ツバキ「どうも、ツバキです。ねむり、かぁ……まあ、その気持ちはわかるかな。ポケモンゲットでもトレーナーとのバトルでも大活躍の状態異常だからね」
政実「まあね。因みに、二番目に好きなのはもうどくかな」
ツバキ「なるほどね。さてと、それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・ツバキ「それでは、第3話をどうぞ」
「行くよ、ディーネ!」
「シャワ!」
私の声にディーネが大きな声で答えると、レクトは自慢げな顔をしながらモンスターボールを上に投げ上げた。
「さあ、行け! サニーゴ!」
「サニー♪」
モンスターボールから出てきたサニーゴを見た瞬間、私は思わず「えっ……」と言ってしまった。
え……リージョンフォームのサニーゴならまだしも『あの特性』を持ってるディーネに対して原種のサニーゴを出すの……? まさかとは思うけど、この子、シャワーズの特性を知らないとか……?
レクトがサニーゴを出してきた事に私が驚いていた時、レクトは私の様子を見てまた自慢げな顔をした。
「その様子……どうやら君は、サニーゴを知らなかったようだね。いやー、こんなにも美しいポケモンを知らなかったなんて今までどれだけ哀しい人生を送ってきたんだろうね?」
「……あなたに私の人生をとやかく言われる筋合いは無いし、サニーゴくらい普通に知ってる。それよりも本当に良いの?」
「良いのって……何がかな?」
「……まあ、わかってないなら良いよ。さあ、先行は譲るから、さっさとかかってきて」
「ふ、ふん……! それなら、遠慮無く行くさ! サニーゴ、『ハイドロポンプ』!」
「サニー!」
サニーゴは元気よく答えると、ディーネに向かって『ハイドロポンプ』を放ち、私はそれに対して呆れながら溜息をついた。
「はあ……ディーネ、そのまま受けて」
「シャワ」
ディーネもどこか呆れた様子で答えると、そのまま微動だにせずに『ハイドロポンプ』を真っ正面から受けた。すると、レクトはそれを見て馬鹿にしたように笑い始めた。
「あっはっは! 本当に
「…………」
「おやぁ? あまりにも僕様達が強すぎて言葉も出ないのかな?」
「……心底呆れてただけ。あなた、ポケモンバトルの経験が殆ど無いでしょ?」
「なっ!? 何を根拠にそんな事を!」
「……じゃあ、見てみてよ。私のディーネを」
「シャワーズを──なっ!?」
退屈そうに欠伸をしながら自分を見つめるディーネを見て、とても驚いた様子を見せると、声を震わせながら私に話し掛けてきた。
「ど、どういう事だ……!? どうして、『ハイドロポンプ』を受けてそんなにピンピンとしていられるんだ!?」
「……『ちょすい』」
「は?」
「私のディーネの特性は、相手から受けた水タイプの技のダメージを無効にし、体力を回復する『ちょすい』なの。だから、さっきの『ハイドロポンプ』は無効になった」
「そ、そんな……!」
「だから、本当に良いのって訊いたのに……まあ、『ちょすい』を知らないレベルのトレーナー如きに負けるわけは無いよね」
「く、くぅっ……! だ、だったら、他の技を使うまでだ! サニーゴ、『ロックブラスト』!」
「サ、サニー!」
レクトの指示でサニーゴが『ロックブラスト』を放つ準備を始めた時、私もディーネに指示を出した。
「ディーネ、足元に『れいとうビーム』」
「シャワ!」
ディーネは元気よく返事をすると、足元に『れいとうビーム』を放ち、その様子を見たレクトはまた馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「は、ははっ! 君達の敵はこっちにいるのに、どうしてそんな馬鹿な真似をしているのかな?」
「……今にわかるよ」
その言葉と同時に、ディーネが放った『れいとうビーム』は私達の目の前に厚い氷の壁を作り上げ、ディーネはその出来栄えに胸を張った。
「シャワ!」
「うん、ありがとう。これで相手の攻撃は殆ど防げるよ」
「シャワ」
私の言葉にディーネが嬉しそうな鳴き声を上げていると、氷の壁の向こうからレクトの驚いたような声が聞こえてきた。
「こ、こんな厚そうな壁を一匹で……!? で、でも! 守るだけじゃポケモンバトルには勝て──」
「知ってる。というか、そもそもこの氷壁は私達のためじゃない」
「……は?」
「
「「なっ!?」」
私の言葉を聞いてボディーガードの人達が驚いたような声を上げた後、私達は氷壁の向こうへと移動し、ボディーガードの人達の手にモンスターボールがあるのをしっかり確認し、殺気を放ちながらレクトに話し掛けた。
「やっぱり、図星だったんだね」
「な……お前、まさか……!?」
「そう、さっきのはカマを掛けただけ。まあ、氷壁を作った理由に嘘は無いけど、もう一つ理由はあるかな?」
「も、もう一つ……?」
サニーゴと一緒に震えながら訊いてくるレクトに対して私は静かに頷いた。
「あの子、ラプラスに今から始まるあまりにも酷いバトルを見せないため。まだ子供なのにそんなのを見せるのは可哀想だから」
「ぼ、僕様だって子供だぞ!?」
「……さあ、そろそろ再開しましょうか」
「おい、無視するな!」
「煩い」
思わず出てしまった冷たい声を聞いてレクトが「ひっ!?」と情けない声を上げた後、私はディーネに指示を出した。
「ディーネ、『あくび』」
「シャワ」
ディーネは静かに頷くと、可愛らしく欠伸をした。そして、ディーネの口からピンク色のシャボンが現れ、それがサニーゴに当たってパチンと弾けると、サニーゴは目をとろんとさせながら体をふらつかせ始めた。
「サ、サニーゴ!?」
「今のは『あくび』。ちょっと時間はかかるけど、当たった相手を眠らせる技。せめて、眠っている間に倒してあげようと思ってね」
「眠っている間にって……それじゃあサニーゴは何も出来ずに負けるって事じゃないか!」
「そうとも言うね。でも、それも戦略の一つだよ。そして、その時間はそろそろ──」
そう言った時、サニーゴは目の前に倒れ込み、幸せそうな寝顔で寝息を立て始めた。
「サニーゴ! くそっ、起きろよ!」
「無理じゃないかな。眠り状態はそう簡単には起きないから」
「そ、そんな……!」
「さあ、そろそろ行こうか。ディーネ、連続で『ねっとう』」
「シャワ」
ディーネは静かに頷くと、サニーゴに向けて『ねっとう』を放ちだし、サニーゴは眠りながら『ねっとう』をくらい続けた。
「ZZZ……!」
「サ、サニーゴ! くそっ! 卑怯だぞ!」
「卑怯じゃない。これも一つの戦術」
まあ、前世ではネット対戦なんてやった事無いから、眠らせてから相手をどうにかするというのは知識として知ってるくらいだけど。
そう思いながらディーネがサニーゴに『ねっとう』を放ち続けるのを見ていた時、眠っていたサニーゴが突然横にゴロンと転がった。そして、状況を
「……サニーゴ、戦闘不能。シャワーズの勝ち。勝者はツバキさんです」
『…………』
バトルが終わったのにも関わらずアサギ港はシンと静まり返り、誰もが項垂れるレクトに視線を向けていた。それはそうだろう。いくら、バトル前やバトル中に相手を馬鹿にした発言をしていたとはいえ、普通のトレーナーでもが心を壊されかねない程の戦い方をされているのを見れば、心配になるのは当然だ。
……まあ、サニーゴには悪い事をしたと思ってるけど、レクトに対しては罪悪感なんて無い。むしろ、スカッとしていると言っても良いかな。
そんな事を思いながらレクトに向かって近付くと、レクトはゆっくりと顔を上げ、私の姿を見た瞬間にビクリと体を震わせた。
「な、何だよ……」
「約束」
「や、約束……?」
「内容はどうであれ、私が勝ったのに間違いはないから、さっさとラプラスの事は諦めてこの場から消えて」
「わ、わかったよ……!」
レクトは心から悔しそうな顔をしながら答えると、サニーゴをモンスターボールにしまった。そして、私がそれを見てラプラスのところへ行こうとしたその時、「お、おい……!」とレクトが震える声で話し掛けてきた。
「……何?」
「こ、今回は僕様が負けたけど……今度は勝ってやるからな……!」
「……そう。期待しないで待ってる。まあ、次も私達の圧勝だけど」
「ふ、ふん……!」
レクトが鼻を鳴らすのが聞こえたのに続いて走り去っていく足音が聞こえた後、私はディーネと一緒に氷壁の向こうへと移動した。そして、ラプラスに視線を向けると、ラプラスはさっきのミカンさんと同じように複雑そうな顔をしながら私達の事を見ていた。
「ラプラス……もしかしなくても、私達のバトルを見てた?」
「キュー……」
「……そう。じゃあ、やっぱり私達と一緒には来てくれそうには無いよね。優しそうなあなたの事だから、確実に勝つためにあんなバトルをした私達についてきたくは無いもんね」
「シャワ……」
「ラプラス……答えを聞かせて。私達についてくるか、このままお別れをするか……」
右手を差し出しながらした私の問い掛けに、ラプラスは少し考え込む素振りを見せた後、そのまま私達に近付き、「キュー♪」と鳴き声を上げながら私の右手に頭を擦りつけた。
「ラプラス……良いの? 私はあなたをバトルに出すつもりは無いけど、あなたの仲間達を捜すまでの間、さっきみたいなバトルを見る事になるかもしれない。それでも良いの?」
「キュー」
「……わかった。それじゃあ、これからよろしくね、ラプラス──ううん、せっかくだからあなたにもニックネームを付けてあげる」
「キュー♪」
ラプラスが嬉しそうに鳴き声を上げた後、私はラプラスのニックネームを考え始めた。
さてと……何が良いかな。ラプラスは水/氷タイプのポケモンで『うたう』や『ほろびのうた』みたいに『歌』に関する技を多く覚えるイメージがあるから、そこも入れたいよね。そうなると、それにピッタリな名前は……。
そこまで考えたその時、私はラプラスのニックネームにピッタリな物を思いつき、ラプラスの事を撫でながらそのニックネームを告げた。
「ラプラス、あなたのニックネームはレインだよ」
「キュー?」
「ニックネームの元にしたのは、セイレーンっていう美しい歌声で航海者を惹きつけて難破させてしまう怪物なんだけど、あなた達ラプラスはセイレーンと同じで綺麗な歌声で歌うと本で読んだ事があったから、セイレーンを元にしようと思ったの。後は、あなた達ラプラスの第3の特性である『うるおいボディ』はレイン、雨の時に効力を発揮するから、そう付けたっていうのもあるかな」
「キュー」
「ラプラス、気に入ってくれた……かな?」
私が少し不安げに問い掛けると、ラプラスはまた頭を私の右手に擦りつけた。
「キュー♪」
「どうやら気に入ってくれたみたいだね。それじゃあ改めて、これからよろしくね、レイン」
「シャワ!」
「キュー!」
ラプラス改めレインが嬉しそうに鳴き声を上げた後、私は荷物の中に入れていた空のモンスターボールを一つ取り出し、それをレインにコツンとぶつけた。すると、レインはモンスターボールの中に吸い込まれ、モンスターボールは桟橋にポトンと落ちると、カタンカタンと音を立てながら揺れ、やがてポウンという音を上げて動きを止めた。そして、私はレインが入っているモンスターボールを手に取った後、モンスターボールに額をくっつけながらモンスターボールの中のレインに声を掛けた。
「レイン、私達を信じてくれてありがとう」
「シャワ」
「……うん、行こうか、ディーネ」
レインのモンスターボールを手に持ったまま私は氷壁を見ながらディーネに指示を出した。
「ディーネ、フルパワーで『ねっとう』」
「シャワ!」
ディーネは大きな声で答えると、ディーネは氷壁に向かってフルパワーで『ねっとう』を放った。すると、ガラガラッという音を立てながら氷壁は崩れ落ち、砕けた氷は次々と海に落ち、ぷかぷかと浮かび始めた。
氷壁の撤去はこれで終わり。さて、父さん達のところへ行かないと。
そう思いながら前に視線を向けると、そこには父さん達とミカンさんの姿しか無く、バトルを見ていた他の人達は既にどこかへと行ってしまっていた。私はその光景にちいさく溜息をついた後、父さん達のところへと歩いていった。
「お待たせ、みんな」
「ああ。その様子だと……ラプラスはお前についていく事を決めたようだな」
「うん。さっきのバトルを見ていたのに私の事を信じてくれたみたいだよ」
「そうか……良かったな、ツバキ」
「うん」
ニコリと笑いながら言う父さんの言葉に頷いた後、私はミカンさんに視線を向け、静かに頭を下げた。
「ミカンさん、審判をして頂きありがとうございました」
「いえ、お礼なんて良いですよ。それにしても……ツバキさん、『カントー地方』のジムリーダーの娘さんだったんですね」
「はい。といっても、私はまだまだ未熟です」
「未熟……さっきのバトルの事を言っているんですね?」
「はい。怒りを感じていたとはいえ、あのバトルは見るに堪えない物でしたから」
「……たしかに、見ていた方々はツバキさんに対してあまり良い印象は持たなかったと思います。けれど、ツバキさんが仰っていたようにあの戦い方も戦術の一つです。なので、私は悪いとは思いませんよ」
「ミカンさん……ありがとうございます」
「どういたしまして。それでは、私はこれで失礼しますね」
「はい。ミカンさん、改めてありがとうございました。またどこかで会いましょう」
「はい。またどこかで」
そして、ミカンさんが去っていった後、シルバーは恐る恐るといった様子で私に話し掛けてきた。
「姉さん……もし、またさっきみたいな奴が来たら、同じようなバトルをまたどこかでやるつもりか?」
「……さてね。その時にならないとわからないけど、基本的にはさっきみたいなバトルはしないつもり。まあ、戦法の一つとして『あくび』はこれからも取り入れていくけどね」
「そっか……それなら良いや。俺、姉さんが本当はもっと綺麗な戦い方を出来るって知ってるからさ」
「シルバー、ありがとう」
「どういたしまして」
私の言葉にシルバーが両手を頭の後ろに当てながらニコリと笑って答えた後、シルバーのお腹からグーッという音が鳴りだし、シルバーは少し恥ずかしそうにお腹を押さえた。
「ふふ……シルバー、お腹空いたみたいだね」
「ま、まあ……」
「それなら、どこかで昼食にするとしよう」
「賛成」
「俺も」
「もちろん、私も」
「シャワ!」
父さんの言葉にみんなが賛成した後、私達は食べ物屋さんを探すために港を後にした。
政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
ツバキ「今回のはバトルというよりは蹂躙だったね」
政実「そうなるね。けど、この先の話ではもっとしっかりとしたバトルも書いていくつもりだよ」
ツバキ「了解。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて、それじゃあそろそろ締めていこうか」
ツバキ「ええ」
政実・ツバキ「それでは、また次回」