その日の放課後。
教室の扉を開けた麗日の眼前には、異常な光景が広がっていた。
「な、何事!?」
ひしめく人の群れ。通行できないほどの群衆がそこに居た。
「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ!」
「制服から見たら…、普通科の奴らか?」
「敵情視察だろザコ。体育祭前にヴィランと戦ったっつー連中見に来たんだろ」
勝己が言う。まあ、大方そんなとこかな。そして相変わらずの口の悪さである。
その前に一人の男子生徒が現れる。
「どんなもんかと見に来たけど、随分とえらそうだなぁ。ヒーロー科ってのはみんなこんなのなのかい」
「勝己だけだからね、それ」
「うんうん」
俺の返答に切島が同意する。
「オイコラ、牙那ァ!後てめえも頷いてんじゃねえぞクソ髪ィ!」
勝己が噛みつく。いつものことだが。
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ。…普通科とかって、ヒーロー科落ちちゃって入ったヤツとか結構居るんだよね。
知ってた? 体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。逆もまた然り、らしいよ。
敵情視察? 少なくとも俺は、調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞ、っつー宣戦布告に来たつもり」
睨みつける男子生徒に対し、勝己もまた睨み殺さんばかりの鋭い眼光を向ける。
そんな中、隣の教室のドアが開く音がする。
「オウオウオウ! 隣のB組のモンだけどよう! 心配して来てみりゃあエラく調子のっちゃってんなあオイ! 本番で恥ずかしいことになんぞ!」
B組から鉄哲が飛び出してきた。またやかましいのが…。
「あ、鉄哲」
「おー、我羅琉。元気そうで何より!」
そんな中、勝己は無視して人混みの中を掻き分けて行く。大方興味がないのだろう。
「…ってオイ! 待てコラどうしてくれんだ! オメーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか!」
そんな言葉に勝己は歩きながら返す。
「関係ねえよ。上に上がりゃ、関係ねえ」
「くっ…! シンプルで男らしいじゃねえか…!」
「オイ騙されんな! 無駄に敵増やしただけだぞ!」
「切島ちゃん、そのうち壺とか買わされそうね」
まあ、大方普通科の奴らは俺たちが気にいらないんだろう。一個言っとくか。
「ん、どうしたんだい」
「…お前たちにはあるのか」
「は?」
「お前たちに誰かの命のために自分の命を懸ける覚悟があるのか、っていってんだよ。ヒーローはそういう仕事だろうが」
俺は続ける。
「俺たちに宣戦布告?上等だよ、俺たちも潰し甲斐がある。俺たちを超えられるもんなら超えてみやがれ。それこそここの教訓は"Plus Ultra"だぜ」
周りに一気に緊張感が走る。
「あとな、本気で勝ちたいならこんなことしてる暇ないんじゃねえのか?少なくとも俺たちよりもお前らの実力は劣る。その実力差をなくすために特訓すべきだぜ。トレーニングルームでも借りて来いよ」
それを聞いた普通科の一団は段々と帰り始めた。
「…精々胡坐かいて待ってろ」
挑発してきた男子生徒が呟く。
「ああ、お前らこそ油断すんなよ」
俺は返す。
そして教室の前はいなくなった。
「あー、なんかすまねえ」
居心地が悪くなった鉄哲が言う。
「構わねえよ。それに舐められるようじゃまだまだだからな」
「相変わらずだねー我羅琉は」
拳藤もB組からやってきた。
「拳藤、なんで来たんだ?」
「だって急にこいつが教室でてったからさ」
「あのー、知り合いなんか?話の流れ的にB組だとは思うけどよ」
上鳴の言葉に二人は言う。
「私は拳藤一佳。"個性"はこんな感じに手を巨大化できる『大拳』」
「俺は鉄哲徹鐵だ。個性は皮膚を金属みてえに固くする"スティール"! ヨロシク!」
「だだ被りじゃねーか! ただでさえ地味なのに! しかもアッチは見た目変わってわかりやすい!」
鉄哲の紹介の後切島が嘆く。まー似てるよな。
「気にすんなよ! 派手に働きゃいいじゃねーか! 」
「…おう、そうだよな!男らしく派手にバトってやるぜ!」
「そうだ、その意気だぜ!」
切島と鉄哲が意気投合したようだ。
それを見た拳藤は呟く。
「…今、この二人が離れてたことに安心したよ…」
「確かにこのタイプ二人は疲れるな…」
俺も拳藤に同意した。