東方南Q阿伝   作:鼠日十二

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主人公の転生前の性別はご想像にお任せします。そんな重要じゃない。


第一異変:紅魔郷
第一和


『南Q阿伝』という漫画をご存じだろうか?見た目制服女児な蜘蛛の神である「南久阿(なくあ)」が渡来神と呼ばれる異形の神に寄生された同胞(日本神)を神事でもって解放し、日本を渡来神の侵攻から護る……といったストーリーである。詳しく知りたい人は読むとよろしい。

 

 

 で、まあ、何の因果か、私は南久阿になっていたのだ。

 神様転生は聞いたことがあれど、さすがに神様に転生するのは新しすぎやしないだろうか。しかも私が生まれたのは日の本ができて比較的すぐの段階である。

 

 生まれてすぐはだいぶ焦った。名前に南久阿と入っていたことと司るものから自分がどんな存在なのかおおよそ見当がついたけれど、だからと言って神のふるまいなどわからない。対策として兄弟姉妹の真似をしていたら、親鳥の真似をする雛のようだと可愛がられた。解せぬ。

 

 

 

 

 さて。そんな私だが、白魔*1を受け止め、押し返し、無理やり封印したのち、傷を癒すため命からがらたどり着いた自らの神社にて休眠することになった。ここまでは想定通りだった、のだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある昼下がり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博麗神社の主神?」

 

 

 巫女服を着た少女、博麗霊夢は初めて聞く話に驚愕を露わにした。当然『どんな神様なんだろう?』とかそういうベクトルの話ではなく、

 

 

「いたの?」

「……まあ、そうよね。話していないし」

 

 そう答えたのは八雲紫、幻想郷の管理人である。紫は記憶を辿るように目を瞑り、話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はるか昔、私が存在しないほどの昔に南久阿という蜘蛛の女神がいた。彼女は外敵との戦でその力を大幅に落とし、自らの神社で眠りについた。その神社の名を南曇神社という。

 

 彼女には太郎丸と次郎丸という二匹の大蜘蛛の眷属がいたけれど、そのうち太郎丸は存在すら薄れかける重傷を負った。主である南久阿の力が弱まった今自力で回復するのは不可能だと判断した太郎丸は、南曇神社の巫女に宿ることで存在を保つことにした。疑似的な神降しのようなものね。そのまま太郎丸の存在は代々引き継がれていった。

 

 太郎丸を宿した巫女はその権能のごく一部を扱うことができた。例えば怪力だったり動体視力だったり、はたまた手先の器用さ。果ては()()()()()()()()()()()()()()()()()()とか。私はそれに目をつけて、博麗の巫女として得られる確実な信仰(南久阿の糧)を対価に幻想郷の調停者の役割を任せたの。神社を起点にして幻想郷を拓き、その時に名前も変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私そんなの受け入れた覚えないわよ」

「それは先代の所為ね。彼女が悪だったわけではないのだけれど……。先代は不完全な肉体強化しか得られず、個人としての能力も持たなかったから、あまり強くなかった。素質ある跡継ぎを探す前に死んでしまった。私は焦って、太郎丸を受け入れられる器を探して、捨て子の貴女を見つけたの」

 

「……そう。で、その話を何故今になってしたわけ?」

「南久阿がそろそろ目覚めるらしいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、霊夢は全く寝付けなかった。頭の中では紫の言葉がぐるぐると回っている。

 私の中に太郎丸とやらがいるといわれても全く想像がつかないのもそうだが、一番の問題は勘についてである。魔理沙が聞くと激怒しそうな話ではあるが、霊夢は自分の素質だとか才能だとかを全く誇りに思っていない。それはもとからあるもので、私が得た力ではない。

 

 

求道の先に得た力ではない。根拠のある力ではない。

 

 

 そう思うたびに『何かの拍子にこれが失われたら?』と想像してしまう。追い打ちをかけるように自分の能力は紫の定めたスペルカードルールにおいて半ば反則的な強さだった。その強さがさらに霊夢を一人に押し上げる。

 

 

 

 

「ああ、もう。こんなことで悩むなんて、私らしくない」

 いつだって強くあれ。調停者に足る力を持て。それが博麗の巫女に求められるものだ。

 

 

私らしさとは?

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢は疲れて、ふと外の空気が吸いたくなって縁側に出た。月明りが境内を照らすよく晴れた夜だ。

 

 

 ……本殿の屋根に誰かが立っている。ここは人間が来るような場所ではないから、十中八九妖怪の類だろう。面倒なことだ。霊夢は寝間着姿のまま外に出て、その影に声をかけた。

 

 

「あんた、そこから降りてきなさい。退治するわよ」

「……うん?」

 

 

 飛び降りて月の光に照らされたその姿は実に珍妙だった。小さな金具(ヘアピン)で前髪をきっちり二つに分け、まったく見慣れない奇妙な服装(女子制服)の黒髪少女。そいつはこういった。

 

 

「太郎丸?」

 

その単語には聞き覚えがあった。つまりは、目の前の少女は、

 

 

 

 

 

「あんたが南久阿?」

「知っているのか。さよう、私が南久阿だ。それで?ここは南曇神社ではないのか?」

「……なぜそう思ったのかしら」

「何故って……」

「……ああ、もしかして意識はあって神社の経緯は見てたってわけ?」

 

南久阿はどうも変な顔をして、

 

 

「よくわからん、説明してくれ」

 

 

「それは私がやりますわ」

 

霊夢の隣に紫がぬるりと現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めたら博麗神社にいた件について。

 

 というのも原作では南曇神社の巫女は南代祝詞という女子高生だった。それがどうだ、出てきたのはそれより幼い少女だった。しかもその少女からは太郎丸の存在を感じる。どういうことだ?太郎丸は神田太郎という少年を依り代にしていたはずだが……。

 

 

 混乱する私をさらに混乱させたのはその少女の隣に現れた女性だった。見覚えがある。女性は八雲紫と名のった。

つまりは隣の少女は霊夢ということか?つまりは私は南Q阿伝の世界に転生したはずが実は東方の世界だったと?

 

 

 

 

 紫の話は私の想像を超えるものだった。私が博麗神社の主神とは……何が起きるかわからぬものだ。で?私は何をすればいい?

 

 

 

……ふむ。私の完全復活のために信仰を集める、と。

 

 

 え?霊夢と一緒に暮らすの?博麗神社で?あ、主神だから仕方ないと。なるほどなるほど。

 

 

 

 

 

 

 

 うむ。やってやろうじゃないか。とりあえずこのろりぼでぃを信仰を集めて成長させねばならぬ。そのためには霊夢の協力が不可欠だ。

 

 

 

 

まずは絆を深めるところから始めなければ。

ところで次郎丸の気配が紫からするんだけどそれはいったい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
北方からの寒波が形を持ったもの












キャラについて詳しく知りたい方は調べるか作者に言ってくださいな。




南久阿ちゃんの元ネタはおそらくクトゥルフ神話の某蜘蛛です。なんかそれが主人公な小説もございますからご存じの方も多いでしょう。

次。太郎丸はあれですよ、寄生とかじゃなくて共生に近いですよ。仮初の器を少し貸してもらう代わり権能を使えるようになるって感じで、別に精神とかに影響を与えるものではありません。わるいこじゃないよ。


次郎丸については次のお話で言及します。死んでないです。




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