ご了承下さい。
ふっと意識の糸が途切れ、あらゆる感覚が暗闇に放り出される。
ああ死んだのだな、と感じるよりも早く意識が戻り、瞬時に身体が元の健康体に戻った。
そしてその目を開いた時、全てが驚愕に包まれる。
目の前に広がる光景は間違いなく、懐かしのイタリア・ローマだった。
「こ、ここはッ⁉」
いつも通り死に終え、意識が戻ったディアボロは周囲を見渡し心底驚く。
正確に敷き詰められた石畳、遠目に見えるコロッセオ、そして流々と流れるティベレ川。見間違うはずなどない。
「ここは……俺が『死に続ける』ことを始めた最初の地だ! 新入りのジョルノ・ジョバァーナが矢に選ばれ、俺を死の連鎖に陥れた、その地だ!」
思わず叫んだ彼は、まさかと思い後ろを向く。そこには……
「つかんでいる‼ レクイエムの次に矢を支配するのは…! ジョルノだッ!」
若い男の声。その声を背に、黄金の髪をした青年が矢を拾い上げ、こちらをキッ睨みつけている。
(間違いないッ! まさか俺は戻って来たのか⁉ 全ての死を経験した俺は、原点に戻って来たというのか⁉)
「『ゴールド・
黄金の青年――ジョルノ・ジョバァーナ――が自身の能力の名を叫び、手にした『矢』を突き刺す。
動く意志も何もないはずなのに、ディアボロの身体は勝手に動く。
長らく見ていなかった自身のスタンド――『キング・クリムゾン』――を顕現させ、ジョルノに飛びかかる。
そして、飛びかかる間にジョルノのスタンドに穴が開き、彼は矢を取り落とした。
「フフフフフフ……ハハハ…ハハ」
そしてディアボロの口から奇妙な笑い声が溢れる。
「逃げなくて本当に良かった……いや正直『絶望』が俺の心を包んだよ。我が娘の私を見下した侮辱がなかったら向かう決断はつかなかった……おかげで『矢』が地面に落ちる予知を見ることができたよ」
地面に弱々しく座りこむジョルノに、ディアボロは容赦なく声を掛ける。
だがしかし、その上から目線の言い方とは裏腹にディアボロは内心焦っていた。
(このセリフを俺は――――ッ⁉ あの時と同じだ。俺はもう一度『死に続ける』ことを始めるというのかッ!)
自身の過去のセリフ通り、今ディアボロは『絶望』、そして『恐怖』に全身を包まれていた。
繰り返されることがこれ程に恐ろしいとは――――
しかし、物語は素早く展開していく。
ディアボロは自身のスタンドの拳を振るい、ジョルノの頭をめがけてパンチを繰り出す。
(ああ、そうだ……)
ディアボロは記憶の糸を手探りで引き寄せ、当時を思い出す。
(そうだ。そして俺の『キング・クリムゾン』が奴のスタンドを砕いた時、その中から奴のレクイエムが――――)
悪夢を思い出し、ディアボロは思考を放棄しようとする。
もう、何もかもがどうでもいい。もう自分がこの『繰り返し』から抜け出すことは出来ないのだ。
これが運命なのならば、それに従う他ない……。
何もかもを諦めたディアボロだが、過去の自分は止まらない。
『キング・クリムゾン』がジョルノのスタンドの頭右半分を吹っ飛ばす。
「『帝王』はこのディアボロだッ‼ 依然変わりなくッ!」
この後に絶望のどん底に突き落とされることを知っているディアボロは、何を言っているのか、と過去の自分に呆れ果てる。どれだけ格好いいことを言おうが、結局は負ける運命であるというのに……。
そして、ジョルノのスタンドの中から、進化したレクイエムが――――
飛び出すことはなかった。
飛び出したのは、ジョルノを司っていた彼の中心部。頭を割れば脳みそが飛び出る。ごく当たり前の事象が展開された。
(…………な、に……?)
一瞬、思考が停止する。目の前の光景が信じられなかった。
レクイエム化した、奴のスタンドがでてくるのではないのか。何故ごく当たり前にこの男は死んだのだ……。
一瞬時間が止まった空間で。
真っ先に現実に戻ったのはジョルノの相棒だった。
「な……ナにィィィィィイイイ!?」
仲間が死んだことをようやく悟った、拳銃を握った若い男――グイード・ミスタ――が絶叫する。
「ジョ、ジョルノッ!!!! て、テメェ‥‥‥ぜってーに許さねーぜ、ディアボロ!」
チームの中でもよく任務を共にこなしていたミスタは、怒りと恨みを混ぜ持った目でディアボロを睨みつける。
そんな中、最も驚愕に満ちていたのは他でもない、ディアボロ本人であった。
過去に彼が体験した時と全く違う結果になったのだから、驚くのは無理もない。
(ど、どういうことだ……。俺は夢を見ているのか? 確かにここでジョルノ・ジョバァーナのレクイエム化したスタンドが出、俺を死に続けるようにしたはずだ。……なぜ、なぜ俺が勝ってしまっているのだ⁉)
しばらく沈黙していた彼だったが、ふと稲妻のようにとある考えが頭をよぎる。
(まさかこれは…‥世界が違う、いや、俺が世界を変えてしまったのか⁉ あまりの俺の『死に続ける』ことから抜け出したいという願望が強い精神のパワーとなって……、本当に過去を変えてしまったのではないだろうか……)
無論それは不正解であり、これは神が用意した別の世界に過ぎないのだが、彼がそれを知る由もない。
(とにかく……)
しかし彼にとってはどうやってこの異変が起きたのかなど、どうでもよいことであった。重要なのは、『矢』に選ばれたのがジョルノでないということだ。
(なんだかよく分からんが……この状況、利用せずにはいられん!)
拳銃を構え走り寄ってくるミスタを『キング・クリムゾン』の拳で撥ね退け、ジョルノが取り落とした矢を拾う。
そしてそれを大きく天に掲げると、
「やはり選ばれたのは、このディアボロだッ! 俺こそが唯一の支配者、帝王なのだッ!」
そう叫び、自身のスタンドへ矢を躊躇いなく振り下ろす。
一瞬、腹部に強烈な痛みが走るが、すぐになくなり、そのうちスタンドに刺さった矢は毛虫が這うようにうねうねとスタンドの腕を通り体の奥で安定する。
そしてディアボロは、その矢からエネルギーが溢れ出てくるのを感じる。
「これが……ッ! この力は……ッ!! 矢は俺を選んだッ! これが俺の最強のスタンド、『キング・
叫んだ瞬間、今度はミスタ、そして近くに座り込んでいた女性――トリッシュ――の二人が絶望包まれる。
唯一の希望であるジョルノが殺され、『矢』に選ばれたのはディアボロなのだから。絶望しない理由がない。
「俺は……俺はもう一度、この力で頂点に返り咲いてやるぞッ!!」
自身の能力を満足そうに見つめながら、ディアボロはそう呟く。
そして、未だに呆然としているミスタとトリッシュを振り返り、あざける様に言う。
「それでは……手始めに貴様らを殺そうか。この俺の新しい能力の実験台になれることを誇りに思うがいい……」
翌日。
イタリア中に妙なニュースが広まった。
コロッセオ内とティベレ川付近にて、男女計六名の死体が発見された。
警察の鑑識によりその素性も露わになる。
コロッセオ内の死体は計三体。
ブローノ・ブチャラティ(20) 全身に銃で撃たれた様な跡があるため、射殺と考えられる
ナランチャ・ギルガ(17) 全身を何かで貫いた跡が残っている。コロッセオ内の鉄柵に付着し
た血液が一致したことから、この鉄柵に刺さり死んだと推定される。
(もう一人は後に説明する)
そしてティベレ川岸にも計三体。
ジョルノ・ジョバァーナ(15) 頭半分が吹っ飛んでいる。
鈍器で殴られた模様。
ここまでは良い。何も常識外というワケではなく、常識で考えられる範囲の死因だ。
しかし、問題は残り三人の死体である。
グイード・ミスタ(18) 腹部に大きく穴が開いている。が、周囲の血液量から考えて、
出血死ではない。しかし完全に死亡している。死因不明。
トリッシュ・ウナ(15) 特に目立った外傷がない。体内に毒などを投与した痕跡も、
発見されなかった。まるで、
死因不明。
ジャン=ピエール・ポルナレフ(36) こちらも目立った外傷はない。
故トリッシュと同じような状態。
死因不明。
多くの人々は奇妙なニュースだ、という程度で記憶にとどまり、そのうち頭の中から抜け落ちていった。
しかし、一部の者は。
明らかに何らかの摩訶不思議な力が働いていると、そう感じた。
そして、このニュースはいつしか、イタリアから遥か東の小さな島国――日本――にも伝わっていた……。
皆さん、こんにちは。
ウェーヴ・カンです。
まず、第一声(?)に謝罪を……。
更新遅くて、申し訳ありませンンンンンン――――――……!!!!!!
本当にすみません。
もう前回の更新から何週間経っていることやら……。
本当に申し訳ありませんでした………。
さて、第二話です。
いかがでしたでしょうか。
今回はこの物語の、ディアボロ視点での始まり、といったところですね。
実質的に、これが一話、みたいなトコがあります……。
最後に少し気になる終わり方にしておきました。
ジョジョ好きの方々は、この先出てくる登場人物の予測も可能なのではないでしょうか。
では、今回はこの辺りで。
次も更新が遅くなると思いますが、お付き合いよろしくお願いいたします。
それでは、次回のあとがきでまたお会いしましょう。
さようなら!