星明かりの下、俺と八百万は森の中を歩く。
「次は何が来るんでしょうか…」
八百万が俺の右腕を掴みながら言ってくる。八百万も肝試しみたいなことはやったことがないらしく、始まる前は凄いわくわくしていた素振りをしていたが、驚かされ続けて折り返し地点では既にこの状態になっていた。
「まあ、そこまで怖いのは来ねえだろ。小大と鉄哲のやつには驚いたがな]
「あれでも十分怖かったのでしたが…」
今回のは心霊現象ってよりいかに相手を驚かせるかだからな。俺的にはそこまでだ。
「我羅琉さんってこういうものの経験ってあるのでしょうか?」
「ないな」
「にしてはやけに落ち着いているように見えるのですが…」
「まあ、経験だよ」
俺の言葉に八百万が返す。
「え、さっきないって…」
まあそうだろう。経験がないって言ってたやつがすぐに経験だと言ったのだから。
八百万の言葉に続けて俺は言う。
「確かに肝試しの経験はねえよ、でも俺、それ以上の経験してるからよ。多少のことじゃ怖いと思えなくってさ」
「…昔、何かあったのですか?」
その答えとして、俺は八百万に対してこう言う。
「…聞きたいのか?」
俺は八百万を真剣な面持ちで見つめる。
「…いえ、失礼しましたわ」
「…そうしてくれた方が俺としても助かるよ、余り話したくはない」
俺はその話からしばらく経った後、森の中のある異変に気付く。匂いが妙な感じがするのだ。こんな感じの匂いはこの辺りでは嗅いだことがない。
…やべえかもな。ちょっとぴり付く感じだ。
「…八百万、今すぐガスマスクって作れるか?」
俺は八百万に伝える。
「え、急にどうしたのですか?作れないことはありませんが…」
「作れんだな?」
俺は再び真剣な顔を八百万に向ける。
「は、はい!」
俺は八百万に向けてこう告げる。
「八百万、緊急事態だ。急いでガスマスクを作ってくれ。命にかかわってくるかもしれねえ」
「わ、わかりました。何が…」
「ヴィランが来た。これで分かってくれ」
俺は最低限の言葉で八百万に伝える。
その言葉に八百万が反応する。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。しかも結構ヤバめのやつっぽいな、毒使いかよ…」
俺はさっきのことを思い出す。確かさっきいたのは…
「泡瀬!出てきてくれ!緊急事態だ!」
俺の声に泡瀬が出てきてくれる。まずはよかった。さっき俺は泡瀬達に驚かされた。そこまで怖くはなかったが。
「が、我羅琉!どうしたんだよ!」
「説明は後だ、今はコレ付けろ!」
俺は泡瀬に八百万が作ったガスマスクを付けながら、泡瀬にも渡す。
「泡瀬、お前って大体B組が隠れてる所ってわかるか?」
「あ、ああ」
俺は泡瀬の返答に続ける。
「八百万、お前は泡瀬と一緒にB組の連中にガスマスクを渡してきてくれ」
「わ、分かりました。我羅琉さんは…」
「俺は葉隠と響香に渡してくるよ、まだそこまで俺たちと離れていないはずだ」
このガスが漂ってきているのが、俺たちが通ってきた方向だ。状況は俺たちより悪いかおしれない。
「八百万、泡瀬、そっちは頼んだ!」
「任された!」
「そちらもお願いしますわ、我羅琉さん!」
俺は二人の声を聴きながら今来た道を一気に駆け戻っていく。頼むから無事でいてくれよ…!