カンナギ   作:百瀬頼人

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#18 パンケーキと閃光の舞姫

葵)最初はどこに行くんですか?

 

梨華)まずは…ここ最近オープンしたばかりのパンケーキ専門店に行くわよ。人気すぎて長蛇の列が出来るって噂だから…テイクアウトの予約をしてあるわ。

 

葵)そんなに人気だと期待しちゃうなぁ…

 

 

 

梨華さんと葵さんが楽しそうに談笑している中、私は後部座席で完全に固まっていました。

 

今芸能人と一緒に車に乗っていると言う事実を脳が全然受け入れてくれないのです。

 

葵)…先輩、リタさんが固まってますよ。

 

梨華)大丈夫?あなたがこの前の赤田神社の取材の時に、「素敵な芸能人に会いたい」って言ってたから葵ちゃんに話を付けたのに…

 

リタ)はい…大丈夫です…

 

葵)全然大丈夫そうに見えないんですけど…

 

梨華)はぁ…とりあえず目的地に向かうわ。リタさんへの対応はついてからにしましょう。

 

 

 

車を走らせること約10分。車は目的地に到着し、ゆっくりと止まりました。

 

梨華)はーい着いたよ。リタさん大丈夫?

 

リタ)何とか…

 

梨華)私とリタさんでパンケーキを受け取ってくるから葵ちゃんは待ってて。

 

葵)はい。パンケーキ…楽しみだなぁ…

 

 

 

梨華さんが運転席を降りると、私の席の方まで移動してきました。

 

私はこの時もずっと固まったままうつむいていました。

 

 

 

梨華)大丈夫ですか?

 

リタ)吐きそうです。

 

梨華)吐かないでくださいよ…

 

リタ)もうこの場にいるのがもうしんどすぎます…

 

梨華)…とりあえず外の空気でも吸って落ち着いてください。

 

リタ)はい…

 

私は梨華さんに促されて車を降りました。

 

 

 

リタ)ここがおすすめのパンケーキ専門店ですか。

 

梨華)そうです。最近できたばっかりなのにもう若い女性がたくさん集まるくらいには人気になってて…

 

リタ)何が女性を惹きつけるんでしょうね?

 

梨華)やはり「映え」が良いんだと思いますよ。私はあまりそう言うのは気にしないんですけど。

 

リタ)「映え」ですか…

 

 

 

店の外には十人程度のお客さんが列を作って待っていました。人気を感じさせてくれる行列に私はパンケーキの味を密かに期待してしまいました。

 

梨華さんと一緒に店内に入ると、店内の座席は女性客が美味しそうなパンケーキを目の前にとても楽しそうな雰囲気でした。

 

所々に男性の姿も見受けられましたが、若干居心地が悪そうな感じがとても印象深く見えました。

 

 

 

梨華)すみません。テイクアウトの予約を受け取りに来ました。

 

店員)いらっしゃいませ。少々お待ちいただけますでしょうか。

 

梨華)リタさん、ちょっと待ってましょうか。

 

リタ)はい。

 

 

 

入り口近くの待合椅子に座ってしばらく待っていると、先ほどの店員さんが袋を手にやってきました。

 

店員)お待たせいたしました。プレーン3つでお間違いないでしょうか?

 

梨華)はい。ありがとうございます。

 

店員)ありがとうございました。いってらっしゃいませ。

 

私達は店員さんの爽やかな挨拶に押されながら店を後にしました。

 

 

 

梨華)さて、とりあえず葵ちゃんの家に戻って一緒に食べましょうか。

 

リタ)そうですね。

 

そう会話しているその時でした。

 

梨華)リタさん危ない!

 

リタ)…え?

 

私は真横から走って来る男性に全く気付いていませんでした。

 

リタ)うわっ!?

 

 

 

私は走ってきた男性ともろに衝突し、手に提げていた鞄が衝撃で飛ばされてしまいました。

 

梨華)大丈夫ですか?

 

リタ)何とか…

 

そう言いながら辺りに散らばってしまったものを拾い集めようとしたその刹那、背後の気配に一瞬気付きました。

 

私はその時、梨華さんが一緒に手伝って拾ってくれるものだと思って少しだけ振り返って声をかけようとしました。

 

しかし、そこにいたのは先ほどぶつかってきた男性でした。

 

 

 

男性は私を信じられないくらい強く突き飛ばすと、散らばっていた荷物の中から財布だけを拾い上げて一目散に走りだしました。

 

梨華)あ、ちょっ…ドロボー!!

 

 

 

葵)(え?泥棒?)

 

その声は、車の中で待ち続けていた私にも届いていました。

 

慌てて背後を振り返ると、突き飛ばされて転んでいるリタさんと逃げていく男だけが見えました。

 

私はすぐにあいつを捕まえようと、車を飛び出しました。

 

梨華さんの「行っちゃ駄目!!」という叫びが微かに聞こえました。でも、そんなこと言ってられません。

 

友達が危害を加えられてて黙ってられる訳ないじゃないですか。

 

私は、周りの目など気にせずに男を追いかけながら叫びました。

 

葵)待てコラ泥棒!逃げんな!

 

 

 

どれくらい追いかけたでしょうか?少なくとも2ブロックくらいは追いかけた気がします。

 

流石に私も限界でした。周りの人に聞こえるように叫び続けていましたが、突然のことに呆気にとられて誰も加勢してくれませんでしたし、私の事を知っている人はただただ写真や動画を撮って動こうとしてくれませんでした。

 

このまま逃げられちゃうのかな…と諦めそうになった時に、救世主が見えたんです。

 

青いフードのパーカーを着た救世主が。

 

 

 

葵)エネさん!こいつ捕まえてください!

 

続く

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