職場体験でワイプシの皆さんから学んだことは有意義なものだった。
まずは災害救助のやりかたである。救助訓練は学校でも何回かしたが、それは再現だ。
実際に、山の天気はよく急変する。ずっと晴れだとか雨だとか固定されていることはめったにない。そのためスピーディーかつ丁寧な救助が求められる。
天候に気をつかいつつ、かつ被救助者を安心させる。これは経験によって培われていくものだ。
俺は話にしっかりと耳を傾け、メモを取って行った。
午前中の座学が終わった後は虎さんとの特訓だ。虎さんの”個性”『軟体』は格闘タイプの技だとダメージを与えにくい。
こういう相手にはリレーして戦い方をエスパーやゴーストに変えてもいいがそれは逃げだ。
変身には体力を要するし、その後に起こるラグのことも考えるとできる限り一つに絞った方がいい。
ワイプシのメンバーとは余り面切って戦ったことがなかったがさすがの強さだ。
俺は指摘される癖などを直していきつつ時間を過ごしていった。
◇ ◇ ◇
晩飯を食べた後、俺は気になる波導を感じた。ちなみに個性の影響で俺は大雑把な波導なら感じ取ることができる。基本的にはオフにしているが。
俺が感じたのは憎しみの波導だ。おそらくは洸汰が発している波導だろう。
マンダレイから聞いた話によると、洸汰の両親はプロヒーローとして活躍していたウォーターホース。市民をヴィランから守って殉職したヒーローらしい。
俺の考えとしては二人はヒーローとして最後までヒーローらしかったと言えるが、当時3歳の子供がいきなり両親を失ったのだからそれは相当なものだろう。あんな態度になるのも仕方ない。
でも、それを憎んでちゃ今のこの世界は無理だ。瑠莉姉に頼めば何とかしてくれるかもしれないが今の社会を楽しんでいる瑠莉姉がする可能性は0だろう。まあ気まぐれなところもあるが。
これは俺みたいな経験していないやつが言ったところで意味がない。同じような体験をしてないとその考えを変えることは不可能に近い。
「で、そっちはどうよ出久」
「うん、こっちも順調だよ」
俺は今出久と電話をしている。出久が行ったのはグラントリノというオールマイトの教師だった人らしい。オールマイトから行かないと怒られる(オールマイトが)と言われたらしい。
「フルカウルも大分使えるようになってきたよ。コントロールも大分できるようになってきたし」
「そうか、それならよかったよ。あ、そうだ出久」
「何?」
「お前保須に行くことあったら警戒してくれ」
「…ヒーロー殺しがでるから?」
今、保須で”ヒーロー殺し”ステインの目撃情報が多い。ちなみに俺たちのクラスの中で今の保須に行ったのは飯田だ。おそらく兄のインゲニウムの敵討ちが目的だろう。
「ああ、俺は結構距離あるしヒーローの担当が違うから行けねえけど、アイツの実力は本物だ。インゲニウムも倒されてるしな」
「分かった。行くかどうかはわからないけど警戒しとくよ」
「頼んだ」
俺は電話を切り明日に備えた。