42話
朝のホームルームで消太さんが言う。
「えー、そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが1ヶ月も休める道理は無い」
教壇に立つ相澤の言葉に、どよめきが起きる。
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「知ってたよー! やったー!」
休みがなくなるなどと言われれば普通の学生なら落胆するのかもしれないが、ここはヒーロー科だ。誰もが自身を高める機会を喜んでいた。俺は家でいたいけど黙っとくか。
「肝試そー!」
「風呂!」
「花火」
「風呂ぉっ!」
「カレーだな」
「行水!」
「自然環境ですと、また活動条件が変わってきますわね」
「湯浴み!」
「……峰田黙ってろ」
「はい」
己の欲望を声高に叫ぶ峰田に、ついに消太さんが釘を刺す。他の生徒たちも口を塞ぐ。
「…ただし、その前に行われる期末テストで赤点だった奴は、学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!」
そんな顛末が朝のホームルームで繰り広げられた。
…その後。
「「まったく勉強してねー!」」
悲壮感漂う上鳴と、なぜか笑顔の芦戸が異口同音に叫んだ声が教室に響く。
中間テストの成績は20人中、芦戸19位、上鳴20位である。
一応、彼らの為に補足しておくと、あくまでA組の中での順位であり、2人とも学力自体は高いほうだろう。
単に、ヒーロー科の授業が途轍もなく速く、結果的に試験範囲が異常に広いのだ。
…一応言っておくと俺は2位である。
「体育祭やら職場体験やらでまったく勉強してねー!」
「いやー、あっはっは!」
「……の割には芦戸、随分と笑顔だけど」
「なーんかもー、笑うしかないよね!」
「ああ重症か、もう」
芦戸の顔は笑顔から一転して悲しい表情になる。
「お2人とも、座学ならば私、少しはお力添えできるかもしれません…、実技の方はできるだろうかわかりませんが」
「「ヤオモモォ!!」」
そんな二人に助け船を出したのはクラス筆記トップの八百万だった。二人にとっては救いの女神だろう。
「お2人じゃないけど、ウチもいいかな? 二次関数、ちょっと応用で躓いてて」
「わりい、俺も! 八百万、古文わかる?」
「俺もいいかな」
上から響香、瀬呂、尾白である。
「あー、じゃあ俺もいいか八百万。ちょっと物理の発展問題で相談したい問題あるんだ。それに二人いたら教えるのも大分楽だろうしよ」
そして、頼られたのが嬉しいのか八百万の表情がパッと明るくなる。
「良いですとも!」
その後八百万は、講堂を用意する、お紅茶は何にするといった貴族が使うような単語を連発しながら聞いてきたがそこにいた全員はあまり分かっていなかった…というか聞けなかった。
理由は八百万が喜びの余りものすっごいプリプリしていて、周りの全員が「何このピュアセレブ…」と思ったほどだ。そしてすっごい可愛かったとだけここでは言っておこう。