5人と一人を生んだかの天才は野生を取り戻した。自己の存在理由に悩んだテックボットのリーダーは、たどたどしくシルバーボルトを尋ねる。

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第1話

「撃て撃て撃てえい! 貴様何者だ!」

 

 ガルバトロン率いるデストロン軍の掃射が赤い巨人を襲う。

 

「名前は、コンピューティコン」

 

 威風堂々と応じる合体戦士は、続けてデストロンに絶望を与える。

 

「存在目的、デストロン軍団の壊滅」

 

 天才が創造した、サイバトロンきっての戦闘マシンである。

 

 

*

 

 

「いやあ、おたくらの戦いは見事なもんじゃった」

 

 腕を組んで老獪に口角を上げたのはチャーだった。老兵の名に違わず、彼はテックボットの計算された戦闘を正確に評価している。

 

 傷跡ばかりが目立つチャーの背後から、対照的に若すぎる未完のヘッド、ロディマスが拍手をしながら現れた。

 

「テックボット部隊、今晩にでもパーティをしようじゃないか。君たちの紹介をしたくてね」

 

「あ、はい……光栄です、司令官殿」

 

 テックボットのリーダー、スキャッターショットは、戦闘時を除いては、彼らの中でも穏やかな性分だった。

 

「オイオイリーダーさんよ、デストロンを懲らしめた時はあんなに勇敢だったじゃないの」

 

 血の気が濃い同胞、アフターバーナーが笑いながらスキャッターショットの背を小突く。スキャッターショットは赤面し、少し困った風に言う。

 

「いや、あれは戦いだったから……今とは気分が違うさ」

 

「いいじゃないの、とにかく私たちは歓迎の準備をしておくよ。それまで自由に基地でも見学してくれ」

 

 テックボット部隊のリーダーはなんだか周囲に流されているだけな気がして、若干不服な思いをしたが、些末な事であった。

 

 彼の疑問はそこになかったからだ。

 

 

*

 

 

「ほーんと、最近は嬉しい報せが多くてオイラ参っちゃうね。これでデストロンの連中も益々懲りて来たんじゃない?」

 

 軽口を叩くのはミニボットのバンブルだ。自分の黄色いボディを見せつけるように祝賀会会場を闊歩していた。

 

「あのような小さい戦士もいるんだな……」

 

「小さい割に、エネルゴンを摂取し過ぎているようだが」

 

 ノーズコーンが、彼のリーダーの何気ない呟きに返事をしてみせた。スキャッターショットは常に好戦的なチームのリーダーをさせられているのをやや不満に思っている節があった。

 

「だがよ、確かにコレは悪くない味だと思うぜ。ああ、オレも飲みすぎちまったようだ……うう」

 

 ノーズコーンは堪らなくなり、鋼鉄の板に腰掛ける。

 

「お、おい。天才が生み出したロボットがこんな体たらくじゃ」

 

「なぁに、今後見せつけてやりゃいいんだよオレたちの実力ってのさ。しかし美味いったらないな、生まれたのに感謝しなくっちゃな……おお偉大なる父よ、ウップ」

 

 生みの親の優れた知性を崇拝しながら、彼は徐々に気を失った。エネルゴンキューブの過剰摂取をしたため、どこかの機能がショートしたのだと考えられた。

 

 スキャッターショットは気が重かった。軍隊のリーダーとして彼らを率いる手腕が自身にあるかどうか問わねばならなかったからだ。

 

「なあ君、ちょっといいか」

 

 そんな彼の硬い肩にポンと手を置いたのはエアーボット部隊のリーダー、シルバーボルトであった。

 

「ああ、あなたは」

 

「シルバーボルトだ。いや、親近感を覚えてね、同じ合体戦士同士」

 

 シルバーボルトは格式ばった自分の性格を熟知しているので、多少はユニークを利かせるために頭脳回路に捻りを利かせたかった。戦闘以外の情報が少ないデータで弾き出されたセリフも、彼自身にとって納得できるものかどうかは疑わしいものだ。

 

「嬉しいものです、私はスキャッターショット。グリムロックという父から誕生したテックボット部隊のリーダーです」

 

「グリムロックだって? ああ、君の父がグリムロックなら、私たちの父はコンボイ司令官さ」

 

「コンボイ司令官? さっきもその話をされたよ、あのマルハナバチ君に」

 

 スキャッターショットはバンブルへと視線をやったが、そこには既に彼はいなかった。シルバーボルトは壮年の顔で微笑んで見せた。

 

「ハハハ、彼はすばしっこいからね。どこへ行ったのやら」

 

「……なあ、シルバーボルト」

 

 急に真剣な声で切り出されたから、高所恐怖症の彼は素っ頓狂な表情を今度は見せた。

 

「あなたは、どこで造られたんだ」

 

 質問内容にシルバーボルトは眉をひそめそうになったが、顎をさする程度に留めた。

 

「我々は、セイバートロン星の最奥部で意識が芽生えたよ。記憶が正しければね」

 

「私は……」

 

 スキャッターショットは躊躇った。自分の出自と存在理由を明かすのを。

 

 あの『失われた知性』がなければ私は誕生しなかった──

 

「私はユニクロンの脳で生まれた。そして存在理由は、」

 

「デストロンの壊滅、だろう」

 

「あ……」

 

 彼に返答を全て先回りされていたかのようであった。スキャッターショットは、調子を狂わされたこの場よりも、この銀の翼を持った戦士の頭脳には自分の求める真理があるのではないかという可能性に好奇心がいった。

 

「教えてくれシルバーボルト、なぜ我らは戦う! なぜ、疑問を持たずに殺し合いをするんだ」

 

 スキャッターショットの叫びは会場の殷賑な歓声に吸われた。サイバトロンの仲間たちは、もはや歌い踊り騒ぐ口実のためにテックボットを祝っているようなものと考えて差し支えない。

 

「私はその正答を持たないよ」

 

「なぜ……」

 

「誰も、知る由はないさ。恐らくここにいる全員、生まれた時から戦う相手を決められていたんだろう」

 

 スキャッターショットは絶句していた。今度は、真理を手中に収められなかったわけではなく、シルバーボルトの皮肉に侮辱された気でいた。口を半開きにした彼を前に、シルバーボルトは遠くを見つめて話を続けた。

 

「君はこの世に生を受けた具体的な理由が欲しいのかもしれないが、それはあり得ない。魔法のように真実を与えられるような事はない。だが、悪い気分じゃないんだ。例えば私は、そう、父が誕生する瞬間を見たよ」

 

「何と? 一体それはどういう」

 

「言葉通りだよ。君にもそういった経験が待っているかもしれない……さ、他のサイバトロンとも話をしてみるといい。奇天烈な連中だと思うかもしれないが、君を歓迎しない者はいない」

 

 話すだけ話して、突っ撥ねられた事に憤りを感じないでもなかったが、スキャッターショットは静かに反意を鎮めてシルバーボルトに従う。

 

 しかし、テックボットのリーダーは知らない。彼がコンピューティコンへと合体を遂げた時ほど、スペリオンは意識が明瞭ではない事実を。

 

 彼もまた、知能に支配されているのだ。彼らの父親のように。




2010第25話直後のお話。まとまりがないかも?
シルバーボルトたちがベクターシグマで誕生したのに対して、スキャッターショットらはユニクロンの頭部で製作されたんですよね。なんか皮肉だなぁ。。
(前半のデストロン軍とコンピューティコンのセリフは原作25話準拠)

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