東方南Q阿伝   作:鼠日十二

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南久阿ちゃんをみんなが好きになるまで止まらねぇからよ……!


第二和

 一通り説明が終わると役目を果たしたとばかりに紫は消えた。

 後には何やら考え事をする南久阿と眠気なんかどこかに消えてしまった霊夢が残された。

 

 

 

 

「……霊夢」

「なによ」

「寝ないのか?」

 

「あんたの所為で眠気が覚めたのよ」

「ほう。子守歌でも歌ってやろうか」

 

 

 子守歌。残念ながら幼い霊夢の世話係だった藍はそんなことをしなかったため、霊夢は未体験だ。紫?時たま現れて成長度を見に来るくらいの放任っぷりなので期待するだけ無駄である。

 

 しかし、子守歌。実に幼い響きだ。霊夢はもう自分を子供だとみていなかった。そう思えるだけの経験をし、事件を解決した。

 

 

 

「いらないわ。子守歌がないと寝られない子供じゃない」

「いや、霊夢はどう見ても子供だろう。こんな時間まで起きるものじゃない」

「うるさいわね、どうせ一人なんだし私の勝手でしょ」

 

 

「私も今日からここに住むのだが。ふむ、太郎丸のためでもある。お前の面倒を見てやろう」

「余計な世話よ。私は子供じゃ──」

「子供だ。私から見たら十数年など子供も子供」

「神目線で語らないで」

 

 

 

 

そういいつつ霊夢はそわそわした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日の光で霊夢は目を覚ました。隣を見やる。

 布団はもぬけの殻だった。どこかへ行ったのだろうか?何はともあれ、朝食を用意せねば。

 

 

 

眠い目をこすり、顔を洗い、台所で霊夢が目にしたのは──

 

 

 

 

 その長い黒髪を蜘蛛の足のように自在に操って包丁なんかを動かしている主神の姿だった。

 

「む、起きたか。待っていろ、すぐ飯だ」

「……神もご飯作れるのね」

「昔取った杵柄というやつだ。ほら、座って待っていろ」

 

「……手伝うわよ」

「なら釜の火を調節しろ」

「一番面倒な奴じゃない」

「髪が火に弱いことくらいわかるだろう」

 

「あ、それ一応髪なのね。やけに関節がはっきりしているから頭に蜘蛛でも飼っているのかと思ったわ」

「………………」

「そこは否定しなさいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 食卓を誰かと囲むのも新鮮なものだ。どうにも霊夢はこの感覚に慣れなかった。

 

 

 

 

「霊夢は普段何をしている?」

「妖怪退治ね。里から要請があれば行くし、私一人でも見回りに行くことがあるわ。あとは、そうね。昼あたりに魔理沙が来ることもあるわ」

「なんだ、友達がいるのか」

「友達じゃないわ」

 

霊夢は即答した。

 

「あれは、そう、弾幕勝負が大好きな妖怪みたいなものよ」

「弾幕勝負」

「……それも説明しなきゃいけないのね。紫の奴、全然仕事しないじゃない。いいわ、見回り終えたら教えてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧雨魔理沙は才能で言えば平均的な部類に入る。しかしながらその行動力と情熱は凡人をはるかに凌駕していた。

 

 

 そんな彼女も幻想郷のルールに則って弾幕をする。弾幕のために魔法を研究し、火力を追求する。その目的はただ一つ、霊夢を打ち負かすことである。

 魔理沙にとって弾幕勝負は楽しむべきものであるが故に、霊夢の無感情な弾幕が理解できなかった。理解しようとして導いた結論は、『スリルが足りない』ということだ。つまり霊夢は自分が勝つと確信している。勝ち負けの決まった勝負ほどつまらないものはない。

 

 ならば自分が霊夢を追い越してやろう。あの仏頂面を崩してやろう。魔理沙は目標が決まると突っ走るタイプだ。その日の昼も新作のスペルカードを片手に博麗神社を訪れた。

 

 

 

 

 

 

「霊夢ー!勝負しようぜ!」

 

 

果たして出てきたのは、霊夢よりも幾分小柄な人影だった。

「霊夢はおらんぞ」

 

 

「霊夢の妹か?」

「なわけなかろう。ここの主神だ」

「主神?博麗神社の?……いたのか」

 

少女はやれやれと溜息をついた。

 

 

 

「お前、名はなんという」

「霧雨魔理沙、だぜ」

「魔理沙か。私は南久阿だ」

 

 

 

南久阿は魔理沙をじいっと見つめた。

「何用だ」

「霊夢に弾幕勝負を挑みに来たんだ。いつもならこの時間にはいるはずなんだが」

「見回りに行っている」

「珍しいこともあるもんだ。たいてい夕方に行くもんだとばかり」

 

 

 

 魔理沙は数舜迷って、霊夢を待つことにした。この主神の話も聞きたいところである。

 

 

 

 

「……は?南久阿弾幕勝負を知らないのぜ?」

「話は聞いた。見たことがないだけだ」

「弾幕は見なきゃわからないぜ。その美しさも勝負を分けるからな。尤も、私のは火力一筋だが」

 

 

 魔理沙の弾幕談義は霊夢が戻ってくるまで続いた。霊夢は役目を取られたような気分になった。

 半ギレの霊夢に訳も分からず魔理沙はボコボコにされ、満身創痍で帰る羽目になった。

 

 

「なあ霊夢。あれで友達ではないのか?」

「断じて違うわ。そんなことより、南久阿もスペルカードくらい作っておきなさい」

「作り方を知らん」

 

「……仕方ないから教えてあげるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランドールは狂っているというのが紅魔館における一般認識である。ところが最も博識であるパチュリーでさえその原因が分からなかった。当主であり姉であるレミリアは様々な手を試してきたが、それで何かが好転することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 しかしフランは自分の狂気を明確に把握していた。事の始まりは自分の能力を制御しきれず両親を殺したとき。フランは泣き喚いて、訳も分からず頭を抱え、途方に暮れた。その後悔と罪悪感と恐怖で押しつぶされそうな心の隙間に得体のしれないものが入り込んでくる。

 それは徐々にフランの理性を食い荒らし、狂気に染めていく。フランは無理やりに自我を四つに分け、そのうちの一つを狂気に充てることで残りに侵食されることを防いだ。

 

 残念ながら狂気をピンポイントで破壊することはかなわなかった。そこまで器用に制御できる能力じゃあなかった。フランは四分の一狂ったまま地下室で暮らすことを選んだ。

 

こうして時折破壊衝動に苛まれる吸血鬼が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パチュリー」

「いつでもいいわ」

 

 紅魔館は巨大な魔方陣に取り囲まれていた。パチュリーによる移動術式。フランの狂気の解決策を求め、レミリアがその能力をフルに使って目指したのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、次郎丸。南久阿が復活したから別にもういいのだけど。……ああ、なるほど。どうせ知れるというわけね」

 

 

 

八雲紫は笑った。

 

 

 

「……へえ。突然赤い館が。え?内部構造まで?蜘蛛の巣ってどこにでもあるのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










役者は大体そろったので次回から紅魔郷の予定です。
南Q阿伝に興味を持った方は今すぐ書店かなんかで読もう!(ダイマ)
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