R団ボスの娘   作:九戸政景

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政実「どうも、好きな二番目に好きなブイズはリーフィアの片倉政実です」
ツバキ「どうも、ツバキです。たしか一番好きなのはイーブイだったよね?」
政実「うん。専用のZ技なんかがあるのも理由の一つだけど、普通に可愛いからね」
ツバキ「それに関しては同感。さてと、それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・ツバキ「それでは、第1話をどうぞ」


第1話 転生者のある一日

「……今日も良い天気だなぁ」

 ある朝、自分の部屋の窓から外の様子を見ながら私は小さな声で独り言ちた。その言葉通り、外は雲一つ無い快晴で走り回ったらとても気持ちが良いだろうと思えた。

 ……せっかくだし、ポケモンに姿を変えて本当にそうしようかな。もっとも、この地方にいないポケモンにはなったらマズいから、なるなら気をつけないといけないけど。

 そんな事を思いながら窓から外をボーッと眺めていた時、部屋のドアをトントントンとノックする音が聞こえ、私はそっちに視線を向けながら「どうぞ」と声を掛けた。すると、部屋に入ってきたのは父さんだった。

「父さん、どうかした?」

「なに、朝の挨拶をしようと思ってな。おはよう、ツバキ」

「うん、おはよう、父さん。まあ、()()()()はまだ起きてないけどね」

 未だベッドの上やベッドの近くに作った特製の寝床で眠っている私のポケモン達に視線を向けながら言うと、父さんは同じように視線を向けながら苦笑いを浮かべた。

「ツバキとは違い、ポケモン達は少しのんびりとしているからな。もう少し寝かせてやっても良いだろう」

「そうだね。ところで、父さんは今日も仕事?」

「ああ。私は『ロケット・コンツェルン』の会長であり、この『トキワシティ』のジムリーダーでもあるからな。今日もどこにも連れていってはやれないが、シルバーの面倒を見ながら良い子にしていられるか?」

「もちろんだよ、父さん。私だってもう9歳だからね」

「それなら良い。それでは、行ってきます」

「行ってらっしゃい、父さん」

 私が手を振りながら言うと、父さんはニコリと笑いながら頷き、そのまま部屋を出ていった。そして、父さんの姿が見えなくなった後、私はベッドに腰掛けながら小さく息をついた。

「今日も仕事、か……まあ、表向きの仕事だけじゃなく、『R団(ロケットだん)』のボスとしての仕事もあるんだろうけどね」

 ベッドに腰掛けたままで私は再び独り言ちた。そう、私の父さんは『ポケットモンスター』のゲームで主人公達の前に敵として現れるR団のボスであるサカキ本人だ。最初はそんなサカキの娘として生まれた事に驚いたけれど、いつしかその事にも慣れ、悪の組織であるR団のボスである事を差し引いても父さんの事を尊敬できるようになっていた。

 実際、家族の事をしっかりと顧みてくれるし、ポケモン達にも優しいところはあるから、私も弟のシルバーもそういうところは結構好きかな。ただ、シルバーは父さんがR団のボスだっていう事は良く思ってないようだけど……。

 そんな事を思いながらベッドの上で眠っているポケモン達を撫でようとしたその時、「ブイー……」と眠っていた内の一匹が可愛らしい欠伸をしながらゆっくりと目を開けた。

「おはよ、エレン」

「ブイ……ブッブイ!」

 イーブイのエレンがニコリと笑いながら挨拶を返してくれていると、その声で起きたのか他のポケモン達も次々と目を覚まし始めた。

「シャワ……」

「ダース」

「ブースタ」

「ブイ……」

「ブイ……?」

「……あ、みんな、おはよう」

「ブイ! ブッブイ!」

 エレンが元気よく他のポケモン達に挨拶をすると、シャワーズのディーネとサンダースのヴォルトとブースターのリートはそんなエレンに対して静かに挨拶を返し、イーブイのイルとシドは挨拶を返してから眠そうに前足を使って目を掻き始めた。

 うん、今日も私のブイズ達は可愛い。誰が特にとかは無く、みんな同じくらい可愛い。

 ポケモン達に対してそんな感想を抱いていると、「姉さん、入るよ」と言いながらシルバーが部屋に入ってきた。

「シルバー、私に何か用?」

「朝食が出来たみたいだから、呼びに来たんだよ」

「そっか、ありがと。それじゃあみんなで行こうか」

「うん」

 シルバーが返事をした後、私はみんなを連れて食堂へと向かった。そして、食堂に着いてみると、そこには母さんの姿があった。

「母さん、おはよう」

「おはよう、ツバキ。シルバー、ツバキ達を呼んできてくれてありがとうね」

「どういたしまして。それじゃあ食べようか」

「うん」

「ええ」

『いただきます』

 声を揃えて挨拶をした後、私達はコックさんが用意してくれた朝食を食べ始めた。そして少し食べた後、私は並んで特製のポケモンフーズを食べるエレン達に声を掛けた。

「みんな、美味しい?」

「ブッブイ!」

「シャワ」

「ダース!」

「ブースタ」

「ブイ」

「ブイ……」

「うん、今日も美味しいみたいで良かった」

「姉さん、本当にポケモン達が好きだよな」

「うん、好きだよ。ポケモン達がいなかったら生きていけないくらい好きだからね」

「それは言い過ぎじゃ……」

「ううん、言いすぎじゃないよ」

 実際、前世でポケモンと出会わなかったら、好きな物が無いままでもっと早く死ぬ事になっていたかもしれないし。

 そんな事を思いながらバターの味がしっかりと染みこんだトーストを一齧(ひとかじ)りし、サクッという小気味の良い音を楽しんでいたその時、「そうだ……」と母さんが何かを思い出したように声を上げ、私達の方へ顔を向けた。

「まだ貴方達には話してなかったけど、お父さんの仕事の都合で明日からしばらくの間『ジョウト地方』にみんなで行くから、そのつもりでいてね」

「『ジョウト地方』……」

「仕事の都合って……『ロケット・コンツェルン』の支社でも建てるの?」

「まだそこまでは行かないと思うけど、視察みたいな物じゃないかしら?」

「そっか。でも、その間の住む家はどうするの?」

「それはもう準備できてるみたい。因みに、行くのは『ワカバタウン』よ」

「『ワカバタウン』……」

 たしか金銀の主人公やウツギ博士が住んでいる町だったっけ。そして、シルバーが盗むという形でパートナーのポケモンとも出会う場所……そう考えたらなんだか嬉しいような複雑なような……。

 そんな事を思いながら綺麗に盛り付けられたサラダを口に運んでいると、シルバーが少し暗い顔をしているのが目に入ってきた。

「シルバー、どうしたの?」

「……新しいところに行くって事は、その間近くに住んでいる奴とも話さないといけないんだよなって思ったら、少し気持ちが落ち込んできて……」

「ああ、シルバーは人付き合いが苦手だからね。でも、大丈夫。まずは私が話をして、シルバーが話しやすい状況を作ってあげるから」

「姉さん……ありがとう」

「どういたしまして。けど、少しは自分から話せるようにはなろうね」

「う、わかってるよ……」

「それなら良し」

 私がそう言うと、シルバーはぷいっとそっぽを向いてからまた朝食を食べ始めた。そんなシルバーの様子にクスリと笑ってから私もまた朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

「さて……と、今日も転生特典の特訓兼みんなの特訓をしようかな」

 朝食後、自分の部屋で読書をすると言うシルバーと別れ、私はポケモン達を連れて『トキワのもり』の中にある広場へと来ていた。因みに、まだ10歳になっていない私がエレン達を連れていられる理由は、表向きは母さん達のポケモン達という事にし、私の護衛という名目でついて行かせてるからだ。そして、こんなにも多くのブイズがいるのは、私が一番好きなポケモンがイーブイで、それを父さん達に言ったら喜んで六匹のイーブイを用意してくれたからだったりする。

 嬉しいは嬉しいけど、父さん達って思ったよりも親馬鹿なところがあるよね。まあ、前世のアイツらなんかとは比べ物にならない程、良い両親ではあるわけだし、女神様には本当に感謝しないと。

 そんな事を思いながら私は転生特典の『ポケモンに姿を変えられる能力』を使って、まずは『ねずみポケモン』のピカチュウに姿を変えた。

 耳、よーし……ハート型の尻尾、よーし……うん、今日もバッチリ姿を変えられてる。

 上手く姿を変えられてる事に満足感を覚えた後、私はエレン達に話し掛けた。

「それじゃあ、今日も色々特訓をしようか」

「うん!」

「今日は何をするつもりなの?」

「そうだね……私がみんなに電気タイプの技を出すから、ヴォルト以外のみんなはそれを避けて、ヴォルトはそれを受けたり技で打ち消してくれるかな?」

「うん!」

「わかったわ」

「よし! やるぞ!」

「今日も良い特訓にしよう」

「そうね」

「……ああ」

 みんなが返事をした後、私はみんなから距離を取った。私がポケモンに姿を変えたのにエレン達が驚かないのは、エレン達が家に来た日の夜に、私が転生者である事を教え、目の前で実際にポケモンに姿を変えてみせたからだ。もっとも、その時はスゴく驚いていたけれど、今となってはたまにリクエストに応えて色々なポケモンに姿を変えてみせる程に慣れていた。

 ……さてと、まずは何を使おうかな。せっかくだし、『10まんボルト』から行こうかな。

 出す技を決めた後、私は頬の電気袋に溜まっている電気をバチバチと放電させた。

「よし……それじゃあ行くよ」

 その言葉にエレン達が頷いた後、私は跳躍しながら回転しつつ放電をした。すると、『10まんボルト』は真っ直ぐにエレン達へと向かい、ヴォルトを除いた全員がそれを難なく躱す中、ヴォルトは特性の『ちくでん』で『10まんボルト』を無効化した。

 うん、これくらいはやっぱり平気だよね。でも、これならどうかな?

 宙を舞いながら私はまた『ポケモンに姿を変えられる能力』を使い、今度は『はどうポケモン』のルカリオに姿を変えた。そして、体の中を巡る波導を球体にしながら手の中に握り込み、それを次々にエレン達に放っていった。

「さあ、この『はどうだん』はどうする?」

「『はどうだん』……」

「避けられない技なら──」

「迎え撃つまでだ!」

 エレン達は向かってくる『はどうだん』を真っ直ぐに見据えると、それぞれに覚えさせている攻撃技で『はどうだん』を迎え撃とうとした。

「行くよ、『シャドーボール』!」

「『ねっとう』!」

「『10まんボルト』だぁー!」

「『かえんほうしゃ』でどうだ!」

「「『スピードスター』……!」」

 エレン達が放った攻撃技と私が放った『はどうだん』は互いに押し合っていたけれど、やがて大きな音を立てながら同時に消滅した。

 ふぅ……やっぱり、相殺されちゃうか。

 そんな事を思いながらスタッと着地した後、私はエレン達にゆっくりと近付き、その頭を優しく撫でた。

「みんな、よくやったね。今の流れで『はどうだん』を打ち消せたのはスゴいよ」

「えへへっ……」

「ふふ、いつも貴女が的確な指示を出してくれてるおかげよ」

「まあ、俺達なら楽勝だったけどな!」

「ヴォルト……あまり調子に乗ってると痛い目を見るぞ?」

「それに関しては同感かしらね」

「……同じく」

 ヴォルトに対してリート達がそう言うのに対して、私がクスクスと笑っていたその時、「おーい、姉さーん」とシルバーが私を呼ぶ声が聞こえ、私はルカリオの姿から人間の姿に戻った。そして、みんなと一緒にシルバーの声がした方へ行くと、そこには父さんのサイホーンを連れたシルバーの姿があり、シルバーは私の姿を見つけると、少し嬉しそうに声を掛けてきた。

「姉さん、ここにいたんだ」

「うん、みんなと一緒に特訓をね。シルバーはどうしてここに?」

「母さんからおやつが出来たから、呼んできてって言われたんだよ。つまり、朝の時と同じわけ」

「ふふ、そっか。それじゃあそろそろ行こっかな。特訓の続きは午後にして、おやつを食べた後はみんなとのふれあいに時間を使う事にすれば良いし」

「ふれあいというか、姉さんのは姉さんが一方的に──」

「……何か言った?」

 あの頃と同じような冷たい目でシルバーを見ながら言うと、シルバーは「な、何も……」と少しだけ怯えたように答えた。

 ……っと、いけない。私はもうあの時の私じゃないんだから、そんな目をするのは止めないと……。

「さあ、行こうか、シルバー。何なら手を繋いであげても良いよ?」

「い、良いって! ほら、行くんだろ?」

「うん」

 シルバーの言葉に答えた後、私達は家に向かって歩き始めた。

 ……そういえば、前まで野生のピカチュウと遊んでる四人組がいたのに、ここ最近はまったく見かけないな……。もしかして、何かあったのかな……?

 その四人組の姿を思い出しながら私は一人で首を傾げたが、頭はその事からおやつの事へと切り替わった。

 まあ、また見かけたら話を聞けば良いよね。今はおやつの方が大事。

 そんな事を思いながら、私はシルバーと他愛ない話をしつつ家に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 その日の夜、私はサーナイトに姿を変えて自室で『ワカバタウン』の家に行く準備をしていた。サーナイトの姿になっているのは、人型のポケモンの方が荷物の準備をするのに都合が良かったからとエレン達と話をしながら準備をしたかったからだ。

「さて……衣類は向こうにも用意してくれるらしいから、その辺はいらないけど、本は色々持っていきたいよね」

「持っていくのは良いけど、結局向こうでも買うんでしょ?」

「……そんな事ないよー……」

「じゃあ、買わないの?」

「買うよ。せっかく出来た新しい趣味だからね」

「そんなに前世では趣味が無かったのか?」

「無かったね。ポケモンは大好きだったけど、それは趣味というかは生き甲斐だから」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、まさか僕達が創作の世界の存在になっている世界があるなんてね……」

「不思議と言えば不思議よね」

「……けど、ツバキが嘘を言ってるようには見えない」

「そうだね。こうして実際にポケモンに姿を変えてるところを見せられたり、撫でてるだけで傷が治っていくのを直に見たら信じざるを得ないよ」

「ふふ、ありがとう──っと、こんなもんかな」

「準備は出来たのか?」

「出来たよ。どうせ、ここには帰ってくるから、そんなに多くの物を持つ必要は無いでしょ?」

「たしかにそうだね」

 エレンの返事を聞きながらキャリーバッグの蓋を閉めた後、私は軽く欠伸をしてから人間の姿に戻った。そして、それと同時にエレンが私のベッドの中に潜り、ディーネ達がそれぞれの寝床に向かったのを見た後、壁に付いている部屋の電気を消しに行き、私もベッドへと向かった。

 ふあ……さてさて、『ジョウト地方』ではどんな出会いがあるのかな?

 そんな事を思いながらベッドに入り、目を瞑ると、私の意識は静かにスーッと落ちていった。




政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
ツバキ「話の流れ的にしばらくはジョウト地方での話になるって事で良いの?」
政実「そうだね。まあ、いつまでそうするかはまだ決まってないけどね」
ツバキ「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて、それじゃあそろそろ締めていこうか」
ツバキ「ええ」
政実・ツバキ「それでは、また次回」
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