カンナギ   作:百瀬頼人

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#2 初めての出会い

境内は思った以上にこじんまりとしており、その中に人の気配は感じられなかった。

 

 

 

手水場からは冷たく澄んだ水が絶えず流れていた。恐らく近くの湧水を使っているのだろう。手と口を清めて拝殿に向かう。

 

 

 

拝殿前の参道の両側には狛犬が待ち構えていた。

 

…いや待て。これ犬じゃない、猫だ。

 

「音子猫神社」の名前に関係あるのだろうか?

 

 

 

拝殿でお参りを済ませた後、社務所に向かう。

 

恐らく売店として機能していたであろうスペースにも人はいない。

 

 

 

梨華)(ここまで人気を感じられない神社も珍しいわね…どうやら人はいないようだし、帰りましょうか。)

 

そう思い踵を返して帰ろうとしたその時だった。

 

???)あ…

 

一人の女性が鳥居をくぐって入ってきた。両手には大きな買い物袋を提げている。

 

???)もしかして…こちらに参拝を?

 

梨華)あ、はい。

 

???)…ありがとうございます!山道を登るのは大変だったでしょう。少し休んで行ってください。

 

梨華)は、はぁ…

 

私は女性に引っ張られるように拝殿の奥に通された。

 

 

 

奥の部屋は彼女の居住スペースになっていた。ここにも猫に関する物が沢山飾られている。

 

???)お待たせしました。リンゴジュースしかなかったので…どうぞ。

 

梨華)ありがとうございます。

 

リンゴジュースを一口飲んだのを確認して向こうが話を切り出してきた。

 

 

 

???)突然で申し訳ありませんが、お名前を教えていただけますか?

 

梨華)一体またどうして?

 

???)この神社、見て分かるように経済が火の車なんですよ。

 

梨華)参拝客が来てそうな気配が無いですからね。

 

???)こう言う状況なので、副業でライターやナレーターのお仕事をしてるんです。神社に来てくださった方からお話を聞いて記事を書こうかと。

 

梨華)そうなんですか。私の名前は赤田梨華です。この町で巫女をしているんです。

 

???)赤田梨華さんですね。職業は巫女…え!?巫女ですか?

 

梨華)はい。巫女です。

 

???)これも何かの縁なのですかね…あ、申し遅れました。私は音子猫神社の巫女の音崎リタと申します。少しの間お時間宜しくお願いします。

 

梨華)はい、こちらこそよろしくお願いします。

 

 

 

リタ)まず初めに、こちらの神社に来るきっかけを教えていただけますか?

 

梨華)姉が偶然、雑誌のコラムでこの神社を見つけたんです。

 

リタ)雑誌ですか…ちょっと前にお話を聞いたフリーのライターさんが書いたのかな?

 

梨華)私、空き時間を見つけてはこの町の寺社を巡っているんです。そう言った事情を知っていたからこそ姉もすぐに教えてくれたんでしょうね。

 

リタ)なるほど…私としてもこの神社に興味を持ってくれるだけで非常にありがたいです。

 

 

 

リタ)次に、この神社を参拝した時の率直な感想をお願いします。

 

梨華)こじんまりとしているな…と思いました。ただ、設備等は一般的な神社と比較しても遜色ない感じなので、かつてそれなりの参拝者がいたんじゃないかと思いました。

 

リタ)…流石巫女さんですね。確かにこの神社はかつて「沢山の猫が住む神社」としてそれなりの人気を誇っていたと言います。しかし、山間部の過疎化もあって少しずつ人の足が遠のいていって…今じゃ猫も人も全くいなくなってしました。

 

 

 

梨華)ちょっとこちらから質問しても良いですか?

 

リタ)何でしょう?

 

梨華)ここで働いている人ってリタさんだけなんですか?

 

リタ)神職ですか…私以外だと梅岡さんと柊君がいます。

 

梨華)今お二人は…

 

リタ)梅岡さんは先月ここでのお仕事中に転んで足を骨折してしまって…今は治療中です。

 

梨華)では柊さんは?

 

リタ)柊君はまだ見習いなんです。いずれ神主になる予定なんですがまだ大学を卒業していないので週末だけお手伝いをしてくれています。

 

梨華)その他に働いてる方はいないんですか・

 

リタ)いないですね。両親は数年前に亡くなってしまって、私の兄と姉が後を継ぐ予定だったんですが、二人とも神社に全く興味が無くて…

 

梨華)リタさんが仕方なく継いだという感じですね。

 

リタ)はい…

 

 

 

リタ)最後に一つ、これは私からのお願いなんですが…この神社を宣伝していただけませんでしょうか?

 

梨華)構いませんよ。どういった方法で宣伝しましょう?

 

リタ)もう何でもいいですよ。SNSとかでも構いません。

 

梨華)でしたらツブヤイターにしましょうか。

 

リタ)ツブヤイターですか。ファンの人数はどれくらいなんですか?

 

梨華)そうですね…ちゃんと確認はしてませんが数万人はいますよ。俗に言うインフルエンサーって奴ですね。

 

リタ)数万…これは期待できそうですね。

 

梨華)「今日は久しぶりに寺社巡りで、音子猫神社に行きました。参拝客がほとんどいないので自然豊かな風景を撮影するにはもってこいのスポットです。素敵な巫女さんが皆さんを待ってますよ。」こんな感じで良いですかね?

 

リタ)ありがとうございます。

 

 

 

リタ)そう言えば、梨華さんが働いている神社ってどこにあるんですか?

 

梨華)「赤田神社」で調べてみて下さい。すぐに分かりますよ。

 

リタ)分かりました。取材にご協力下さってありがとうございます。

 

梨華)こちらこそありがとうございました。

 

続く

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