カンナギ   作:百瀬頼人

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#12 八ツ橋論争

リタ)あれ?これは何ですか?…堅焼き煎餅?

 

リタさんが食いついた和菓子。それは…

 

斎藤)八ツ橋ですよ。

 

リタ)え?八ツ橋?

 

斎藤)はい。八ツ橋です。

 

 

 

リタ)八ツ橋ってもっとこう…何と言うか、その…三角形でもちもちした感じの和菓子ではありませんでしたっけ?

 

確かに目の前にある八ツ橋は三角形でももちもちした感じでもない。堅焼き煎餅のような物だ。

 

斎藤)間違いなく八ツ橋です。

 

リタ)え?どういうことなんですか?梅岡さ〜ん(´;ω;`)

 

 

 

梅岡)リタさん。斎藤さんの仰る通り、これは八ツ橋で間違いありませんぞ。

 

リタ)何で…何で八ツ橋なんですか?訳が分からないよぉ(´;ω;`)

 

リタさんは完全に混乱していた。

 

 

 

梨華)リタさん。落ち着いて…信じられないかも知れませんが、これは間違いなく八ツ橋なんですよ。

 

リタ)じゃあ、あの三角形でもちもちのやつは何なんですか?

 

斎藤)あれは「生八ツ橋」です。

 

リタ)生八ツ橋…?

 

 

 

梨華)八ツ橋の由来は諸説あるのですが、その由来の一つとされているのが「八橋検校」です。

 

リタ)八橋検校?

 

斎藤)八橋検校は江戸時代に三味線や琴の名手として活躍した人物です。彼が箏曲の基礎を作り出したとされており、今では箏曲で一般的になっている平調子を作り出したのも彼だと言われています。

 

リタ)凄い方なんですね。私は琴なんか触ったことが無いので知りませんでした。

 

梨華)八ツ橋はそんな八橋検校の死後、彼を偲んで作られた和菓子と言われており、その形は八橋検校の得意としていた琴の形になっている…と言うのが八橋検校説です。

 

リタ)と言うことは他にも?

 

 

 

斎藤)リタさんは「伊勢物語」はご存知ですか?

 

リタ)伊勢物語…学生の頃に東下りを習った覚えはありますけど…

 

斎藤)伊勢物語は「在原業平」らしき人物を主人公とする歌物語です。その中でも特に有名なのが…第9段の「東下り」です。

 

リタ)あ、東下り…

 

斎藤)この東下りでは主人公が京を離れ、東国に旅に出ます。旅先で詠まれた歌がかの有名なのが「杜若(燕子花)の折句」です。

 

梨華)唐衣 着つつなれにし つましあらば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ ですね。

 

斎藤)この短歌は古今和歌集にも掲載された有名な一首です。作者が在原業平であることから、伊勢物語の主人公を在原業平とする説が有力とされているんですね。

 

リタ)ここまでは分かりましたが、これが八ツ橋とどう繋がるんですか?

 

斎藤)この「杜若の折句」が詠まれたとされているのが、三河の八橋。現在の愛知県知立市八橋町とされています。この八橋から名がつけられたのが伊勢物語説です。

 

リタ)そうなんですか。斎藤さんは何でも知ってるんですね。

 

斎藤)当然です。赤田神社の歩く辞書と呼ばれてるんですから。

 

続く

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