入寮から一夜。夏休み真っ盛りではあるが、他科に先駆けて入寮したヒーロー科に休める道理はなく。
1年A組の生徒たちは教室に集まっていた。
そんな中、消太さんが教室に入ってきて俺たちに言う。
「おはよう。昨日話した通り、仮免の取得が当面の目標となる」
そのまま消太さんが続ける。
「ヒーロー免許ってのは人命に直接かかわる、責任重大な資格だ。当然、取得のための試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は5割を切る。教導資格持ちが"受験するに足る"と判断しているのに、だ」
現在、最も人気のある職業であるヒーロー。その資格試験を受けたがる者は数多く、その全てを審査していては人も金もかかりすぎる。
そこで、ヒーロー公安委員会が作り出した仕組みが、「仮免試験の受験は、教導官の許可を必要とする」というものである。
教導官は専門の資格保持者かプロヒーローが務めることで、最低水準に達していない者を見極め、受験前にふるい落とす仕組みにになっている。
そうやって、合格の見込みが有る者だけが受験していてなお、夢破れる者たちが大半を占めるあたり、その難解さが分かる。
「そこで諸君らには1人につき最低2つ、必殺技を作ってもらう」
消太さんの言葉とともに、 教室へと入ってきたのはエクトプラズム、セメントス、ミッドナイトの3人。
…だが、俺以外のメンバーが気になったのはそこではない。"必殺技"の方である。
「「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァ!」」
「…必殺技って学校ぽいのか?」
俺の声は喝采の中に消えていく。
「必殺!コレ即チ、必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染み付かせた技は他の追随を許さない! 戦闘とは、いかに自分の得意を相手に押し付けるか、だよ」
「技は己を象徴する!今日び必殺技を持たないプロヒーローなど、絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交えて合理的に行いたい。コスチュームに着替えて、体育館ガンマに集合。以上、行動開始」
プロヒーロー達の言葉を受け、この後の特訓に心躍らせ、談笑しながら更衣室へと向かっていった。
◇ ◇ ◇
俺たちが集められたのは体育館γ。
「通称
((TDLはまずそうだ!))
俺たちはセメントス先生の説明に対し、いつかのUSJを紹介されたときと同じような反応をする。
だがセメントス先生は気にせず続ける。
「ここは俺考案の施設でね。生徒一人ひとりに合わせた地形やものを用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」
俺たちはそれを聞いて納得する。
その中で飯田がいつものように挙手をして尋ねに行く。
「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」
それに対し消太さんは言う。
「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災…、あらゆるトラブルから人々を救い出すことが仕事だ。取得試験ではその適性を確かめられることになる。情報力、判断力、機動力、戦闘力、他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など、多くの適性を毎年違う試験内容で確かめられることになる」
そしてミッドナイト先生が言葉を続ける。
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目になります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有していることになるんだよ」
セメントス先生の言葉に続けたのはエクトプラズム先生だ。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハナイ。例エバ、飯田クンノ”レシプロバースト”、一時的ナ超速移動ソレ事態ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル」
「アレ必殺技でいいのか…!」
飯田が感動しているようだ。
「なる程…、自分の中で「これさえやれば有利・勝てる」って型を作ろうって話か」
砂藤の言葉を肯定したのはミッドナイト先生。
「そ!先日活躍したシンリンカムイの「ウルシ鎖牢」なんか模範的な必殺技よ、分かりやすいよね」
そして消太さんが言う。
「中断されてしまった合宿での「”個性”のばし」は、…この必殺技を作り上げるためのプロセスだった。つまりこれから後期始業まで、残り10日余りの夏休みは、”個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す…、圧縮訓練となる」
消太さんは一息おいて、再び話し出す。
「プルスウルトラの精神で乗り越えろ、準備はいいか?」
その言葉に答えるように俺たちのテンションはノリノリの状態になっていた。
「「「…ワクワクしてきたァ!」」」
…さて、気合入れていくとしますか!