけどしそうな程の熱が沸き上がるのを感じていた。
私はその熱に動かされるままに手に持っていたカメラを構えその人差し指を確りと落とした。
みやこ「ふふ……優勝は決まったみたいだね」
花「そうですね」
その時の写真は現像した後アルバムに入れてようやく気付けた私の大切な気持ちと一緒に宝物入れへと大事に大事に仕舞ったのだった。