カンナギ   作:百瀬頼人

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#28 ようこそ我が家へ

長い石段を登り、視界がぱっと開けると…そこにはいつもと同じ音子猫神社の境内が広がっていました。

 

梨華)あれ以降、参拝客の足も全然減ってないですね。

 

リタ)そうなんですよ。どうもちょこちょこSNSとかで話題に取り上げてくれている人が居るみたいで、それなりにお客様が来てくれているんですよ。

 

さくら)…本当に素敵な所ですね。ロケーションも抜群ですし、なんとなく「ふるさと」と言うか…「実家」というか。そんな安心感があるような気がします。

 

リタ)そうですか?ありがとうございます。

 

 

 

リタさんに連れられて社務所の方に向かっていると…社務所からちょうど出てきた梅岡さんと鉢合わせました。

 

梅岡)おや…リタさん、戻ってたんですね。

 

リタ)はい、梨華さんとさくらさんも連れてきちゃいました。

 

さくら)あ…赤川動物病院の赤川さくらです。よろしくお願いします。

 

梅岡)ほぉ…梨華さんはともかく、さくらさんはどういったご用件で?

 

さくら)簡単に言いますと、リタさんが飼う猫の飼育についての教授とついでにお友達作りもしようと言うことで…

 

梅岡)ほぉ…猫ですか。

 

 

 

梅岡)この神社はかつて猫が沢山いた…と言う話は恐らく聞いていますでしょう。

 

さくら)はい。

 

梅岡)管理はリタさんのご両親が丁寧にされていました。

 

さくら)大変だったでしょうね…

 

梅岡)しかし…

 

さくら)しかし?

 

梅岡)数年ほど前に、ご両親が相次いで亡くなられて…

 

さくら)あぁ…

 

梅岡)管理の手立てが付かないということで、地域の方々に引き取ってもらったんです。

 

さくら)そうでしたか…

 

梅岡)リタさんがこの神社の巫女になってからは、猫のいない寂しい神社になっていたのです。

 

 

 

さくら)リタさん、猫はこの神社の一つの「売り」だったということですよね?

 

リタ)そうですね。

 

さくら)でしたら、ヤマダちゃんもしっかり大事に飼ってあげないといけないですよ!!俄然やる気が出てきました!!

 

梨華)いつになく気合入ってるわね…

 

さくら)当たり前ですよ!!これでも医者の卵です!!「動物の心に寄り添う」為なら、いくらでも頑張れますから!!

 

梅岡)頼もしいですな。リタさん、さくらさんのお話はしっかり聞いておいたほうがよろしいですよ。

 

リタ)そうですね。

 

 

 

それから小一時間ほど、さくらさんに飼育のいろはを事細かに教えてもらいました。

 

その間、ヤマダ・ユニ・ホームズの三匹はケージから出して部屋の中を自由に行動させることにしました。

 

三匹はまさに「借りてきた猫」状態で、しばらく戸惑ったかのように全く動きませんでした。

 

しかし、しばらくすると慣れてきたのか部屋の中をウロウロして色んなものを観察しているようでした。

 

時折、ユニが梨華さんの膝の上にやってきたりホームズがさくらさんにすり寄ってきたりしていましたが…

 

ヤマダだけは部屋に興味津々なのか、ずっと部屋をきょろきょろと見渡しては色んな所を探検していました。

 

 

 

さくら)ヤマダちゃん、もしかしたらこの部屋が気に入ったのかもしれませんね。

 

梨華)私やさくらちゃんに興味を示さないあたり、かなりのお気に入りのようね。

 

リタ)そうなんですか?

 

さくら)当の本人に聞けるわけではありませんけど…恐らくここがテリトリーなんだと分かっているのかもしれませんね。

 

リタ)そっかぁ…良かったぁ…

 

 

 

ユニもホームズも、ヤマダと一緒に過ごしている間は敵意などを一切向けることなくとてもおとなしかったので、今後他の猫と交流する際も安心してみていられるのではないか?とさくらさんも太鼓判を押していました。

 

 

 

梨華)今日はお疲れさまでした。ヤマダちゃんはしばらく過度に構いすぎないようにした方が良いと思うわ。ただ、しつけはちゃんとしておかないとね。

 

リタ)そうですね。

 

さくら)何か困った時は、円谷さんや私を頼ってくださいね。

 

リタ)分かりました。

 

 

 

ユニとホームズがゲージに入るタイミングで、ヤマダが何回もニャーニャーと鳴いていました。

 

まるで、お別れしたくないかのようでした。

 

 

 

梅岡)小さくて可愛いですな。

 

リタ)そうですね。

 

梅岡)これからしっかりと世話をして、この子にとっても参拝客にとっても楽しい生活になるように頑張っていきましょう。

 

リタ)はい!!

 

 

 

こうして音子猫神社にあたらな仲間が増え、楽しくも騒がしい日常が始まろうとしていました。

 

続く

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