#1 山の上の神社
私は赤田梨華。自然あふれるこの街で巫女として働いている。
趣味はソフトボールと、休日の寺社仏閣巡り。
…ここ最近は偶然知り合った同業者に会いに行くのもちょっとした楽しみになっている。
その同業者と知り合うきっかけになったのは、姉が偶然見つけた雑誌のコラムだった。
???)梨華、ちょっとこれ見てよ。
梨華)何?
私は夢中で見ていたスマホから目を話して振り返った。
???)これ。神社の紹介コラムがここに載ってる。
梨華)どこの?
???)えっと、音…子…猫…?何て読むのかしら。
梨華)あ、ここに「ねこねこ」って書いてる。
???)あ、本当ね。音子猫神社か…。
梨華)場所は…北の方ね。こんなところまで行ったことないなぁ。
???)今度のオフの日に行ってみたら?
梨華)そうね。ありがとうお姉ちゃん。
それから数日後、私は赤色の軽四で音子猫神社へと向かった。
風景が北に行くにつれて少しずつ緑に支配されていく。人気も少なくなってきてちょっと不安になってきた。
梨華)(この先ってもう山しかないのよね…こんなところに神社なんかあるのかな。)
しかし、目的地はこの方向で間違いない。ここはカーナビを信じて進むしかない。
しばらく進むと、小高い山の登山口に行きついた。道は細く未舗装で車が入ることは出来そうにない。
梨華)(ここからは歩きになりそうね。それにしてもそこそこ高い山ね。どれくらい歩くことになるんだろう…)
登山道ですれ違う人の姿は一切なかった。しかし、荒れ果てていない所を見ると定期的に誰かが利用しているようだ。
この先が神社だとすれば、必然的に神社に住む神職や関係者の可能性が利用している可能性が高い。
一縷の希望に駆けながら私は山道を登り続けた。
数十分ほど登ると、石段が見えてきた。石段の先には微かに鳥居らしきものも見える。
梨華)(良かった…とりあえず音子猫神社に着いたようね。どんな感じなのかな。)
息を切らしながら石段を登りきると、突然木々に遮られていた風景が開けた。陽の光が飛び込んできて眩しさに思わず目を瞑ってしまった。
そっと目を開けると、鳥居の先の風景が飛び込んできた。
小さな本殿に社務所。境内には至る所に落ちてきた青葉が積み重なっている。
…山道でもそうだったけど、この境内にも人の気配が感じられない。
不気味さを感じつつも、意を決して中に入ることにした。
鳥居には「音子猫神社」と書かれている。
目的地であることを再確認し、鳥居に一礼してから私はゆっくりと境内に入った。
続く