「…出久の奴、こねーな」
仮免試験があった日の夜、俺は色々と出久と話そうと思い、俺の部屋に誘っていた。
…だが、時間がたっても来ない。
出久はこういうのにはしっかり来るタイプだ。来ないってことは何かがあったってことだ。
俺は出久の部屋に向かい、扉をノックしてみる。
「出久ー?来ないから俺から来てやったぞー」
しかし、反応はない。
「む、我羅琉か。どうしたんだ?」
そこに通りがかったのは出久の隣の部屋にいる常闇だった。
「あ、常闇。出久探してるんだけどさ、どこにいるか分からない?」
「緑谷か、…さっき外の方へ出て行ったのを見たな。何かあったのか?」
…外?なんでだ、特に今日は特訓することとかもなかったはずだ。
「ああ、ちょっと用事があってね。ありがと、常闇」
常闇に礼を言った後、俺は寮の外に出る。
少なくとも、先に用事があったのなら、俺から伝えたときにアイツから行ってるはずだ。
ってことはこれは、出久にとっては不測の事態、予定外のことが起きたということ。
俺は、思い当たる訓練室から順に回っていくことにした。
だが、行く前に俺に冷たい声がかかる。
「…どこに行くつもりだ?」
それは、消太さんの声だった。
「あー…、出久と用事があって、それで探しているんですけど…」
「…、緑谷なら爆豪と訓練室使って大喧嘩だ」
はい!?どういうこったよ!
「俺が行こうとしたんだが、オールマイトさんが来てな。任せろって言うから今待ってる最中ってわけだ」
「あ、そうなんすね」
…恐らく、提案したのは勝己だろうか、内容とまでは分からないが…。
◇ ◇ ◇
そして出久たちをオールマイトさんが連れ帰ってきた。
二人を見ると痣だらけであり、大喧嘩だったということを物語っている。
消太さんとオールマイト、そして俺が傷を治療し、一段落ついたときである。
「試験終了日の夜に喧嘩とは元気があってよろしい」
消太さんが一気に二人を捕縛布で締め上げた。…アレは痛い、うん。経験したからわかる。
「相澤君待って、捕縛待って」
「まあ、二人にも訳があったんでしょうし…」
オールマイトと俺が消太さんを止めようとするが消太さんは気にせずに捕縛を続ける。
その後、オールマイトが言うことには、勝己が「オールマイトを終わらせた」と思い、そして自分より下ではあるだろうと思っていた出久が仮免試験に合格し、自分は落ちた…ということに納得いかず、出久を呼び出したということ。
確かにあの神野の事件がなければ、ヒーローとしてのオールマイトが終わることはなかっただろう。
だがそれはそれだ。オールマイトさんの体は限界に近付いており、実際問題として終わることは確かだった。だから雄英に教師としてきたのだ。勝己が責任を負う必要はない。
「先に手ェ出したのは?」
消太さんが言うと、二人が答える。
「…俺だ」
「僕もその後結構…」
最終的には、先に手を出したのは爆豪だが、出久も進んでやっていたらしい。
その言葉を聞いて消太さんが二人に捲し立てるように言い放つ。
「爆豪は4日間!緑谷は3日間の寮内謹慎!その間の寮内共有スペース清掃!朝と晩!!+反省文の提出!!」
あ、そんだけなんだ。意外と消太さんにしては軽そう。除籍もあり得ると思ってたから…。
「後、牙那も、こいつ等の治療はするなよ。演習ならまだわかるが、これは二人の結果だ」
「了解です。…そういう訳らしい。勝手に直せ」
その日はやっと終わりを告げた。