「…意識ははっきりしてます。ただ足から多量の出血しているのと骨折の可能性ありですね」
「ありがとう、後はこっちに任せて」
俺はさっき助けた人を救護所で治療を行っているうちの一人に受け渡す。
…回復持ちの個性の方々がいる以上、俺は救助に向かう方がいいと判断した。
「あ、我羅琉君。少しいいかな」
だが、俺は救助に戻ろうとした時、呼び止められる。
俺を呼んだのは真堂さんだった。
「なんですか?」
「ちょっと君にも相談したいことがあってね。雄英体育祭1位の考えを聞かせて欲しいんだ」
真堂さんはそのまま話を続けていく。
「実は、今それぞれのゾーンでここの救護所ほどじゃないけど救護所を作ったみたいなんだ」
それに先ほどまで真堂さんと話をしていた人がそれに加えていく。
「それで、ある程度それぞれの場所での救助活動が落ち着いてきたらここに移そうかなって思っているんだ」
つまり、傷病者をスムーズに病院への搬送をするために一ヶ所に纏めようってことか。
うーん、確かにそれもいい案だと思うけどな…、不安要素が消えねえ。
「…俺は逆ですね。何個か救護所があった方が、万が一に役立つと思います」
「万が一って…、これは救助演習だろ?助けて搬送の準備を整えて…で終わりじゃないのか?」
「…誰が救助演習って言ったんですか?」
俺はその言葉に続けていく。
「俺が気になってるのは、この事件を起こしたヴィランがどこにいるかってことです」
俺の言葉に真堂さんは驚いた表情をしている。
「それって、まだこの事件は終わってないということか?」
「察しがいいですね。ここからヴィランの襲来があると俺は考えてます」
その言葉に周りで俺たちの話を聞いていた人達からはどよめきが起こる。
「オイオイ、我羅琉、さすがに難易度高すぎるだろ!? 救助に対敵、いっぺんにやれって、ンなもん、プロでもキツいぜ!?」
俺はその言葉をすぐに反論していく。
「でも、プロヒーローなら"救助だけやれば大丈夫"なんていかないですよ?むしろ、そうならない方がおかしいです」
俺はそのまま続けていく。
「話を戻します。俺は移送には反対です。どこかにここが潰れたときに使えるサブ本拠地的なものを万が一のために作っておいた方がって思いますね」
「確かに、1ヶ所に集めておいて"ヴィランに狙われました"じゃあ、避難に時間もかかるな」
俺の考えには納得してくれたようで周りの受験者の人達が続々と散っていく。
こればかりは俺は出来ない。俺ができるのは精々雄英メンバーに伝えることが限界だ。
一次試験を見ている限り、真堂さんは他の学校の方々からも一定の信頼があるみたいで話は伝わっていった。
だがその中に空間ごと揺れるような振動と轟音が響く。
「やっぱ、来やがったか…!」
俺は土煙の中から現れる存在に向けて呟く。
『ヴィランが姿を現し追撃を開始! 現場のヒーロー候補生たちはヴィランを制圧しつつ救助を続行してください!』
…ここからだな、真価が問われるのは。