個性「tfポケモン」   作:W297

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 今回いつもより1000字ほど長めです。毎回できる限り1500字以内で収めようとしたのですが、やっぱり説明シーンは切りにくい…。


86話

 「あなた方に提供していただいた情報のおかげで、調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が、何を企んでいるのか。知り得た情報の共有とともに、協議を行わせていただきます」

 

 告げられた組織の名前を知らない学生組は、揃って不思議そうな表情だった。

 

 例外なのは通形先輩、出久の二人のみである。

 

「俺ら、置いてけぼりなんスけど、、ハッサイ?なんすか?」

 

 良くわかっていない切島はファットに聞く。

 

「死穢八斎會や、悪いこと考えとるかもしれんから皆で煮詰まりましょのお時間や、お前らも充分関係してくるで」

 

「極道、ですか…」

 

 俺はそう口を開く。極道系の敵とは余り戦ったことねえんだよな。

 

「えー、それでは、始めてまいります。我々ナイトアイ事務所は、約2週間ほど前から、死穢八斎會という指定ヴィラン団体について、独自調査を進めて、います!」

 

「私、サイドキックのセンチピーダーが、ナイトアイ指示の下で追跡調査を行っておりました。ここ1年以内に、組外の人間や組織との接触が急増しており、組織の拡大と資金集めを目的にしていると思われます。そして──」

 

 ナイトアイのサイドキックである、センチピーダーとバブルガールの二人が経緯を説明しながら、二人の背後のスクリーンに1枚の写真が映し出される。

 

 かなり遠くからのものであり、かなり荒い画質だった。

 

「調査開始からすぐ、ヴィラン連合の1人である分倍河原 仁──ヴィラン名・トゥワイスと接触。追跡は叶わず、以降の足取りは掴めておりませんが……」

 

「ヴィラン連合が関わる話なら、ってことで、俺や塚内にも声がかかったんだ。まあ、その塚内は他の目撃情報が入ったんで、そっちに行ってるが」

 

 言葉を引き継いだのはグラントリノ。出久の職場体験で世話になったヒーローらしく、オールマイトの師匠らしい。

 

「えー、このような過程があり、"HN"にて皆さんに協力を求めたわけで─「そこ、飛ばしていいよ」─うん!」

 

「"HN"?」

 

「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。便利な個性のヒーローに協力を申請したりできるんだって!」

 

 ねじれ先輩の言うヒーローネットワーク。瑠莉姉も使っていたことを見たことはあるが、基本的には知られていない情報だ。

 

「…雄英生とはいえ、ガキがこの場に居るのはどうなんだ? 話が進まねえや。本題の"企み"に辿り着く頃にゃ、日が暮れてるぜ」

 

「ぬかせ! この3人はスーパー重要参考人やぞ!」

 

 なかなか進まないことに苛立ちを覚えたのか、口を開いたのはロックロックだ。それに抗弁するようにファットさんは立ち上がる。

 

「八斎會は以前、認可されていない薬物の捌きをシノギの1つにしていた疑いがあります。そこで、その道に詳しいヒーローに協力を要請しました」

 

「昔はゴリゴリにそういうん潰しとりました! そんで先日のキバナ・烈怒頼雄斗デビュー戦! 今までに見たことないモンが環に撃ち込まれた! …個性を壊すクスリや」

 

 その言葉に場は騒然とする。にわかには信じがたいだろう。

 

 通形先輩が環先輩を心配して声をかけるが、問題ないという風に環先輩が個性を発動させて安心させる。

 

「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねえ」

 

「いえ…。その辺りは、イレイザーヘッドから」

 

「俺の"抹消"とは違うようですね。俺は個性を攻撃しているわけではないので」

 

 消太さんの‟抹消”は個性を構成する要素、個性因子を一時的に停止させるものである。破壊するわけではない。今回の薬はそれが破壊されたのである。

 

「すぐに病院で見てもろたが、その個性因子が傷ついとった。今は自然治癒で元通りやけどな。環の身体には他の異常は無し。撃った連中はダンマリ、銃はバラバラ、弾は撃ったっきり! ……ただ、切島くんが身を挺して弾いたおかげで、中身の入った一発が手に入った、っちゅーワケや!」

 

「…? …俺スか!? ビックリした! 急に来た!」

 

「…そして、その中身を調べた結果。ムッチャ気色悪いモンが出てきた。…人の血ィや細胞が入っとった」

 

 ファットさんはそう告げる。俺もこれを聞いたときは「マジか…」ってなった。

 

「うーん……。さっきから話が見えてこないんだが、それがどう、八斎會と?」

 

「今回、切島くんと我羅琉君が捕まえた男。そいつが持ってた違法薬物しかり、その手のブツの入手経路は複雑でな。今でこそかなり縮小されとるけど、色んな人間、グループ、組織が、何段階にも卸売りを重ねて、ようやっと末端に行き着くんや。…捕まえた連中はダンマリ決め込んどるけど、警察の方ではもう、関わった可能性のある組織は割り出し済みや」

 

 そこで出てきたのが八斎會だった。そういうことか。

 

「八斎會の若頭、治崎の個性は"オーバーホール"─対象の分解、修復が可能という力です。…そして治崎には娘が居る。出生届もなく詳細は不明ですが、ウチの通形と緑谷が遭遇した時は、手足に夥しい包帯が巻かれていました」

 

 それだけで俺が想像するのには十分すぎた。…嘘だろ?自分の娘にそこまでさせてんのかよ…。

 

「な、何の話スか…?」

 

 切島は俺たちの空気が分からないという風に聞く。俺はそれに返す。

 

「…その治崎っての、娘の身体を銃弾にして捌いてんじゃね? ってことだよ切島。想像したくねえがな…」

 

 それを聞いた1年の面々は背筋がぞくっと冷える感覚がしただろう。

 

「現時点では、性能はあまりにも半端です。ただ、仮にそれが、試作段階だとして。もしも完成形が、個性を完全に破壊するものだとしたら……? 悪事のアイデアがいくらでも湧いてくる」

 

「コイツラが子供を保護してりゃ、一発解決だったんじゃねーの?」

 

「全て私の責任だ、2人を責めないでいただきたい。知らなかったこととはいえ、2人ともその娘を救けようと行動したのです」

 

 事実を知っているのはこの場では通形先輩と出久の二人。最も強いショックを受けているのは、間違いない。

 

「「今度こそ必ずエリちゃんを、保護する!!」」

 

「─それが、私たちの目的となります」

 

 思わず、といった様子で立ち上がった2人の目は、決意に満ちたものだった。

 

 

 

 




 
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