77話
「「ケンカして、謹慎〜!?」」
出久と勝己の大喧嘩の翌日の朝。寮に芦戸と葉隠の元気な声が響き渡る。
その原因となった出久と勝己はばつが悪いという風に絆創膏が貼ってある顔を歪ませている。
「馬鹿じゃん!」
「馬鹿かよ!」
「骨頂」
二人はクラスメイトたちから浴びせられる口撃に言い返すこともできずに下を向く。
その後、一通りイジり倒して、謹慎などを受けていない俺たち18人は揃って寮を後にし、夏休み中も訓練のために往復したおかげで、早くも通い慣れた道を進んでいく。
その道中でも話題になるのはさっきの二人の話だ。
「あ、そうだ。あの二人の怪我については何もするなって消太さんに言われたよ」
「うわ、よく"それくらい"で済んだな。夜中に抜け出してケガするほどの大ゲンカだろ?」
「尾白、それに加えて仮免試験直後に、だぜ。オイラは除籍されてねーことが不思議なくらいだ」
俺の言葉に尾白と峰田が返していく。確かに今回の処分は、あの消太さんにしては軽い方だろう。
周りも般若の形相をした消太さんを思い浮かべたようである。
「朝から妙なプレッシャーを感じるよぉ…」
葉隠は入学当初のことを思い出したようだ。ちなみに俺たちA組は入学式には出ていないが、B組の拳藤や泡瀬に聞くと「校長の話がくそ長かった」…らしい。
そんな葉隠を蛙水が落ち着かせる。
「落ち着いて、透ちゃん。相澤先生は同じことが起きないように、釘をさすくらいのはずよ」
その言葉に続けたのは芦戸だ。
「入学式の日は、ホントに式だけだったからね。今日の始業式後は普通に授業だし、時間の都合で無理は利かないでしょ」
「…芦戸の言葉が、あのような形で裏切られることになるとは、この時の彼女には想像すら出来ないのであった」
瀬呂が返し、俺たちの不安が増大していく。
「止めてよ瀬呂、不吉なこと言うの! 期末赤点仲間じゃん!」
「それ言うなよ、割とガチで心が痛え!」
そんな感じでわちゃわちゃしながら俺たちは片道徒歩5分の通学路を歩いて行った。
◇ ◇ ◇
そして始業式。始まりは校長先生の訓示から。
…ただ、その話はもの凄くどうでもよく、ありえないほど長かったとだけは言っておこう。
その後、…暗に出久と勝己のことを表しているのであろう、昨日起こった大喧嘩を注意するハウンドドックさんだったが…。
「…なんて言ってんの?」
俺たちにはハウンドドックさんが吠えまくってるようにしか聞こえなかった。
その後、スナイプさんが通訳する。
始業式はつつがなく終わり、ヒーローインターンという新たな情報の説明や、テンションの割に内容は普通なプレゼントマイクによる英語の授業という風に、俺たちは久々にありふれた学園生活を送った。