文化祭当日…その朝。
「そろそろだなー!ソワソワしてきた!」
「明鏡止水、落ちつきましょう上鳴さん」
午前8時45分。俺たち1‐Aの面々は本番を前に衣装に着替え出番を待っていた。
…ただ、一人を除いて。
「緑谷がいねェな」
轟の言葉通り出久の姿がなかった。
「起きた時に通知来てたな。サポート科の発目だったとは思うけど、そいつに頼んでたサポートアイテムができたらしくて、それの慣らしの朝練と買い物で出て行くって言ってたけど…」
「我羅琉、それって何時ごろの話?」
「確か7時半ぐらいだったはず…だな」
芦戸の声に俺は一応スマホの画面で通知を確かめる。俺の言葉に葉隠が不思議がる。
「だったら少し遅すぎない?」
「そうなんだよな…。いくら朝練が長引いたとはいえこの時間になるとは思えないし…」
俺はそう言いながら決断をする。
「…悪ィ、響香。ちょっと出かけてくる」
「え、大丈夫なの?最後チューニングしたいって言ってたじゃん」
その疑問に俺はいつもの表情で返す。
「大丈夫だ、俺を誰だと思っている?」
◇ ◇ ◇
俺は校内で出久の波導を探しながら回る。
森の方から…、戦う波導?
なんでだ、とは思ったがもう一人の戦う波導とそれを手助けしようとする波導。
恐らく二人組の誰かと戦っていると考える方がいいか。
俺は素早くその波導の方向へ向かう。
その途中で、俺はある人と出会った。
「ハウンドドック先生とエクトプラズム先生?どうしたんですか?」
「…我羅琉か、お前こそどうした?」
「実はうちのクラスの出久がなかなか戻ってこなくて。それで疑問に思って波導で探してたんです」
「俺も同じだ。連絡が入ってな。万が一に備えてエクトプラズムの分身も借りてきたんだ」
ハウンドドック先生が後ろに5人ほどいるエクトプラズム先生を指さしながら言う。
「とりあえず、近いです。出久の波導と波導がもう二つ」
「ああ、匂いも近い。その二人は迷子か、怪我人か、それとも愚者か」
俺はそのまま波導のする方へと近づいていく。
そこには一人の男性が小さな女性を抱きしめていた。
そして男性の方が呟いた。
「雄英、自首がしたい」
俺はその声と顔に見覚えがあった。
「ジェントル・クリミナル…。なんでアンタが」
俺に続けてハウンドドック先生が問い詰めていく。
「仲間は!」
「いない」
「その傷と抉れた地面はなんだ?」
「躓き転んでしまっただけだ」
「二人だけか?」
「そうだ」
そのジェントルの言葉に先生が声を荒らげ、問い詰めていく。
「そうだ!?もう一人いるだろ、雄英の生徒が!」
その問い詰めていく中で森の中から出久が近づいてきた。
その中でもジェントルは言葉を続けていく。
「数々の罪を犯してきたが、最大の罪は世間知らずの女性を匂引し、洗脳していたこと。すべての罪は私に、だから相葉愛美には恩赦を」
相葉愛美とはジェントルの裾を掴んで泣き崩れている女性のことだろうか。
その中で現れた出久に対し、ハウンドドックは聞く。
「その傷は、戦ったのか?」
その言葉に出久が口を開く。
「雄英にいたずらしようとしているのが分かって、少しもめました。けれど…、もう大丈夫です」
その時、連絡用の無線機が鳴った。それはスナイプ先生の声で状況確認の連絡だった。それにハウンドドック先生が話す。
「端迷惑な動画投稿者の出頭希望…、俺もわかりませんがとりあえず現時点で緊急性はない、引き続き警戒を続けます」
「詳しいことは署で話せ」とハウンドドックが連れていきながら、ジェントルは言う。
「緑谷出久、それとそこの少年、君もヒーロー候補生なのだろう。私もかつてはヒーロー科にいた、ジェントル・クリミナルはヒーロー落伍の成れの果てだ…、とても言えた義理ではないが君達の想い、届くといいな」