長い間をおいて遂に始まった最終種目『一対一による本気の勝負』。
その始まりといえる第一試合は出久と唯一普通科から出場を決めた心操との対決。
これまでのような特殊なルールで行う競技と異なり、純粋な戦闘能力による勝負である以上ヒーロー科として訓練を積んでいる緑谷に軍配が上がる─最初はそう思っていた。
「…とんでもねぇな」
表情1つ動かさず固まった出久とそれを無表情で眺める心操を見て俺はポツリと呟く。
"洗脳"
自身の声に返事をした者をコントロール下におく対人間で非常に強力な個性である。
それが心操の"個性"だった。
昼休みに尾白から予め注意するように言われていたようだった出久であったが心操の巧みな挑発につい乗ってしまい、既に身体の動きをコントロールされ今はゆっくりと場外に向かっていってしまっている。
「…こんなんで終わらねえよな、出久」
始まる前、轟の覚悟を前に毅然と立ち向かった男がこんなところで負けるなと思うも出久の足は止まることなく場外へと向かい続け─、
ドカァン!
というところだったが大きな衝撃波が起こった。
場外へ踏み出したその足を出久は"個性"を暴発させることで洗脳を破ることで止めることに成功したのだ。
そのまま心操へ接近し彼の言葉に応えることなく心操の身体をを場外へと落とした。
「出久お疲れー」
「あ、ありがと…」
観客席に戻ってきた緑谷に声をかけたがその顔は疲労に満ちていた。
自らの"個性"故に入学試験で仮想敵を倒すことも出来ず夢に手を伸ばせないことに苦しんだ同い年との戦いはやはり重たかったのだろう。
「まぁ、気持ちは分かるが今は次の試合に注目しろよ、お前が次に戦う相手なんだからな」
そう出久に促したが…第二試合は一瞬で終わってしまった。
開始直後に不意打ちの場外狙いを図った瀬呂だったが轟の圧倒的規模の凍結により氷山に捕らわれその動き全てを潰される。
瀬呂も策も動きも間違ってなかっただろう。しかし純粋な実力差に真正面からねじ伏せられた瀬呂に会場からドンマイコールが送られる。
「反則でしょあんなの……」
前の席に座っていた響香は声を漏らす。
まあ、力で正面突破ができる俺や勝己、出久みたいなやつでないと突破は難しいだろう。
◇ ◇ ◇
轟が形成した氷山がやっと片付いて続く第三試合、飯田と発目の戦いになった。
ヒーロー科とその他の科である者との戦い、それは第一試合で見た想定外の展開になるやもと思い見ていればある意味ではその通りとなった。
飯田が発目に言いくるめられ装着してきた数々のサポートアイテム、それらを売り込む為の広告として飯田は延々と利用されてしまっている。
一応の勝利と精神的敗北、飯田には気の毒だがある意味これがサポート科の戦いなのかもしれないと思い、とりあえず飯田に合掌しておく。
次は俺と上鳴の戦いだ。アイツの電気を無効化するか利用させて貰うかどっちにしよっかな~。
俺は"わるだくみ"の笑みを浮かべながらフィールドに向かった。