58話
林間合宿が最悪の形で幕を閉じた。
雄英側としては起こる筈がないと思っていたのだろう。まあその通りだとは俺も思う。
もとから合宿先を知っていたのは計画した雄英の教師陣と受け入れたワイプシの4人、後は先に向かっていた俺だけである。
これから分かることが一つある。
…内通者がいるということだ。
教師側か生徒側か、どっちに潜んでいるのかは分からない。でもいることは確かである。
少なくとも俺がこの数ヶ月間で怪しい奴は見当たらなかった。隠れるのがうまい。
俺たちはいくつかの条件をのみ、帰ることが許された。
帰った後、俺は改めて瑠莉姉に特訓を申し入れた。
その後はずっと特訓である。
ある日、葉隠と響香の見舞いに来た時に切島から声をかけられた。
「我羅琉、お前、俺たちと一緒に来てくれないか?」
「何?」
切島が言うことには、勝己を助けるため八百万に受信機を作ってもらい、情報をもとにその場所に行くというものだ。
「お前も爆豪を目の前で攫われて悔しいだろ、我羅琉!まだ手は届くんだよ!」
確かにな…。
「他に行く奴は?」
「確定してるのは轟、後は緑谷と八百万が保留中だ」
切島に聞けば出久の所に見舞いに行ったとき一度提案したみたいだが、みんなには否定されたようだ。
まあ、そうだろう。切島がやろうとしてることは極めてアウトローに近いものだ。
「お前には覚悟があるのか、切島」
俺は切島に向かって言う。そのまま俺は続ける。
「お前がやろうとしてることはヴィランと同じだ。下手すりゃヴィランと同じ扱いされるかもしれねえんだぞ」
「ああ、今爆豪を助けなきゃ男でもヒーローでもなんでもねえよ」
俺は少し黙った後、口を開く。
「…分かった、乗らせてもらうよ」
「本当か、我羅琉!」
「ああ、だが絶対に対人で個性を使わないって誓えるならな。消太さんの戦闘許可はもう切れてるからな」
「…ああ、分かったよ」
切島達に俺のような道は歩んでほしくない。だからこそだ。
俺みたいなやつは俺一人で十分だ。
◇ ◇ ◇
その夜。来たのは俺と切島、轟、出久、八百万、そして飯田だった。
飯田は俺たちのことが心配できたらしい。
それもそうだろう。飯田としてはステインとやり合ったとき止めてくれたのは轟と出久らしい。
色々あったが八百万と飯田が万が一のストッパー役としてくることになった。
だったが俺は言う。
「…飯田、八百万、来るからには聞いておく。意志はあるんだよな?」
「「…っ」」
「お前らが今から行くところは学校みたいに安全が保障されてる場所じゃねえ、まぎれもなく戦場だ」
そして俺は告げる。
「お前らに助けるって言う意思がなきゃ死ぬ可能性が高い。俺らが戦闘を避けた所で向こうは手を出してくんだ。中途半端な『ストッパーになる』っていう気持ちじゃあ行くだけ無駄だ」
「ちょっと牙那君…」
出久が俺に言ってくる。それに俺は返す。
「事実を言ったんだよ、俺は。そんなんじゃ逆にピンチになる可能性の方が高いっていうのが今回の作戦だ」
少し黙った後、飯田と八百万が口を開く。
「僕はっ…!僕は彼を!爆豪くんを助けたい!」
「わ、私も爆豪さんを助け出したいですっ!」
二人の目には紛れもなく意思が宿っていた。
「それならいい、二人とも。後は…」
「『助けたい』じゃねえ、『助ける』んだ。この作戦、絶対成功させるぞ!」
「「「おう!」」」
俺たちは一つに纏まった。…待ってろよ勝己。