――――運命とは眠れる奴隷である……
一寸先も見えぬ程の闇に包まれた街を、一人の男が走っていた。
桃色に、点々と黒の混ざった奇妙な髪。線を寄り合わせたような服を着、上半身はほとんど裸。シンプルなジーンズをはいた、実に奇妙な男だ。
猛獣から逃げるかのように必死で走る男の後に、小さな可愛らしい少女が彼を追いかけていた。
「おじさん、どうして逃げるの? これ、落としたのおじさんでしょ?」
追いかける少女は片手に長細い財布を持っている。
傍目から見ると単なる親切なお嬢ちゃん、という認識だが、男にはその少女が悪魔のように映って仕方がなかった。
「く、来るんじゃぁない! わかっているんだ。俺が止まった瞬間、お前が俺を殺しに掛かるのだろう! 止まれッ! そこで止まれと言っているんだァァァアアア!」
狂気じみたように叫びながら男は必死に逃げ惑うが、不思議なことに少女は全く引き離されない。
そうしてもう数十分は走り回っただろうか。
ふと、男がつまずき転倒する。
何ということもない現象だが、男にとってはそれはこの世で最も恐ろしいことだった。
(地面にぶつかる! 俺はこのぶつかった衝撃で死んでしまうのか!)
心の中で恐怖、そして覚悟を決めた男だったが、結果は簡単に終わる。
何ということもなく男は地面に顔を擦り付けた状態で制止した。
身体、顔前面にかすり傷を作ったものの、死には至らない状態だ。
「い……生きている……。生きているぞ! ついにこの地獄が終わったというのか! やった! ハハハハハハッッッッッ――――!!」
男が立ち上がり高笑いした瞬間、その予想もしていなかった一瞬の内に、本当の『終わり』が来た。
立ち上がった時に振り上げた腕が壁に軽くぶつかる。
そして振動は伝わって行き――――
窓枠に誰かが置いていた植木鉢にまで届く。
土を入れた陶器製の植木鉢は人の頭を粉砕する。
落ちてくる植木鉢に頭を割られた男は薄れていく意識の中でこう呟く。
ああ、また俺は死ぬのか、と。
「―――――ハッ⁉」
気が付くと、今度は海辺にいた。潮のにおいがプンプンと男の鼻孔を突く。
先ほど受けたはずの重みはどこへやら。
痛みなど全く感じない。もちろん頭も割れていない。健康そのものだ。
これで何度目やら、と男は呟く。
男の名はディアボロ。
ここしばらくの間、幾度となく死に続けている男だ。
ディアボロが死に続けることを始めてからどれ程の年月が経ったであろうか。
この『死の循環』を知っている人物は二人いた。
一人は本人であるディアボロ。
そしてもう一人は、彼をそのループに陥れた人物、ジョルノ・ジョバァーナ。彼はその能力によってディアボロからボスの座を奪い取り、現パッショーネのボスまで上り詰めた。
しかしもう一人。
この二人以外にもこの事実を知る人物が一人存在していた……。
「今の死で、536789021回目の死亡か。よくもまぁ死ぬるものだねえ」
誰もいない真っ白い空間で呟く人物。
それに名は存在しない。
しかし、この世の全てを知っており、空間や時間、命をも自在に操るその人物はこう呼ばれていた。
『神』、と。
神はこの世で起こることの全てを知り、この世の何よりも強大な力を持つ存在。
『スタンド』と呼ばれる特殊能力を持つ者たちも人間の中には存在するのだが、その能力など比べ物にならないほど、神の力は大きなものだった。
さて、そんな神だがこのような無敵の力を持っているにも関わらず、一つだけ不満、不便があった。
それは『
無敵であるが故に、緊張感や恐怖を味わったことのないそれは、ある種の刺激に飢えていた。
それは一つの仮面を巡る壮大な冒険譚であったり、自身より遥かに大きな存在を打ち負かさんとするスリルであったり、一族の因縁を晴らすための長い旅路であったり、命を懸けて大切なものを守ろうとする正義の心だったりする。
そんな神の唯一の癒しは、下界の様子を観察することだった。
人間は実に不安定な生き物だ。故に、予想だにしない動きをする。それが神を楽しませていた。
さて、そんな神だが実は最近のところこのディアボロという男しか見ていない。
神の眼には彼が哀れである、と感じると同時にある考えが浮かんでいたのだ。
もし、彼が最後の戦いで勝っていたらどうなっていたのだろう、と。
『矢』がディアボロを選んだのならどうなったのだろうと。
元より好奇心に溢れた神のことだ。
することはもう一つに決まっている。
世界は、何千という平行世界の中から一つの『正解の世界』が選ばれ、それが繋がることによって成り立っている。
そして、選ばれなかった平行世界は跡形もなく消え去ってしまう。
しかし、神の力ならばそれを再現することが出来る。
さっと神が片手を振ると、あっという間に一つの世界が誕生する。
新生した世界の中には、『正解の世界』から無理矢理引っ張り出してきたディアボロを配置する。
その世界は、『まだ矢が誰も選んでいない』世界だ。
目の前に映画のように映る世界を、面白いものを見る子供のような眼で眺めながら、神は誰かに言う風でもなくぽつりと呟く。
「さて、どうなるかな……」
皆さんこんにちは、ウェーヴ・カンです。
まず、この小説を読んで下さった皆様に感謝の念を伝えたい。
ありがとうございますッ!
作者、初めての二次創作です。
最近ジョジョにハマっていたことと、二次創作への興味が少しあったため、思い切って書いてみました。
表現が分かりにくい等、読みにくい部分は多数ございますが、どうか多めに見てください。(笑)
また、
「こんなの、ジョジョじゃねェ! 誰だ、こんな作品書いた奴!」
と、作者のへたっぴな文章に苛立ちを覚える、熱烈なジョジョファンの方もいらっしゃるかもしれませんが、そこはどうか温かな目で見守っていただければと思います。
この小説、今後も更新を重ねていく予定ですので、気に入った方は今後ともお付き合い、よろしくお願いいたします。
また、私ウェーヴ・カンはオリジナルの作品も投稿しております。
そちらの作品も気に入っていただけたなら、お付き合いよろしくお願いいたします。
それでは皆様、次のあとがきでお会いしましょう。
Bye!