A組の面々が下に落とされた後、上に残った5人は先に宿舎に戻ってきた。
バスに残されたA組の面々の荷物を降ろして待つこと3時間。
リミットの12時半を過ぎたが来る気配は全くない。
マンダレイさんとピクシーさんが近くにいないことを見計らって俺は消太さんに話しかける。
「消太さん、やっぱり急すぎるんじゃないですか?」
「無茶は承知だ。ヒーロー仮免、ヴィランが活性化してる今、俺たちがあいつらを守ってやるのも限界がある。自分の身は自分で守れるようになった方がいい。お前も分かってんだろ」
「確かにそうですね、ヴィラン連合の台頭、ステインの思想の伝播…、今までだったら結構単純な奴多かったですけど、考えてくるヴィランも多くなってきましたよ」
最近のヴィランの数は増えている。特にステインの事件の後から。それだけステインの思想に魅了された奴が多いってことだろう。
「やっぱりか」
「後、〆たヴィラン達から聞き出したんですけど、ヴィラン側にもブローカーってのがいるみたいです」
ヴィランのブローカー、裏の世界の人間にとっては有名らしい。
「ヴィランのブローカーか、俺も一度聞いたことがあるな」
「消太さんもっすか」
やっぱ消太さんも知ってたか。
「あの時は噂だけだと思ったが本当にいるんだな」
「ええ、そいつがもしヴィラン連合と連携してるとしたら…」
「考えたくもないな、恐らく次くるならもっと鍛えてきて、一筋縄じゃ行かないだろう」
「ええ、俺ももっと上達しないといけませんよ」
◇ ◇ ◇
空が段々と赤く染まってきて、ようやくA組の面々がやってきた。
各々の体はまさに満身創痍の状態だった。ほとんどの面々が続々と地に倒れていく。
「お昼は抜くまでもなかったねえ」
「何が…3時間ですか…」
「腹減った…死ぬ…」
「悪いね。"私たちなら"って意味なの、アレ」
「ちなみに俺でも5時間かかったからなー」
マンダレイさんと俺が言う。だがそれに答えられる奴は多くない。
「ねこねこねこ。でも正直、もっとかかると思ってた。私の土魔獣が簡単に攻略されちゃった。いいよ、君ら。…特に、そこの4人。躊躇の無さは"経験値"によるものかしらん?」
独特な笑い方でピクシーさんが指さす先に居るのは、飯田、轟、爆豪、それに出久。
勝己はもとから観察眼が鋭い、他の3人もステインとの遭遇を経験していたりと戦闘経験が豊富なやつらだ。
「3年後が楽しみ! ツバつけとこー!」
「うわぁっ!?」
「何しやがる!」
ピクシーさんが物理的に4人にツバをかけていく。それを止められる余裕のあるやつはいない。
その後、マンダレイが洸汰を紹介したとき事件は起きた。
年端もいかない少年の拳が、出久に突き刺さる。
男性の急所、股間に。
「おのれ従甥! なぜ緑谷くんの陰嚢を!」
飯田が駆け寄った頃には、出久は壮絶な表情で倒れ伏していた。…アレは絶対痛い。
その後、一応大事には至らなかった出久を含めて、夕食で周りの全員が空腹で物凄くおかしなハイテンションになってしまったこともついでに言っておこう。