バンドメンバーが決まり、その次の土曜日。
集まって練習しようと思っていたのだが…
「「「「…」」」」
かれこれ2時間ぐらい沈黙が続いている。
それにしびれを切らした勝己が床をダンッ!と叩き叫ぶ。
「なぁんで俺の選曲がダメなんだよ!頭おかしいのかてめぇらこらぁ!」
それに俺は返す。
「そんなこと言ってるけどよ、勝己。勝己の選んできた曲全部エゲツない歌詞ばっかじゃねーか。いくら音で殺るっていっても限度があるよ」
俺の意見に同調したのは芦戸だ。
「しかもデスメタルだし、それに合わせて踊るなんて無理だし」
「クソが!」
勝己はそう言って席に座りなおす。
「ウチの選んだ曲は一ヶ月で覚えられるか不安だし…」
「私はロックなどの曲は疎いので皆様に従いますけれども…、曲の方が全く決まりませんね…」
「俺も八百万に同意。選曲は響香たちに任せてたからな…」
「我羅琉に同じ」
そんな感じで俺たちは黙っていたのだ。
結局、その日は決まらずに解散となった。
…でその次の日曜日。
「出来たァ!」
という響香の言葉に俺たちは集まり、俺たちは楽譜を見せてもらった。
「…いいんじゃねーの?」
「…やるならとっとと始めっぞ」
勝己もこの反応ってことは納得したみたいである。常闇と八百万も同じみたいだ。芦戸も「これなら!」とアイデアが浮かんできたみたいだ。
「よっし!曲は決まった!ウチらはひたすら!」
「だな!」
「殺る気で練習ぅぅぅ!」
寮に音が響き始めた。
この日から本格的にAバンドの練習が始まった。
◇ ◇ ◇
曲が決まって1週間。練習が終わり、俺たちは共同スペースで休んでいた。
まあバンドの成長具合はというと、まだまだバラバラだがなんとか形にはなり始めてきているというのが現状だ。
そんな中、八百万が母親から送られてきたという幻の紅茶 "ゴールドティップスインペリアル"を淹れてくれたらしい。ありがたくもらうことにしよう。
「ありがと、出久はどうする?」
俺が出久の方を見ると、見慣れたブツブツモードに入っていた。
「アイテムつきオールマイト…、僕としたことがそんなレアマイトを知らないなんて不覚も不覚…」
「ちょっとはこっちを気にしろっと」
俺は軽く出久の頭を叩くと、出久が何かの動画をタップしてしまったようだ。
出久のスマホの画面には紅茶が映し出される。
『諸君は、いつ・どんな時に紅茶を飲む?』
出久と俺はその画面を見る。
『私は必ず仕事の前と後、仕事の大きさによってブランドを選ぶ、そしてこのお茶は高級紅茶ロイヤルフラッシュ、つまりどういうことかおわかりか?』
…そういうことかよ。出久はなんだかよくわからないみたいだが。
そして紅茶のカップしか映ってなかった画面から、男の顔が見える。
『次に出す動画、諸君だけでなく社会全体に警鐘を鳴らすことになる、心して待っていただきたい!』
動画はそこで終わった。
「ジェントル・クリミナル…か」
「え!?知ってるの!」
俺の言葉に出久が驚いた表情を見せる。
「まあな、ネット界ではそこそこ有名だし。一応チェックは入れてる」
「僕はなんとなくしか知らないけど…」
…一応警戒を強めて欲しいって消太さんに伝えておくか。警戒をしておくことに越したことはないしな。何もないのが一番なんだが…。