東方南Q阿伝   作:鼠日十二

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クトゥルフ要素あり


第八和

 

 

 

「で、フランの相手をしてたわけ」

「なるほど」

 

 

 

 

 霊夢と南久阿は縁側で煎餅を齧っていた。いい天気だった。

 

 霊夢は午前中の見回りの時に紅魔館のメイド、十六夜咲夜と出会ってそのまま招待されたのだった。彼女曰く『妹様が寂しがっている』と。それは博麗の巫女の仕事のうちではないと抗議したものの、礼は弾むといわれれば断る理由もないわけで。案内されるがままにフランドールと遊んできたのである。

 

 

 

 

「そうか、友達が増えたのか」

「友達じゃないわ。そもそも私と関わろうなんて変な奴いないわよ」

「魔理沙は?」

「それは──」

 

 

 

 

 ふと、初めて魔理沙と出会った日のことを思い出す。あれは確か魔法の森で妖怪退治をした時だ。

 

 

 たまたま近くでキノコ狩りをしていた魔理沙に勝負を挑まれて、仕方なく相手した。弾幕の腕は未熟だし隙だらけ、おまけにその避け方はギリギリで危なっかしいような、お世辞にも華麗とは言えないような代物だった。

 

 けれど霊夢を何より苛立たせたのは、そんな中でも魔理沙が楽しそうにしていることだった。

 

 

 

 

 

 

 弾幕の何が楽しい?

 

 

 

 

 自分とはかけ離れたその弾幕への姿勢に、自分がひどく制限され抑圧された世界にいる気がして。おもわず衝動のまま最大火力の弾幕を放ってしまった。

 

 

「──あ」

 

 

 人に向ける火力ではない。まずい、そう思ったのも束の間、土煙から現れた魔理沙は笑顔で言ってのけた。

 

 

「強いなあ。だが、私のマスタースパークで相殺できないほどじゃなかったな。次は勝つぜ」

 

 

 

 次の日の修業はあまり集中できなかったことを覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──魔理沙は友達じゃないわ。庇護対象よ。だいたいあんな弾幕でよく妖怪退治に参加しようなんて……」

 

 

 

 

 

 霊夢の話を聞きながら南久阿は思った。うちの子はツンデレだった、と。

 

 

「何か言いたげな顔ね」

「気のせいだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧雨魔理沙が求めるのは純粋な火力である。それだけに、紅魔異変の日見た南久阿のスペルカードらしきものが目に焼き付いて離れなかった。こういう時直接聞いてもいいのだが、魔理沙は最近新しくできた友人の元へ行くことを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんの用かしら」

「パチュリーさ、神話の本とか持ってないか?特に日本神話」

「おとぎ話が好きな年齢には見えないけど」

 

 

 紅魔館図書館の主は本から目を離し、溜息をつきながら重い腰を上げた。

 

「そもそも私たちは日本の外から来たのだから、日本神話なんてないわ。せいぜい……こんなものね」

 

 

 パチュリーは数冊魔理沙に渡して読書に戻る。魔理沙は適当な椅子を探して自分も情報収集を始めた。しばらくはただページをめくる音のみが響く。

 

 沈黙を破ったのも魔理沙だった。本を置き、背伸びする。

 

 

「……まあ、そりゃ載ってないわな」

「貴女が言っているのはあの南久阿という神性の話かしら?」

「そうだぜ、あんな弾幕使えたら強いと思うんだが……そういや、魔方陣使ってたな」

「詳しく」

 

 

 魔理沙はいい笑みを浮かべた。

 

 

「教えてやってもいいが、代わりに本を貸してくれ」

「仕方ないか……いいわ。私に許可を取ってくれれば貸してあげる」

 

「契約成立だ。とはいっても別に大した話じゃなくてな、南久阿が作った蜘蛛の巣が魔方陣の役割をしていたみたいなんだ。私とレミリアはそれに魔力を流し込んだだけ」

「その糸は?」

「消えたよ、跡形もなく」

「ふむ……正しく生物的な蜘蛛の糸ではなく神力で編まれたもの?すると……」

 

 

 パチュリーはいくつか紙を取り出し書き込んでいる。魔理沙はチャンスだ、と椅子を離れ図書館を物色し始めた。というのは、これほどの魔導書が揃う図書館であれば『禁書』、あるいはそれに準ずるものがあるのではないかと考えていたからだ。

 

「私が図書館の主なら……そういうののために隠し部屋を用意するぜ。ここにもあるかもしれないな」

 

 

 

 うろつくこと数分。一つの本棚を物色し終えた魔理沙はふと横を見た。何か黒いものが通路の床に落ちている。

 

 

 近づいてみるとそれは蜘蛛の死骸だった。更に奥に何か見える。

 

 近づいてみるとそれは猫の死骸だった。更に奥に何か見える。

 

 近づいてみるとそれは蛇の死骸だった。更に奥に何か見える。

 

 近づいてみるとそれは烏の死骸だった。更に奥に何か見える。

 

 近づいてみるとそれは■■の死骸だった。紅白の巫女服を着ている。更に奥に何か見える。

 

 近づいてみるとそれは確かに本だった。拾い上げて表紙を見る。かすれた文字の中で辛うじて『螺』の文字が読み取れた。

 

 

 ふと前を見る。あそこに転がっているのは、自分の────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──理沙!魔理沙!」

「…………ん。う?私は、一体」

 

 

 私は、何かを、見たはずだ。何か見落としてはいけないものを。

 

 

 

「貴女、まだ人間なのだからあまり過剰に魔力を使いすぎないように。限界を超えれば削れるのは自分の命だってことくらいわかっているはずよ」

「魔力を使った?私がか?」

「今紅魔館には貴女以外にいないでしょうが、星に由来する魔法を使う魔女なんか」

 

 

 

 

 そのあともしばらく探したが南久阿に関連しそうなものは見つかることはなかった。魔理沙は礼を言い家に帰って、いそいそと()()()を広げた。本題とは別に役立ちそうな魔法が載った魔導書を数冊借りてきたのだ。

 

 

「えーと、『現代を生きる神秘のための偽装魔術』、『妖力変換魔方陣について』、『日と星と月による天然魔法』、えーと……る、何とか、城本伝。何だこれ」

 

 

 

 

 

 

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