36話
体育祭から2日後。
「超声かけられたよ、来る途中」
「私もー! ジロジロ見られて恥ずかしかったー」
A組の教室では、思いの外有名になってしまった自分たちという状況に興奮を隠せず、普段よりも賑やかだった。
「そういや牙那って瑠莉さんになんて言われたの?」
そんな中響香が俺に聞いてくる。
うーん…、
「『私の弟なんだから当然よね』って言われた…、その後色々改善点言われたし…」
「やっぱりね…」
響香は苦笑いをする。
周りもワイワイと話し込む生徒たちだったが、チャイムが鳴ればすぐさま自席へとつく。
消太さんはそういうのを嫌う。クラスの全員はそれを知っているのだ。
「…おはよう」
いつもと変わらぬ覇気のない消太さんが教室に入れば、元気よく挨拶の合唱が返る。
「相澤先生、包帯取れたのね。よかったわ」
「婆さんの処置が大げさなんだよ。もっと早くに取れてたんだがな。……んなもんより、今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」
特別。その言葉に、一同に緊張が走る。
「"コードネーム"、ヒーロー名の考案だ」
「「「胸膨らむやつ来たー!!」」」
だが、やはり一瞬だけであった。
楽しそうにはしゃぐ生徒を、相澤は個性を発動させる素振りで、こちらも一瞬で鎮める。
「というのも、先日話した"プロからのドラフト指名"に関係してくる。指名が本格化してくるのは、経験を積み即戦力と判断される2、3年から。つまり、今回来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までに興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてのはよくある」
「大人は勝手だっ……!」
「頂いた指名がそのまま、自身へのハードルになるんですね」
峰田と八百万が言う。まあそんなもんだよ。
「そ。んでその指名結果がこれだ」
黒板に投影されるのは、指名数のグラフ。
結果としては俺が5000越えでトップ、そこから1000程空いて轟、勝己。さらにそこから空いて1000以下の大多数。まあ順当といったところだろうか。
「つか、2位3位逆転してんじゃん」
「表彰台に拘束されたヤツとかビビるもんな」
「ヒビってんじゃねーよプロが!」
勝己はこんなだが周りの反応は人それぞれ、悲喜交々だ。
「これを踏まえ、指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。…お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りのある訓練にしようってことだ」
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきたぁ!」
周りが騒ぐが消太さんがいつものトーンで続ける。
「まあ仮ではあるが、適当なもんは……」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!」
「「「ミッドナイト!!」」」
そういって、消太さんの言葉を引き継いで教室に入ってきたのは、ミッドナイトさんだ。
「この時の名が世に認知されて、そのままプロ名になってる人多いからね!」
「まあそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん。将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まり、そこに近付いていく。それが"名は体を表す"ってことだ。オールマイトとかな」
確か消太さんのヒーロー名はマイク先生に決めてもらったとか言ってたな。それでいいのかとは思ったけど…。今となってはそれで定着してるからな…。