「13号!生徒を守れ!」
ゴーグルをかけて敵を見つめる消太さん。
「何だアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
それは違うな。
俺は感じている。いつものような本物のヴィランであると。
「センサーが反応してねぇのなら、向こうにそういう事が出来る個性ヤツがいるって事だな。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
轟が言う。奇襲というのは敵を混乱させて反撃の猶予を与えずに倒す方法だ。作戦としては悪くはないだろう。
「どこだよ、オールマイト…。せっかくこんなに大勢引き連れてきたのにさ…。子どもを殺せば来るのかな?」
リーダー格と思しき手だらけの男がつぶやく。
もちろん生徒を一人二人殺したところで、オールマイトが察することがなければすぐに来ることはない。まあ、それも織り込み済みなのだろうか。
「13号! お前は生徒を避難させろ。上鳴は学校へ連絡を試みろ!」
「ッス!」
「待って下さい! イレイザー・ヘッドの本来の戦い方だと、あの人数は…!?」
出久が言うが消太さんはこう返す。
「詳しいな緑谷。だが、覚えておけ、一芸だけではヒーローは務まらん!」
教師としての意地か、ヒーローとしての心得からか、ヴィランの群れに自ら飛び込んでいった。やっぱさすがっすね。
目線を隠しているせいで、"誰が消されているのか"わからない。そのせいでヴィランたちは連携に狂いが生じ、その隙をイレイザーヘッドは容赦なく突いていく。
「すごい……! 多対一こそ先生の得意分野だったんだ!」
「緑谷くん! 分析は後だ! 早く避難を──」
「させませんよ」
13号の先導で避難する一団の正面。突如として黒いモヤが広がったかと思うと、それは人の形をとる。
「初めまして、我々は敵連合」
名乗ったのは黒い靄で体を覆った男。大量のヴィランが靄から現れたことから推測するに、おそらくワープ系統の個性だろう。
「僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは…。平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思っての事でして」
あと30年待て。きっと寿命で死ぬはずだ。なお相手側の寿命は考えないものとするがな。
「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃる筈、ですが何か変更があったのでしょうか」
…恐らくただの遅刻だろう。ヴィラン退治とか時間を食ってしまったとか。
道すがらヴィランを退治するのはかまわないが、まずアンタは教師だろ。
「シャラアァァァッ!」
「俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」
爆豪と切島が飛び出すが、効果は無い。どうやら靄で体をつかめないようだ。厄介な個性みたいだ。
「危ない危ない…そう、生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだ! どきなさい2人とも!」
13号の言葉は、少しばかり遅かった。
「散らして、嫐り、殺す」
急激に広がったモヤが、集団を包み込むように動く。
ここは逃げに徹するしかねえか。下手に動いて俺がヴィジランテだと感づかれるのはまずい。だが最低限はしとこうか。
「悪ぃ、尾白!」
「うわっ!」
咄嗟の判断である。俺が見たのは、障子が瀬呂と芦戸を、飯田が砂藤と麗日を庇う動きと、生徒の立ち位置。
体力テストと戦闘訓練で見た能力を素早く思い出し、直接的な戦闘能力を考えて、俺は近くに居た尾白を孤立しかかっていた葉隠の方へ蹴り飛ばす。
次の瞬間、俺たちの視界は黒く染まった。