1話
「…ここならよく見えるか」
風が吹き仕切る中、俺は今廃ビルの屋上にいる。 今回のターゲットとなるヴィランを倒すために準備しておいた場所だ。
…一応俺のヴィジランテ活動を説明しておこう。 基本的に俺がターゲットとして狙うのは常習犯だ。
まだ1回目なら更生の余地があるため精々半殺しにして命は奪わないようにしているが、2回目、3回目となれば話が変わる。
このような者たちはもうそれから抜け出せなくなっているので、殺処分もやむを得ない…というのが俺の考え方だ。
勿論、人殺しは人殺しであるため善ではないが、もう今の俺は人を殺すことに慣れてしまっており、その一線を超えるか超えないかで人は変わる。
俺は壊れているのだ。 俺は世間がもてはやすようなヒーローではない。 ただの殺し屋である。
また、カフェに訪れる人たちからの依頼の場合は、その対象が殺すべきかどうなのかの判断をしてからとなる。 まあ、依頼主の気持ちもあるので大抵は殺すことになるのだが…。
ちなみに今の仕事は後者。 極刑にならなかった犯人を殺してくれ…という依頼だ。 裁判では刑事能力がないと判断されて死刑にならなかったみたいだ。
調べてみると、それ以外にも表立ってないだけで事件も起こしている。 更生の可能性は低いだろう。
…殺るとするか。
俺が変身したのは「百発百中のアーチャー」、やばねポケモン、ジュナイパー。
その後、俺は翼の中に仕込んだ「矢羽」を弦がわりにしたフードの紐部分にセットし、翼を弓として広げ、今…
矢はわずかな隙間を潜り抜け、対象の頭に刺さりそいつは即死した。
俺はもう動かない暗殺対象に向けて合掌する 。俺は誰かを殺した後、絶対にこれだけは忘れないようにしている。 どんな悪人であっても、一つの大切な命であることは変わらない。 また、生まれ変わって新たな人生を謳歌してもらいたい。
俺は元の姿に戻る。
「…任務完了っと。 明日も学校あるし、さっさと帰るか」
再び俺の影は闇に消えた。
◇ ◇ ◇
次の日の朝…
『…昨日、連続殺人犯の〇〇が刑務所内で不審死しているのが発見されました。 現場近くの防犯カメラに不審な人物は映っておらず、警察は原因究明に務めています…』
朝のニュースで昨日のことを取り上げている。 不審死って、メディアはそこまで俺の存在を隠したいのか?
「あー、やっぱりなんかメッセージとか残しといた方が良かったんじゃないの? そっちのほうが有名になるし」
瑠莉姉は笑いながら言ってくる。
「冗談言わないでよ…。 ヴィランが俺が存在してるってことを意識していれば十分。 これで抑止力になれば、俺の役割は終わり。 後はそこらのプロヒーローに任せておけば大丈夫でしょ。」
「まーそれもそっか。 …あれ、学校は?もう始まるころじゃない?」
俺が時計を確認すると、もうすぐ8時半を跨ぐころ。
学校で授業が始まるのは8時50分、ここから学校までは自転車で10分もかからないが、俺はまだ起きたばっかで何の準備もしていない。
「…やべぇじゃん!」
「…がんばれー」
…これが俺たち姉弟の日常だ。
その他用語
・「大義の為の…犠牲となれ…!」…仮面ライダービルドに登場する氷室幻徳(仮面ライダーローグ)の決め台詞。個人的にすごい好き。この場面でぴったりだと思ったので採用。