個性「tfポケモン」   作:W297

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51話

 

 夕食を食べた後、俺たちA組の面々はのんびりと風呂に入っていた。

 

 ほとんどの面々はそれぞれのやり方でリラックスしているが一人は違った。

 

「まぁまぁ…。ぶっちゃけね、メシとかはどうでもいいんスよ…。求められてんのはそこじゃないんスよ。わかってるんスよその辺、オイラァ…。求められてんのはこの壁の向こうなんスよ…」

 

「1人で何言ってんの、峰田くん……」

 

 腰にタオルを巻いたまま仁王立ちする男、峰田である。

 

「ホラ…。居るんスよ、今日び。男女の入浴時間ズラさないなんて、事故。これはもう、事故なんスよ…」

 

 峰田が耳を当てた先からは可愛らしい声が聞こえていた。別に耳を当てるまでもなく普通に聞こえるのだが。

 

「オイ、峰田。馬鹿なことはやめておけ」

 

「そもそも! 君のしようとしている事は己を貶める、恥ずべき行為だ!」

 

 俺と飯田が忠告するが本人は知らん顔だ。

 

「やかましいんスよ…」

 

 なんかやたら穏やかな顔してやがる。

 

「壁とは越える為にある! Plus Ultra!」

 

「速っ!」

 

「校訓を穢すんじゃあないよ!」

 

 瞬きする間に、峰田は自身の個性をもぎって壁に貼り付け、軽々と壁を登っていく。お前、その速さヒーロー活動に使えよ!

 

 峰田の手が一番上にかかろうという瞬間、にゅっと小さい存在が現れる。

 

「洸汰君!」

 

「ヒーロー以前に、人としてのアレコレから学び直せ」

 

「……まったくだ」

 

「子供に言われるのはどうなんだ」

 

 聞こえてきた言葉に男子一同が頷いている合間に、峰田の手が叩き飛ばされる。

 

 手を外されるとどうなるか、言うまでもなく落ちていく。

 

「くそガキィイイィイイ!?」

 

 断末魔…のように聞こえた罵声と共に落下していく峰田を助けようと動いたのは、生憎と飯田だけだった。

 

 まあ自業自得だろう。

 

「ありがと、洸太くーん!」

 

 だが、女湯からかけられた声に振り返ってしまった洸汰がバランスを崩し、落ちていく様を見たのなら黙ってはいられない。

 

 峰田を助ける体制に入っている飯田を除き、周りが救助の体制にはいる。

 

 出久が個性で強化された腕力で飛び込み、しっかりと洸汰をキャッチする。

 

「ナイス緑谷!」

 

「待って、洸太くん意識無い!」

 

 この状況に俺は指示を出す。

 

「出久、絶対に揺らすなよ!その状態で動かすと命に係わるかもしれねえ!プロの力を借りるぞ!」

 

「了解!」

 

「常闇、ダークシャドウで出久ごと運べ!」

 

「承知!」

 

「瀬呂と砂藤、入り口まで通路の確保!」

 

「分かった!」

 

「おうよ!」

 

 しっかり出久が脱衣所をを出て駆け出していくのを全員が確認する。

 

 そして俺は今回の騒動の元凶になった気絶をした一人の男の前に行く。

 

「Transform,カラマネロ」

 

 俺はぎゃくてんポケモンのカラマネロに変身する。

 

 こいつは俺の変身できるポケモンの中で最も強力な催眠術使いだ。

 

「さいみんじゅつ」

 

 俺は峰田に対し催眠をかけておく。とりあえず今日の晩の間は苦しみ続けるだろう。

 

「なあ、我羅琉、アイツにどんな催眠かけたんだよ、聞いたことないようなうめき声だしてるぞ」

 

「まあ分かりやすく言えば…、自分の目の前にオカマでデブでブサイクな奴がひたすらキスを迫ってくるって感じのやつだな」

 

「「うわあ…」」

 

 一同が引いたような声を上げたが峰田への同情の声はなかった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 翌朝、午前5時30分。夏らしくなってきた今の時期、空は既に明るく、山からは朝日が顔を覗かせている。

 

 うーん、やっぱ気分が清々しいな。まあ流石に早すぎたのか半数近くの生徒は寝ぼけ眼だが。

 

「おはよう、諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。合宿の目的は、"全員の強化"並びに、それに伴う"仮免の取得"だ。具体的になりつつある脅威に対して、立ち向かうための準備だ。心して臨むように。んじゃ、爆豪。コイツを投げてみろ」

 

「え、牙那じゃないんですか?」

 

 切島が言う。最初の個性把握テストの時は俺が投げたのだから当然の質問だろう。

 

「こいつは例外だ、成長度合いが分かりやすいのが爆豪なだけだ。ホラ」

 

 勝己に渡されたのは全員が見覚えがあるボール投げ用の距離測定機能付きソフトボールである。

 

「入学直後の記録は705.2メートル。どんだけ伸びてるかな」

 

「おお! 成長具合か!」

 

「この3ヶ月色々濃かったからな! 1キロとかいくんじゃねえの!」

 

「よっしゃ行ったれバクゴー!」

 

 何人かの声援を受けながら、勝己は肩を回して準備をする。勝己の顔には不適な笑顔が浮かぶ。

 

「んじゃあ、よっこら─くたばれぇ!」

 

 爆発音を残し、ボールが空高く飛んでいく。

 

 物騒な掛け声にも全員が慣れ切ってしまったのだろう。驚く奴はいなかった。

 

「709.6メートル」

 

 そこに出された記録は予想を大きく下回るものだった。余り入学したときと変わってはいない。

 

「約3ヶ月間、様々な経験を経て、君たちは確かに成長している。だがそれは、あくまで精神面や技術面、知識面と後は、多少体力的なものがメインで、"個性"そのものは今見た通りそこまで成長していない。…だから、今日から君らの"個性"を伸ばす。死ぬほどキツいが、…くれぐれも死なないように

 

 消太さんが不敵な笑みを浮かべる。やっべえことになりそうだな、コレ。

 

 

 

 

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