黒銀の軌跡   作:雪人形

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4/12クリアの使用武器を変更しました。



第二話

「っと」

 

Ⅶ組のメンバー達を追うように旧校舎の地下に飛び降りたクリアとフィーは到着したと同時にある光景を見て絶句した。

 

と言うのも、クリアたちが見たのは、知り合いと思われる金髪の少女を助けるように飛び降りていったリィンが彼女の下敷きになっていた。……それだけならばまだいいのだが、問題は彼の顔がある位置である。リィンの顔は金髪の少女の発育の良い胸に埋まっていたのだから。

 

「あいたた……」

 

「……あの、そろそろどいてもらえると助かるんだが」

 

「………ッ!?」

 

申し訳なさそうに金髪の少女の下から声を出すリィン。最初は驚いていた少女も次第に自分が置かれている状況がわかって慌てて退こうとしたのだが…彼、リィンの顔が自分の胸に埋まっているのを理解すると茹で上がったように顔を真っ赤にして彼から退き、そして

 

パシンッ!

 

「うわっ」

 

「ヒュー、結構いたそうだな」

 

リィンの頬に思いっきり平手打ちをかましたのだった。その音の痛々しさにクリアの横にいたエリオットはびくりと一瞬目をつぶり、クリアは口笛を吹いて面白そうにしていた。叩かれた当の本人は呆然としているが。

 

「あ、あはは。災難だったね…リィン」

 

「ああ、今日は厄日だ…」

 

そう言って平手打ちをした少女の方を見るのだが、キッと睨まれた後、kふいと顔をそらされた。まぁ、今日知り合った人にそんなことをされてしまえば、誰だって悄気げる訳で、リィンも例に外れることなく肩を落として意気消沈していたのだが、そんな中クリアはナハハと陽気に笑いながら

 

「何言ってんだよ、どう考えたって役得じゃねーか。同年代のしかも女子の胸に顔を埋めるなんてことそうそうできないぜ? 」

 

「いやいや!? 確かにそうかもしれないけど!」

 

「…駄目だ、俺はそんな風に考えることができない……はぁ 」

 

更に肩を落として深い溜め息を吐くリィン。それを必死になだめるエリオットを見てクリアはどっちも苦労人になるんだろうなと割とどうでも良いことを考えていた。それから暫くしない内にクリアたちの制服の中から通信器の着信音が鳴り響いた。その着信音は、入学案内書と今クリアたちが来ている制服とともに送られてきた戦術オーブメントと思われるものから出ていた。

 

『どうやらみんな無事にいるみたいねー。それじゃあ、さくっと説明するからサクッとクリアして来てちょうだいね』

 

「さくっとって……」

 

『と言っても、ただこの先の通路をひたすら進んでいたらアンタたちが落ちた上の階に上がれるようになっているからそこ目指して進んでもらうっていうだけだけどね』

 

「しかし、サラ教官……感じる限り此処には…」

 

『あら、気配察知に優れているわねー…そ、君が思っているようにその先には魔獣が潜んでいるわ』

 

魔獣と聞いてエリオットを含むごく少数のメンバーは瞳に不安の色を宿し、ゴクリとつばを飲み込んでいた。サラはソレを見ていたかのように苦笑しながら

 

『ああ、でも大丈夫よ。アンタたち程度の実力があったら別に問題なし。ソレに素敵なプレゼントもあるしね』

 

「プレゼント?」

 

『ま、それは見てのお楽しみってことで』

 

サラがそう言った瞬間、今まで薄暗かった広間に光が灯って周りが見やすくなった。クリアたちは辺りを見回すと、端にクリアたちが学院の校門で預けた『荷物』と小さい箱が置いてあった。恐らく、サラの言う『プレゼント』と言うのは小さい箱のことだろう。

 

『校門で預けた荷物と今アンタたちが手に持っているであろう《ARCUS》にはめる事で導力魔法が使えるようになるマスタークォーツをプレゼントしておいたから、ちゃっちゃとはめて戻ってきなさいよ〜』

 

「あ、あの! 教官!もしかしてこの…」

 

『ARCSね。財団とラインフォルト社が合同で開発した次世代の戦術オーブメント機…導力魔法が使えるようになるだけじゃないんだけど、その他の機能はまぁ…追々ね』

 

リィンに平手打ちをした金髪の少女が少し表情を強ばらせながらサラに問う。サラがそう答えると、金髪の少女は小さな声で『やっぱり…』と呟いたが、周りには聞こえていなかったようで彼女の一言に反応するものは誰もいなかった。

 

『ま、そういうわけだからさっさと登ってきて頂戴。このオリエンテーリングが終わったら文句でもなんでも聞いてあげるわ。……なんなら、ほっぺにチューでもいいわよ♪』

 

「マジで!?」

 

「アンタはダメよ」

 

「そんな馬鹿な……」

 

ほっぺにチューの件で嬉々としてクリアはそう言うが、平淡な声でダメ出しをされてガクリと肩を落として見るからにショックですというふうな雰囲気を出すクリアに周りのメンツは多くが苦笑していた。……残りのごく少数は呆れるか、ジト目で彼を睨んでいるかのどちらかであったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よし、みんな《ARCUS》にクォーツをセットしたわね? んじゃ、今から特科クラス《Ⅶ組》のオリエンテーリングを開始するわ 気長に待ってるから頑張って頂戴』

 

各自が自分の荷物が置いてあるところに向かい、《ARCUS》に箱に入っていたクォーツをセットし、準備を整えた所でサラからの通信は切れた。

 

が、少し、不安があるのか中々奥の通路の方へと誰も進み出さない。……クリアはまだ、さっきのサラの発言にダメ発言のダメージが響いていてそれでどころで、暗いオーラを身に纏って落ち込んでいる。……どれだけショックだったのかは語るべくも無いようだ。

 

「ふん……くだらん。こんな茶番はそうそうに終わらせるに限る」

 

「ま、待て! 一人で行くつもりなのか!? 」

 

「何だ、それがどうかしたのか? 」

 

「魔獣が出るんだぞ! もう少し慎重に……」

 

ユーシスが一人で奥に行こうとするのをマキアスが止める。しかし、それを気にしたふうもなく、少しめんどくさそうにユーシスは

 

「だからなんだ。魔獣如き街の外に出ればいくらでもいるだろう。そんなものに怯える必要など俺にはない。……まぁ、平民風情であろうと怖くて進めないというのならば、俺が守りながら連れて行ってやってもいいが? 《貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)》…力なき民を守るのも貴族の勤めだ」

 

「はぁー、格好良いねぇ……んじゃ、力なき民の俺は守ってもらおうかねぇ……」

 

「クリア……」

 

呆れたようにリィンとエリオットの声が重なる。その際、マキアスの視線も感じたが、クリアは敢えて”気づいていないフリ”をすることにした。気づいて振り向きでもすれば自分にも矛先が向くだろうと判断したからの行動でもある。

 

 

「なんだと……その見下したもの言い……どこまで言っても気に食わないな君はッ! 君に守ってもらう必要などない! 旧態依然とした貴族に負けるものか! 」

 

ユーシスの物言いに激昂したマキアスは一人奥の方へと進んでいく。サラのダメ発言から立ち直ったクリアはなんのプライドもなくユーシスに守ってもらう発言をしたのだが、即時フィーによって思いっきり脛を蹴られる。

 

「フン……阿呆め」

 

とマキアスの背中を見ながら呟き、彼の後を追うようにユーシスも奥の方へと進んでいった。その直後に青い髪の少女が顎に手を当てながら

 

「ふむ…そなたら、私と共に行動しないか? 」

 

「私たち? 」

 

「ああ、一人で行動するよりも、そちらの方が良いだろう。そなたも一緒……」

 

青髪の少女が銀髪の少女に言いかけたが、少女はそれをワザと無視して一人奥の方へと進んでいく……のものと思ったのだが、

 

「ね。ちょっといい? 」

 

「んあ? っておい! ちょっと待て! 引っ張るなぁぁぁぁぁッ!!」

 

唐突に声をかけられ、動揺しているうちにクリアは銀髪の少女に引きづられるようにして通路の方へと消えていくことになった。当然、残されたメンバーは唖然としていたが、しばらくすると、時間が巻き戻ったかのように

 

「そなたら、私と共に行動しないか? 」

 

と銀髪の少女の奇行をなかったことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「ちょ、首、首締まってっからッ! 」

 

「……ま、ここならいっか」

 

そう言って銀髪の少女はぱっと手を離す。その際にクリアから『ぐへッ』となんともまぁ情けない悲鳴が出たが少女は気にした風もなく、彼を見ている。そして、

 

「久しぶり、クリア」

 

「………久しぶりだなフィー、とでも言えば満足かこんちくしょう」

 

首が締まっていた際に入ってこなかった分の空気の分までを取り入れようとしているためか、ハァハァ言いながら銀髪の少女……『フィー・クラウゼル』を睨む。が、彼女はそれを気にもせず嬉しそうな表情をしている。と言っても、ほかの人物から見れば無表情に近いのだが、『彼女』との付き合いが長いクリアからしてみれば少しの表情の動きからフィーの感情の変化を読み取ることができているようだ。

 

「ん。……あの時、急に居なくなられたから寂しかった」

 

「あー、いや、うん。それについては謝る。スマン」

 

「………今度、何か奢ってくれたら許す」

 

「分かったよ。そんなんでいいのなら、タンマリ奢ってやんよ。……無理とか言って残すなよ?」

 

「ぶい。望むところだよ」

 

ニヤリと笑いながら挑発するクリアに対して、フィーは望むところと言わんばかりに言葉を返す。クリアはこのやりとりに幾ばくかの懐かしさを感じ取りながらフィーと旧校舎地下を歩いていくのだが……

 

「気づいてるか?」

 

「当然。囲まれてるね」

 

そう、フィーの言うとおり彼らは魔物たちに周りを囲まれていた。それもかなりの量で、である。どこからこんな量の魔獣が出てきているのか甚だしく疑問ではあるが、それを考えている余裕もなさそうだということを感じ取ったクリアとフィーは即座に己の獲物を手に持ち、臨戦態勢を取る。

 

フィーは小銃と剣が一体になった銃剣を両手に持ち、対してクリアは、ライフルに異質なブレードが付いているさしずめライフルブレードを肩に担いで敵を見据えながら

 

「さて、準備はいいかフィー?」

 

「当たり前だよ。……そっちも腕は落ちてないよね?」

 

「は、愚問だっての……行くぞっ!」

 

Ja(ヤー)

 

クリアの掛け声を機に二人は囲んでいる魔獣の大群へと突っ込んでいく。自分たちの勝ちを確信した強者が狩りで獲物を捉える時のような鋭い眼差しをしながら。

 

 




いや、ずいぶん遅くなってしまいました。(-_-;)
いや、言い訳させていただくなら、今月ほんと忙しかったんです。ハイ。まぁ、来月からも忙しいんですけど(´・ω・`)

そして、閃の軌跡Ⅱでのクレアさんの私服……心を打ち抜かれてしまいました。この調子でサラ教官の服もリニューアルを……え?ない?そうですか………(´・ω・`)

次回の更新はなるべく早くしたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。m(__)m
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