『さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう!』
ミッドナイトは騒ぐ生徒たちを丸ごと無視して進行を続ける。
『さて、運命の第一種目! 今年は…』
とはいえ競技内容が発表されるとあっては、皆固唾を飲んで見守ることになる。全員が中空に映し出された映像に注目していた。
『これよ! 障害物競争!
ルールは至ってシンプル! 計11クラスでの総当たりレースよ! スタジアムの外周約4km、コースさえ守っていれば、"何をしたって構わない"わ! さあ、位置につきまくりなさい!』
短い期間とはいえ、生徒たちは皆雄英の"自由なやり方"を知っている。慌てることなく、スタートゲートの前へと移動していく。
それぞれが心に想いを秘め、今。
『スタート!!』
雄英体育祭が始まった。
◇ ◇ ◇
狭いスタートゲートから続く、同様に細い通路。そこに200近い人間が一度に殺到すればどうなるか…、…分かるだろう。
「狭ぇ!」
「痛ってぇ、押すなって!」
スタート地点こそが最初の"ふるい"だ。これをうまく避けていかなければならない。だから俺はフライゴンに変身して…、
「じわれ!」
地面を叩き割り、その亀裂に数多くの生徒が落ちていき…
轟によって数多くの生徒が穴の中に閉じ込められた。即席冷凍庫が完成したのである。
「何してくれてんだ轟!しょっぱなからエグイ妨害になってんじゃねぇか!?」
「お前のせいでもあるだろ…」
そんなことを言ってると周りから声が聞こえてくる。
「そううまくいかせるかよこの野郎どもが!!」
「甘いですわよお二人共!!」
「うおおおおおおおッ!!こんな程度で止まるかァァ!!」
それぞれ勝己、八百万、鉄哲。やっぱこの程度じゃ止められないか。
『さーて、実況はこの俺、プレゼント・マイク! 解説にはイレイザーヘッドが来てくれたぜ!』
『無理矢理呼んだんだろうが』
二人のヒーローによる実況と解説が始まった。わちゃわちゃしてんなオイ。
『さあ、まずは手始め第一関門! ロボ・インフェルノ!』
「懐かしいな。入試の時のお邪魔虫か」
「…一般入試用の仮想敵ってやつか。折角ならもっとすげえ用意してもらいてえもんだな…!」
振るわれた轟の腕に追随して、地面から昇る冷気が巨大な機体を包み込み、凍りつかせてしまう。
「やるな、轟。じゃあ俺もっと!」
俺はもう一つの仮想敵に向かって攻撃の体制をとる。
「ドラゴンテールッ!」
俺は尻尾を思いきりぶつけ、仮想敵を他の奴らがいる方向に吹っ飛ばす。
『おおー!我羅琉、豪・快!あのデカブツを一発で吹っ飛ばした!』
『確か今のは相手を吹っ飛ばしてダメージを与えて、なおかつ相手をその場所から強制退場させる技だな。応用が効きやすい』
◇ ◇ ◇
『オイオイ、第一関門チョロいってよ! それじゃあコイツはどうよ! 落ちればアウト、それが嫌なら這いずりな! ザ・フォール! …って、我羅琉そのまま空中飛んで行っちまうぞ! なんかもうアレだな、ズリーな!』
『オイ、真面目に実況しろ』
二人のわちゃわちゃ感が伝わってくる実況を聞きながら俺は順調に進む。
が、事はそう簡単には進まない。障害を無視してひた走る俺をを轟がしっかりと追いかけ、更に。
「待ちやがれ牙那! 半分野郎!」
「勝己かよ。厄介だな」
「行かせねえ」
勝己から爆撃、轟からは氷が放たれる。
「あっぶねなオイ!」
俺はギリギリ避ける。ここに来るまでにりゅうのまいで素早さ上げといてよかった。氷は今の俺にとって天敵だ。くらいたくはない。
そして俺たち3人は並走のまま最後の関門、第三関門へともつれ込む。
「…何かあるな」
俺は妙な窪みに気付く。
「気づきやがったか!最終関門! 一面地雷原! 怒りのアフガンだ! 地雷の位置はよく見りゃわかるようになってっから、目と脚酷使しな! ちなみに地雷は威力控えめ、だが音と見た目はド派手に作ってあるから失禁必須だぜぃ!』
『人によるだろ』
そんな声が聞こえたが、
「ま、上を飛べば関係ねーか!」
「待てやコラ、牙那!お前だけが飛べると思ってじゃねえぞ!」
俺と勝己は関係ないようにその上を飛んでいく。しかし後ろから大きな爆発音が響く。
『後方で大爆発! 何だぁ、あの威力! 偶然か、故意か! A組緑谷、爆風で猛追! っつーか、抜いたぁぁっ!』
仮想敵の装甲板に乗り、爆風で一気に先頭まで躍り出た出久。だが、それを黙って見送るような者その中には居なかった。
「デク! 俺の前を行くんじゃねえ!」
「うっそだろ出久ってやっべ!」
「後続に道作っちまうが、そうも言ってらんねえか」
『元先頭の3人、足の引っ張りあいをやめて緑谷を追う! 人は共通の敵が現れれば争いを止める! 争いはなくならないがな!』
『何言ってんだお前』
さらにその後出久が動く。空中で器用にくるりと前転した出久は、自身が乗る装甲板に繫がるケーブルを掴み、勢いそのままに地面へと振り下ろす。爆風に乗っていける程に面積の広い装甲板は、つまり接地面が大きい。複数の地雷をまとめて反応させることができてしまう。
「なるほど、そう来るか!」
俺たちの前で大爆発が起こる。なかなかの規模だな。
俺は爆発からの影響を最小限に抑え、そのまま向かう。出久はもうずいぶん前に進んでいた。1位は無理かな。
「まー後ろにでも妨害しときますか」
俺はスタジアムの入り口でこの技を使う。
「いわなだれ!」
入り口を落ちてきた大きな岩で塞ぐ。勝己とか轟ならそこまで苦にしないだろうが少しぐらい時間は稼げるだろう。
俺はそのままゴールし2位で障害物競走を終えた。
◇ ◇ ◇
『予選通過は上位42名! 残念ながら落ちちゃった人も安心なさい。見せ場は用意してあるわ!そして次はいよいよ本選、キバリなさい! 第二種目は……コレよ! 騎馬戦!』
発表された種目に、どよめきが走る。特に、団体競技で個性を使いづらい上鳴や芦戸と、明らかに良からぬことを考えている峰田から。
『あなたたちには2〜4人で自由にチームを組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じ。ただひとつ違うのは、先程の結果に従い各自にポイントが割り振られること!』
入試みたいなポイント稼ぎ方式か。まあ分かりやすいな。組み合わせによって大分変ってくるなこれ。
『与えられるのは下から順に5ポイントずつ。42位は5ポイント、41位は10ポイント、って具合にね。そして、上を行く者には更なる受難を。予選通過1位、緑谷出久くん! 持ちポイントは、1000万! 上位のヤツほど狙われる、下剋上サバイバルよ!』
「……イッセンマン?」
それを聞いて周りの視線が一気に出久の方を向く。それひとつでトップを獲れるのならは注目もされるだろう。
ギラついた視線の数々に、出久の表情は固まり、背中を冷や汗が流れた。
フライゴンを選んだ理由…まず地割れを使えるポケモンで絞り、かつ空を飛べるポケモンってことで。後キバナの主力組のうちの一匹でもあるってこと。それとデザインがいいです。