次の日。事務所一帯は大雨に見舞われていた。
本当なら今日は外での実地研修の予定だったのだがなくなることに。ワイプシの4人も警戒感を強めている。
俺はというと、昨日に引き続き虎さんに相手をしてもらっての特訓である。虎さん曰く、来た時よりかは動きが良くなっていると言われた。
ただでさえ俺という客を受け入れてもらって、今の危険な状態である。俺は彼女らに余り俺には気を遣わないでくださいと言っておいたのだがそこはプロヒーローらしく両立している。
そんな中ある一報が入った。近くで大規模な土砂崩れが発生したとのこと。多くの住民が巻き込まれたとの情報もあり、俺たちはそこに急行することになった。
◇ ◇ ◇
現地でのワイプシメンバーの動きは凄かったと言う外ない。
ラグドールが被災者を見つけ、マンダレイが指示し、虎さんが狭いところに入っていき、ピクシーボブが土を操って道を作る。完璧な連携プレーだ。
俺は向かわせてもらったが免許はまだ持ってないし、ワイプシメンバーには俺が「ドラゴストーム」だとは言っていないので表立って活動はできないので後方支援が主だ。
救護所で運ばれてきた人たちに対して事務所で教えてもらったトリアージと応急処置をしていったが問題が一つあった。
怪我を治すことができないのだ。ワイプシのメンバーは治癒系の個性は持っていない。だがそれでも今入ってきた情報によればこのあたりは孤立状態になっており、救助隊が到着するのが遅れるというものだった。
「マンダレイさん、何とかならないんすか?」
「そうは言ってもね、そういえばキバナは出来たりできるんだっけ?」
「まあ、軽い程度ならっすけどね」
「…分かった、ワイプシの名において個性を使うことを許すよ」
「ありがとうございます」
俺は変身態勢に入る。
「Transform,タブンネ」
俺が変身したのはヒヤリングポケモンのタブンネ。回復系の技を使うことができるポケモンだ。
俺は被災者の皆さんの体に手をかざし波導を送る。
「いやしのはどう」
「いやしのはどう」は相手を回復させる技。さすがに大怪我になると対処できないが、骨折程度までなら治すことができる。
その人には「ある程度は治させてもらいましたけど病院でも診てもらってください」と念押ししておいた。俺はその道のエキスパートではないので知識は乏しい。あくまで俺のは応急処置であり完全に
治したわけではない。
それでも感謝されるのは嬉しいものだ。それでこそヒーローを目指す意味があると思う。この笑顔がヒーローにとって最大の報酬だ。
救助隊がやっと到着し、引継ぎをしているときにピクシーボブから声をかけられた。
「どうだった、初仕事?」
「まだまだって感じしましたよ。実際の救助なんて滅多に経験できることじゃないですし」
「そうだよね、私たちも始めたころは全然だったよ。そういえばキバナはどっちになりたいの?バトル系のヒーローかそれとも救助系のヒーローか」
「そんなもん決まってるじゃないっすか」
「ん?」
俺は言う。
「戦って救助する、救助して戦う、両方できる、なんでもできるヒーローっすよ。できなくて誰かが命を落とすのならそれはヒーローって呼べませんから」
俺は笑って言う。ピクシーボブも笑い返してくる。
「ネコネコネコネコ、やっぱりね。君ならそういうと思った!数年後が楽しみ!つーばつけとこー!」
「ちょおっと、ピクシーさん!?」
そんなこんなの後、俺たちは帰宅の途についた。