筆記試験を終え、遂に演習試験がはじまる。
八百万の勉強会による成果を発揮して俺たちのテンションは上がっていたが、コスチュームを纏えばその表情は引き締まる。
「それじゃ、演習試験始めるぞ。当然この試験にも赤点はある。林間合宿行きたきゃ、みっともないヘマはすんなよ」
そう言った消太さんの背後には、大勢の教師の姿があった。
「先生多いな…?」
「これ牙那の予想通りなんじゃ…」
葉隠と響香の言葉に、生徒全員が嫌な予感を覚える。それを見てとったのか、消太さんの口元がニヤリと歪む。
「諸君なら情報を仕入れているとは思っていたが、ちゃんと油断せずにいたようで嬉しいよ、俺は」
「そう! 今年からはより実戦的な内容に変更しちゃうのさ!」
相澤の首に巻かれた捕縛布からひょこりと顔を出したのは、ネズミなのか犬なのか熊なのか、よくわからないながら、"ハイスペック"の個性を発現させた根津校長である。
「校長先生!?」
「…ずっとそこでスタンバってたんですか?」
「ツッコんじゃだめさ、我羅琉君!…これからは、より対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ。というわけで。諸君らにはこれから、二人一組でここに居る教師1人と戦闘を行ってもらうよ!」
校長先生の言葉に、俺たちの間に緊張が走る。
しかし、動揺は無い。
「おや、これも予想されていたかな?」
「…最悪の可能性ですが。」
「ソイツは何よりだ。更に嬉しいお知らせだが、既にペアの組み合わせと対戦相手は決定している。存分に君らの弱点を攻め抜くつもりなので、喜んで構わんぞ」
「ルールは簡単。30分の制限時間内に、"特製のハンドカフスをつける"もしくは、"どちらか1人が演習ステージから脱出する"だ」
そのルールの意図にいち早く気付いたのは、ヒーロー殺しに出会った3人。
「実力差が大きいなら、逃げて応援呼ぶ方が懸命、ってことですか」
「轟の言う通り、その辺の判断も求められるワケよ! 何せ相手はチョー格上!」
「格……上……? あんまマイク先生が活躍してるイメージ無いんスけど」
「ダミッ! ヘイガール!」
響香のさりげない言葉の槍に貫かれて声を荒げるプレゼントマイクを華麗に無視して、消太さんの説明は続く。
「まあ、普通なら逃げ一択だ。そこで、教師側は、体重の約半分ある重りをつける」
「戦闘を視野に入れさせる為か。……ナメてんな」
「さて、そいつはどうかな。……じゃ、発表していくぞ」
そして、明かされた組み合わせは次のような具合だ。
一戦目。切島、砂藤対セメントス。
二戦目。蛙吹、常闇対エクトプラズム。
三戦目。飯田、尾白対パワーローダー。
四戦目。轟、八百万対イレイザーヘッド。
五戦目。俺、麗日対13号。
六戦目。芦戸、上鳴対根津校長。
七戦目。口田、耳郎対プレゼントマイク。
八戦目。障子、葉隠対スナイプ。
九戦目。瀬呂、峰田対ミッドナイト。
十戦目。爆豪、緑谷対オールマイト。
「それじゃあ、早速始める。切島と砂藤はバスに乗れ。他はモニターで参考にするなり作戦を練るなり、好きにしろ」
それだけを言い残し、セメントスは2人の生徒と共にバスへ、残る教師たちもそれぞれに去って行く。
「牙那君、どうする?」
俺とのコンビになった麗日が俺に近づいてきて言う。
13号先生か…、少なくとも波導弾とか遠距離で攻撃する技は使えねえしな、ちょっと考えよう。