21話
USJでの一件の後、次の日は臨時休校になった。
そして、その後。1年A組の教室は、すっかり活気を取り戻していた。
「なあなあ、牙那。今日は先生誰来ると思う?」
上鳴から聞かれる。
「誰って…どういうことだよ」
「いやー、だってさ、相澤先生怪我しただろ?だったら朝のホームルーム誰か代わりの人来ないといけねーだろ?」
あー、それね。消太さんのことだからなー。
「でもな多分…」
「多分?」
そのとき、教室の前のドアが開く。
「おはようお前ら」
「「「相澤先生復帰はやぇ! 」」」
消太さんが包帯でグルグル巻きにされてやってきた。
「両腕粉砕骨折だ。婆さんの治癒だと急激に治るから変なくっつき方することもある。よく覚えとけ緑谷」
「はっ、はいっ!」
「そんでもって、まだ戦いは終わってねえ」
消太さんが言う。もしかしてまたマスコミかヴィランか誰か来たのか?
教室の空気は一瞬で緊迫したものになる。
「雄英体育祭が迫ってる」
が、維持されたのは数秒だけだった。学校ぽいなー。
「ちょ、ヴィランに侵入されたばっかなのに、大丈夫なんですか?」
「逆に開催することで、雄英の危機管理体制が盤石だと示す、って考えだ。実際、警備は例年の5倍まで増やすらしい。何より、雄英体育祭は最大のチャンス、ヴィランごときで中止していいイベントじゃねぇ」
まあ確かにそうっすよね。
今の雄英体育祭は、かつてのスポーツの祭典と呼ばれたオリンピックが、個性の登場によって競技人口が激減し下火となった現代で、人々が熱狂するものとして台頭してきた。
個性をフルに使った、ヒーロー候補生たちの競技は見ている者の心を盛り上げる。
全国に中継されるこの催しは、当然プロヒーローも見る。それも、スカウトを目的として。これこそが消太さんの言う"チャンス"だ。
活躍すれば、より名のあるヒーローからスカウトされる可能性が高い。
有名なヒーローはそれ相応の仕事をしている。そこで学べることもその分多くなって、高密度なものになる。
俺としても他のヒーローの活動を見ることは有意義だ。頑張っていかないと。
「開催まで2週間。時間は短いが、より多くの活躍ができるよう、やれることはやっておけ。いいな」
「「「はいっ!」」」
消太さん告げられたビッグイベント。
俺たちがこれまでテレビ越しに見ていた舞台に立ち、更には俺たちの将来へと繋がるとあって、俺たちはやる気に満ちていた。
周りの奴らも浮足立ってしまっていない。そのあたりは、さすが難関校に合格した所以だろうか。
◇ ◇ ◇
そして、その昼休みのこと。
「みんな、私、頑張る!」
麗日が麗らかじゃない顔と声、そして固く握った拳を掲げていた。何があったんだ…。
「麗日、何があったんだろ」
俺と響香は食堂にそのテンションに乗れなかったので逃げてきた。
二人で食べているとき、響香がつぶやいた。
「まあ、麗日って下宿らしいし、親にいいとこ見せたいって思ってんじゃねーの?響香はそういうのあんのか?」
俺は答えそのまま響香に聞く。
「あー、私もあるかな。やっぱいいトコ見せたいよ。牙那は?」
逆に響香から聞かれる。うーん…、
「親っていうよりヒーローに見せたいかな俺」
「なんで?」
「そりゃさ、親に見せるのは当たり前だしそれに…」
「それに?」
「ちゃんとしねえと、うちの姉がウザったいからさ…「私でもできたのに、その程度もできないの?(笑)」ってな感じで煽ってきそう」
それを聞いて納得したように響香は言う。
「あー、あの人なら確かに言いそう…」